主要畜産物の需給動向 |
◆牛 肉◆
●●●8月の枝肉卸売価格は下落傾向で推移●●● 8月の牛肉枝肉卸売価格(東京市場)は、全般的に下落傾向となった。去勢和牛のA―5規格は、キログラム当たり2,474円(前年同月比0.2%高)となり前年同月と同水準を保ったものの、A―2規格は同1,459円(同9.2%安)となった。そのほか、交雑種、乳用種はともに下落傾向が続いており、省令価格は9カ月連続で前年同月を下回る同1,140円(同5.2%安)となった。9月は、高値で推移していためす和牛、去勢和牛の上位規格も前年同月を下回る展開となっており、年末需要期までの端境期となる10月の値動きが注目される(資料P18−19参照)。
図1 乳用種めす牛のと畜頭数と枝肉卸売価格(C-1)
資料:農水省「食肉流通統計」
図2 豪州産輸入牛肉(その他)の輸入量とCIF価格、仲間相場の推移
資料:財務省「貿易統計」 ◆豚 肉◆ ●●●19年度の肉豚出荷頭数見通し、前年度をわずかに上回る見込み●●● 平成19年9月14日、農林水産省において全国肉豚生産出荷協議会が開催され、平成19年度肉豚の生産出荷見通しなどが協議された。 ●●●19年度のブロイラー需給見通しは消費、供給量ともに拡大を予測●●● 平成19年9月14日、農林水産省において開催された全国ブロイラー需給調整会議の中で平成19年度のブロイラー需給見通し(正肉ベース換算)について、「需要量」106万6千トン(前年度比0.3%増)、「供給量」158万2千トン(同0.1%増)、「期末在庫量」8万トン(同26.6%減)とした。需要量のうち家計消費量は、総務省が公表する「家計調査」の国民一人当たり鶏肉消費量から56万2千トン(同0.3%増)と推計し、加工・業務用は推定出回り量から家計消費量を差し引いた104万4千トン(同0.3%増)とした。これにより鶏肉の消費構成割合は、おおむね加工・業務用の割合が65%、家計消費が35%と見込まれた。一般的に鶏肉は、国産物が正肉、輸入物が加工仕向けという用途区分が明確であり、鶏肉消費用途シェアだけでなく、家計での鶏肉消費数量も増加しており、小売価格が高止まりしている牛肉の代替の一部となっているものと思われる。 一方、供給量は国内生産については、19年度の出荷計画などから推計し101万9千トン(前年度実績比1.0%増)、鶏肉輸入量については、鳥インフルエンザの発生などからブラジルのみ輸入可能であることを勘案して31万8千トン(同1.2%減)としている。一方、調製品の輸入量は、原料鶏肉輸入量の減少からわずかに増加して24万5千トン(同2.9%増)としている。
表1 平成19年度鶏肉需給見通し(正肉ベース換算)
●●●鶏むね肉価格、9月も続伸で250円に●●● 平成19年8月のブロイラー卸売価格(東京)は、1キログラム当たりもも肉563円、むね肉240円となり、もも肉は前年同月比8.3%高、むね肉は同11.6%高となった。9月(速報値)は、更に高値で、もも肉566円(同6.0%高)、むね肉250円(同15.2%高)となり、特にむね肉の価格上昇が顕著であった。鶏肉類の輸入状況をみると、加熱加工済みの鶏肉調製品は5年前の約1.5倍の3万トンをベースに毎月輸入される一方で、8月の原料鶏肉輸入価格(CIF価格平均)が1キログラム当たり234円(前年同月比19.5%高)となり、価格は4カ月連続して前年同月を上回って推移し、上昇傾向にあることから、加工原料としてのメリットが薄まっている。 さらに業務・加工業界では、原材料の安全性を重視する観点から、国産ニーズが高まっており、それらが追い風となって、国内物のむね肉の引き合いが強まっているものと思われる。 ◆牛乳・乳製品◆ ●●●脱脂粉乳の在庫量は大幅に減少●●● 平成19年8月の牛乳乳製品統計によると、業務用向けのクリームの生産が好調に推移する一方で、脱脂粉乳の生産量は14カ月連続で前年同月を下回る12,339トン(前年同月比7.7%減)となった。乳飲料の販売が好調なことなどから脱脂粉乳に対する需要も増加しているとみられ、推定出回り量はおおむね上昇傾向で推移している。この結果、8月の脱脂粉乳の在庫量は平成10年以降で最低水準となる53,900トンとなった。また、在庫量の減少については、脱脂粉乳の国際価格が高騰していることから、国産脱脂粉乳への需要の増加が影響しているとの見方もあり、今後の需給動向が注目される。(図4)
図4 脱脂粉乳の生産量と在庫量の推移
