季節別食肉消費動向調査報告
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はじめにこの調査は、アンケート調査を通じて、消費者の食肉の購買状況、食肉に対する意識、食肉調理に関する実態などを季節・年度別、年代別、地域別などさまざま角度から分析し、国産食肉の消費拡大および流通合理化対策などに資することを目的としている。 調査方法は、これまでの調査手法を踏襲し、「WEB調査」を採用し、10地域(北海道、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄)を調査地域とし、それぞれ200世帯を抽出、合計2千世帯の家事対象者を対象とした。今回調査は、これまでと異なるモニターを使用していることから、データの連続性に若干の影響が見受けられるが、おおむね分析に耐え得る範囲内であると判断した。 今回の調査は平成18年6月15日〜21日に行われたものであるため、平成18年7月27日に米国産牛肉の輸入再開が決定されているが、このことによる直接的な影響はない。しかしながら6月中旬以降、米国産牛肉の輸入再開が検討され始めたことを受けて、調査期間前および期間中に米国産牛肉輸入反対集会などが開かれ、これらのことが消費者の輸入牛肉に対する態度に多少なりとも影響を与えた可能性は考えられる。 一週間の買い物行動(1)一週間の買物回数 図1で、年代別に買物回数を見ると、「20代」以降においては年代が高くなるにつれて買物回数が増える傾向が見られる。「週7回」(毎日)買物に行く人の比率は「20代」で12.5%となっているが、年代が上がるに従って増加しており、「60歳以上」においては43.3%が毎日買物に行っている。「60歳以上」では、「週6回」、「週7回」行っている人の比率を足すと56.5%となり、半数以上の人がほぼ毎日買物に出かけていることになる。 一方、買物頻度の少ない人(週1回以下)は、年代が低くなるほど増える傾向が見られる。「60歳以上」においては「週1回」以下が3.9%なのに対して、「10代」では24.0%と4人に1人が「週1回」以下しか買物をしていない。
図1 買物回数構成比(年代別)
(2)曜日別買物行動
図2 曜日別・買物世帯率の推移
(3)食材別購買決定プロセス 「ブランド和牛肉」は「最初から家で買う肉を決めていた」が50.0%と半数を占め、「家でチラシを見て決めた」の12.5%を含めると62.5%が計画購買をしている。 「輸入牛肉」は、「お店で特売だったので買った」が38.9%と最も大きく店頭での価格によって購買を意思決定する人の割合が多い商品である。 「その他国産牛肉」は、「ブランド和牛肉」と「輸入牛肉」の中間ぐらいに位置付けられている。 魚類の購買決定プロセスと比較すると、食肉類は総じて計画購買する人の割合が高い食材であるといえる。
図3 購買決定プロセス(食材別)
食肉等の購入状況(1)一週間の食肉購入状況(世帯年収別、世帯構成別) 食材別では、999万円以下の世帯では「牛肉」の購入比率が35%前後なのに対して、「1,000万円以上」世帯では50.0%と突出して牛肉の購入比率が高くなっている。「1,000万円以上」世帯では、「輸入牛肉」の購入比率が最も低いのに対して、「ブランド和牛肉」と「その他の国産牛肉」の購入比率が高くなっているため、牛肉全体としての購入比率が高くなっている。 世帯構成別では、「子供のいない世帯」と「高齢者のみの世帯」で牛肉の購入比率が高くなっている。「高齢者のみの世帯」では、「その他の国産牛肉」の購入比率が30.7%と高くなっているが「ブランド和牛肉」は8.7%とそれほど高くない。「子供のいない世帯」は、「ブランド和牛肉」の購入比率が17.6%とほかの世帯と比べ最も高く、「その他の国産牛肉」も19.0%と高くなっている。 「豚肉」の購入比率も「高齢者のみの世帯」で若干高くなっている。
表1 1世帯当り平均購入金額_世帯年収別、世帯構成別
(2)購入時点での価格に対する評価 「いつもより非常に高かったが買った」と「いつもよりやや高かったが買った」の合計が大きいのは「ブランド和牛肉」の10.4%である。「ブランド和牛肉」は、高いと感じていても10%程度の人が購入しており、価格以外の要因で購買されていることが分かる。
図4 購入時点における価格評価
