平成19年2月7日、名古屋市内において、消費者への理解・醸成活動の一端として「どうすればいいの?私たちの食育活動・消費者交流」と題して「全国畜産縦断いきいきネットワーク」の研修会が、同ネットワーク会員をはじめ、三重県の畜産女性の会「サン・カラット会員」など総勢55名の参加の下、開催された。
農業行政の立場から東海農政局栗本まさ子次長の「食育推進体制について」の講演に続いて、「食育」、「地産・地消」などという言葉がもてはやされる以前から、将来、地域の良き理解者となり得る子供たちのために、農業体験、見学、ふれあいなどの受け入れ体制を整え、実践されてきた3名の経営者の方から講演があった。
―福田弥生さん(福田牧場)―
神奈川県川崎市で20頭の搾乳牛を飼養しているが、地域の要望で20年ほど前から牛の移動牧場を始めた(生計を成り立たせるためのプラスアルファが「移動牧場」)。子供たちや顧客の要望を聞いているうち牛だけでなく、ヤギ、ポニー、緬羊のほか小動物も飼い「命の大切さ」を教育現場に伝えている。専門スタッフ3名を擁し、1年に150〜200件に対応。当初は、動物を連れて訪問するだけで喜ばれたが、今は「衛生面」や「安全対策」に対処することが必要。
―森京子さん((有)大東牧場)―
独身時代は、県酪連に勤めていたが、酪農家の長男と結婚後就農。平均1万キロを搾る高能力牛群を飼養(搾乳牛80頭、育成40頭)。フリーストール牛舎、搾乳ロボットなど積極的に新技術を導入。非農家の方々に「酪農をもっと知ってもらおう。」と牧場を開放して教育ファームや交流活動を始める。
育成牛舎を改装して研修施設とし、昭和53年の生乳生産調整時にはバターチャーン、クリーマーをフランスから輸入してバター作りの体験施設を開くとともに、平成17年には倉庫を改装してジェラード工房をオープンさせた。
―山下恵美子さん(山下鶏園)―
鶏の防疫上、牛のように「ふれあうこと」「見学すること」(鶏舎の中に人を入れること)が出来ないが、園内の広場やGPセンターを使って近隣の小学校の学習活動を受け入れている。きっかけは自分の子供が小学校の時代、先生から「児童たちに鶏園を見学させて!」といわれて始めた。長年のノウハウから、仕事に支障がないよう学習活動は1時間できっかり終わるように練られている。
「家畜は、生きているからこそ臭うのだ。けれど地域に見捨てられたらわれわれは生きていけない。子供や先生が良き理解者となってくれるよう情報発信したい。」と言う言葉が印象的だった。
その後、会場からは、参加者それぞれが抱えている食育活動への課題や実践事例などが次々と語られ、お互いに情報交換できる好い機会に恵まれた。
「トイレと手洗い施設さえ完備すれば、受け入れは可能。」「自分の自由な時間が奪われるとマイナスに考えず、材料費などでお金をいただくことでプラス思考に。」、「先駆者と同じようにやろうとしても難しい。それぞれの立場で個性を生かしながら地域の実情に合わせて活動を進めよう。」などの意見が出た。そして、何よりお互いにパワーをもらって「明日からも頑張ろう」と思える研修であったのではないか。
「家畜は生きるからこそ臭うのだ」子供たちに畜産の良き理解者になってもらいたいと語る山下氏
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目下取り組んでいる食育活動について語る出席者
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