資料:農水省「牛乳乳製品統計」 *在庫量は、民間在庫量と機構在庫量の合計 ●●●平成18年度学校給食用牛乳の供給実績は前年度を0.2%上回る●●● 当機構が公表した「平成18年度学校給食用牛乳供給事業概要」によると、18年度の学校給食用牛乳供給実績数量は386,529キロリットル(前年度比0.2%増)となった。全国の牛乳生産量のうち学校給食用牛乳の供給量が占める比率を見ると、14年度から16年度は10%を下回っていたが、17年度以降上昇し、18年度は10.5%を占めた。(図5)
図5 学校給食用牛乳供給量と牛乳生産量に占める比率の推移
資料:機構調べ 供給学校数(2学期)は32,569校(同1.2%減)となり、供給人員(2学期)は、その他校(盲学校、聾学校、養護学校)が1.8%増となったものの、全体で10,628,549人となり前年度比0.8%減となった。 なお、全国総学校数に対する実施校の割合は、区分別にみると、小学校が95.4%、中学校が84.5%、夜間高校が81.6%、その他校が86.1%となり全体では91.5%となっている。 ◆鶏 卵◆ ●●●飼料価格急騰でも、鶏卵生産意向調査で根強い増産意欲●●● 平成19年3月の全国鶏卵需給連絡会議(農林水産省)において、生産者の生産意向などを踏まえた平成19年度の鶏卵生産指針として、「18年度の水準よりも2〜4%の減産が必要」との素案が示されたところである。半年を経たその後の生産意向調査(19年6月)では、今後1〜2年の生産意向は、現状維持62%、増産7%、減産4%、未定27%との結果が得られ、増産、減産の意向を示した生産者の飼養規模と増(減)産程度から推計した羽数増減量は、3.1百万羽増となり回答者の根強い増産意欲が示された。特に養鶏業は他の畜種に比べ配合飼料依存度が高く、また、その配合割合もトウモロコシ、大豆など穀物が高いことから、穀物の国際価格の値上がりは、経営に大きく影響するところである。(図7)
図7 養鶏用配合飼料の生産流通量と原料使用量の割合
資料:(社)配合飼料供給安定機構「飼料月報」 10月に入って気温が下がったことから、鶏卵の産卵率が回復し、今後、生産量も高まるものと予想される。おでんなどの鍋物需要が高まる中で、需要の増加も見込まれることから、今後の需給バランスが注目される。 ●●●8月の鶏卵輸入量、7カ月ぶりに1万トンを超える●●● 財務省「貿易統計」による8月の鶏卵輸入量は、11,587トンとなり前年同月を26.6%上回った。輸入量が1万トンの大台を超えるのは19年1月以降7カ月ぶりで、鶏卵の卸売価格も上昇し、秋冬期の加工向け需要の高まりを見込んだ手当が開始されたものと思われる。8月の主な輸入先内訳は、米国2,309トン、オランダ2,296トン、ブラジル878トンとなっている。特に米国やブラジルからは殻付生鮮卵で輸入されていることから、鶏卵相場の推移によっては、ゆで卵などの加工・業務用への輸入鶏卵使用量は今後増加するものと思われる。 ◆飼 料◆ ●●●配合飼料価格は依然高値で推移、 トウモロコシのシカゴ定期は、米国内におけるバイオエタノール向けの需要がおう盛なことや、国際的な引き合いが強まったことなどから、2006/07年度の期末在庫量が減少すると見込まれ、2月下旬には1ブッシェル当たり430セントまで上昇した。しかし、07/08年度の生産量が大幅に増加するとの見通しから、8月末には同320セントまで下落している。(表2、図8)
図8 トウモロコシ相場(シカゴ定期)と配合飼料価格の推移
資料:日本経済新聞農水省「流通飼料価格等実態調査」
表2 米国農務省 トウモロコシ需給予測(9月現在)
資料:USDA「Feed Outlook」 なお、国内の配合飼料工場渡価格(全畜種加重平均)は、穀物価格上昇の影響を受けて上昇し、4月以降は5万円を超えたが、7月はトン当たり51,720円(前年同月比25.6%高)となった。配合飼料供給価格は値下げが公表されたものの、依然価格が高水準であることから、社団法人全日本配合飼料価格・畜産安定基金などは第3四半期においてトン当たり5,550円の通常価格差補てん金を交付することを決定している。また、当機構が実施する家畜飼料特別支援資金融通事業(配合飼料価格(補てん金を除く農家実質負担額)が一定水準を超えて高騰した場合に、飼料購入費の増加分に係る借入に対し利子補給を行う)において、畜産経営の現状を踏まえて10月12日付け事業の要件を見直し、利子補給が発動されることとなった。 |