(3)食肉類の購入世帯率 前回の調査と比較して購入世帯率が下がっているのは「輸入牛肉」だけであり、BSE問題が購買に影響しているものと思われる。 「輸入牛肉」以外の食肉の購入世帯率は、過去の調査で減少傾向にあったものの、今回の調査では上昇に転じている。特に購入世帯率が高くなっているのは「鶏肉」の+4.9%、「豚肉」の+2.7%、「ブランド和牛肉」の+2.2%である。
図5 食肉類の購入世帯率の推移
(4)食肉購入量に対する意識
図6 食肉別購入量に対する意識
「図5 食肉類の購入世帯率の推移」の結果と見比べてみると、「輸入牛肉」に関しては実際に購入世帯当たり購入量が減少しており、消費者の意識と一致しているが、「ブランド和牛肉」と「その他の国産牛肉」については、必ずしも「実際の購買量」と「購入量の意識」が一致しておらず、“牛肉は高いから購入を減らしている”という意識が回答結果に表れているのではないかと思われる。特に、実際の購入量が一週間の調査結果なのに対して、購入量の意識は1カ月間の結果を聞いていることから、心理的な意識が回答結果に表れやすいものと考える。 食品の安全性に関する関心図7を見ると、最も関心が高いのは「食品添加物(保存料、着色料など)」であり、これまで関心度合いが横ばい傾向にあったが、今回新たに関心が高まっている。 次いで関心が高かった項目は「残留農薬」で、平成16年12月調査以降、関心が高まってきている。 3番目に関心が高い項目は「BSE」となった。「BSE」への関心は乱高下しており、今回は前回に比べやや減少している。 「遺伝子組み換え作物」および「アレルギー物質」は平成16年12月以降、徐々に関心が低くなっていく傾向にある。 「ダイオキシンなど環境ホルモン」、「O-157やサルモネラ等の細菌類」、「成長ホルモン等のホルモン剤」、「残留抗生物質」については、これまでと順位が変わらない状況で、前回調査と比較して関心が低くなっている状況にある。
図7 食品の安全性への関心事の変化
食肉に関する知識構造分析消費者が食肉に対して持っている知識が購買行動にどのような影響を与えているかを分析する。本分析は、「牛肉」「豚肉」「鶏肉」の主要3品目について「あなたは、「牛肉」が健康に及ぼす良い効果、悪い効果についてどのようにお考えですか?」と質問をし、その自由回答結果からヘビーユーザーとライトユーザーでどのように食肉に対する知識が異なるのかを分析している。ライトユーザーにない知識がヘビーユーザーに見られたり、逆にヘビーユーザーにない知識がライトユーザーに見られたりする場合は、そのギャップを埋めるような施策を行うことによって購買を促進できるものと考える。 (1)牛肉に対する知識構造
図8 「牛肉」の健康効果について
「牛肉」の健康効果について、ヘビーユーザーで最も出現率の高かったのは「たんぱく質が豊富」の31.5%である。ライトユーザーの出現率は18.4%なので、13.1ポイントと大きな差が見られる。 逆にライトユーザーで最も出現率が高かったのは、「脂肪分が多い、高カロリー、太る」というネガティブな内容の回答で、ライトユーザーの27.0%が回答している。「脂肪分が多い、高カロリー、太る」はヘビーユーザーでも2番目に出現率の高い内容で21.4%が回答している。 「BSE問題」の出現率は、やはりヘビーユーザーよりもライトユーザーで出現率が高く、ヘビーユーザー11.0%に対してライトユーザーは20.3%が回答している。 それ以外の出現率が低い回答結果においても、全体的にヘビーユーザーの方が出現率が高く、ライトユーザーに比べ知識量が豊富であることが分かる。 (2)豚肉に対する知識構造 「牛肉」ほど健康効果に対する知識に差異は見られない。ヘビーユーザーは「豚肉がビタミン豊富」「たんぱく質が豊富」という知識の出現が若干高く、「脂肪分が多い、高コレステロール・太る」の出現率は低くなっている。
図9 「豚肉」の健康効果について
(3)鶏肉に対する知識構造
図10 「鶏肉」の健康効果について
ヘビーユーザー、ライトユーザー共に「脂肪分が少ない、低カロリー」といったポジティブな健康効果に関する知識を有している。その他の知識に関しても両者の違いはほとんど見られない。 |
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