◎今月の話題


エコフィードの利用拡大に向けて

宮崎大学農学部
教授 入江 正和

1.はじめに

 最近、穀類価格が高騰しており、飼料、食肉をはじめ世界一の食品輸入国であるわが国にとって、飼料原料の確保は急務の課題である。また今般、食品リサイクルの目標値が引き上げられたが、食品の約1/4を廃棄し、その量が世界一とも言われる食品残さを飼料として有効活用することは、食料自給率の向上や循環型社会の実現だけでなく、畜産側にとってもコスト低減につながる重要な課題といえよう。

 そこで本稿ではさらなるエコフィード利用拡大に向け、今後、取り組むべき課題や今後の展望について記述したい。


2.残飯養豚からエコフィード養豚への転換

 これからの食品残さの飼料化は、衰退しつつある従来型の残飯養豚の欠点を克服し、近代的な技術を導入した形態、つまり新たなエコフィード養豚でなければ成功しない。ほかの家畜、家禽についても条件は同様である。

 残飯養豚の欠点は、収集・処理の手間、環境問題の発生、低品質肉の発生などにある。幸いにも先進的なエコフィード養豚ではこれら欠点が解消されつつある。

 まず、中食、外食、加工産業の発展、交通網の整備は大量の良質な食品残さの収集を容易にしつつある。その中で、産廃処理業者が収集のみならず、飼料製造まで行ったり、農家が産廃処理業などの許可を得始めている。たい肥化やエネルギー化に過度に流れないためにも、引き続きこのような形態が進展する行政措置が望まれる。

 収集・処理に関しては、保冷車を使う衛生的な収集や、近代的な飼料化工場での大規模処理という例が進展しつつある。このような形態では、コスト、環境、安全、栄養面での長所を生み出している。一方で、高度な技術と多額の投資を必要とし、その状況は家畜生産部門においても同様である。従って今後も、家畜生産現場と飼料化施設を切り離して考えるケースが増加するだろう。

 次に低品質肉の発生は、養豚農家が食品残さを利用しない第一の理由である。確かに従来の残飯養豚の豚肉では、価格、品質ともに輸入肉に太刀打ちできない。コスト低減と同時に生産物の品質向上は必須である。

 幸いにも、著者らがいち早く実現してきたように、エコフィード養豚においても通常を上回る品質の豚肉を生産できる。一部はエコフィード利用をうたい、銘柄豚肉として通常の豚肉を上回る価格で販売されている。しかし、まだ一部にしかすぎず、エコフィード利用畜産物の品質向上技術のさらなる開発も必要であろう。


3.異業種や産官学などの連携

 エコフィードの事業主体は現状でも実に多様である(本誌2006年12月号「今月の話題」参照)。それら形態は変化したり、また新たな連携も生まれてこよう。理想モデルは一辺倒ではない。

 エコフィード養豚の成功例では、異業種や産官学などの良い連携が見られ、逆に失敗例では連携面での不備がみられ、今後も連携は重要な課題となろう。特に利益を分け合うことはお互いの存続にとって重要であり、利益が偏ったり、あるいはどこかが無理していると、全体が破綻する。産廃処理業者が家畜生産現場に参入し、簡単に成功するほど、甘いものでもないし、同様に製造、利用側における栄養学の知識は必須で、官学などとの連携も重要である。

 連携は、情報を交換し、お互いを理解することから始まる。さらに連携では核となる人物の存在がポイントとなる。全国の優良事例では、彼ら(複数もあり、産官学いずれもあり)がリーダーシップを発揮し、活躍していることが多い。


4.処理ハードと利用ソフトの進展

 ハードも含めた処理方式(乾燥、リキッドなど)については、今後も機械メーカーの積極的な参画で進展が望め、さらなる技術革新を期待したい。

 優れた処理方式の選択は飼料価値や普及度に大きく影響する。われわれの開発した油温脱水法も奇抜で最初は普及しなかったが、現在、大きく進展し始めている。また、現在試験中の乾燥方式では1時間以内で豆腐かすや茶殻を乾燥できる。食品工場で実用化された製品は、新鮮な温かい原材料から生産されるため、飼料化工場まで運搬し時間をかけ乾燥した製品とは、品質(腐敗、酸化)、コスト(処理、運搬)面で大きな差が生じる。

 一方で、処理方式の選択は柔軟であるべきである。例えば、焼酎かすの処理では、処理コストやCO排出、乾燥の難しさからすると、リキッド方式に分がある。しかし、リキッド方式では農家側に多大な施設コストとリスクがかかるだけでなく、焼酎かすは運搬・保存中に腐敗しやすく、排出量の地域的、季節的変動も大きい。結局、畜種などの利用目的や立地条件、農家、焼酎メーカーの規模などに応じケースバイケースで処理、利用方式を選ぶことになる。

 さらに変化するエコフィード品質特性を把握し、調整することも今後の課題となろう。


5.おわりに

 消費者調査結果では、安全性をしっかりと確保し、畜産物の品質を落とさなければ、エコフィード利用畜産物は消費者からも大いに歓迎される。エコフィード利用が、単なるコスト低減の手段に終わるのではなく、消費者を味方に付け国内の畜産を活性化する1つの手段にさえなり得るのではないかと期待している。



入江正和(いりえ まさかず)

プロフィール

兵庫県出身 昭和53年3月 京都大学農学部卒業
4月 京都大学大学院農学研究科入学
昭和54年8月 大阪府立農林技術センター入所
平成16年3月 宮崎大学農学部 教授


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