需給動向 海外

◆ニュージーランド◆

干ばつにより生産減ながらも乳価は過去最高水準、酪農経営環境も良好


◇絵でみる需給動向◇


酪農地帯での干ばつで生産は減少、現在は回復基調に

 ニュージーランド(NZ)の酪農生産の中心地帯である北島のワイカト地方の地域行政組織は、2008年2月に“干ばつ地帯”であることを正式に宣言した。これは、2008年1月の降雨量が平年に比べて極端に少なかったことによるものであり、結果としてこの100年の間で最も乾いた月となった。また、記録的な高温もこの乾燥化を後押しした。一説では、これらはラニーニャ現象の影響によるものとされている。このため、ワイカト地方を中心とした酪農地域では、放牧環境が急速に悪化し、放牧酪農が中心の生乳生産は大きく減少した。

 しかし、4月後半に入り、断続的にまとまった降雨が記録されたことから、乾き続けた酪農地では一定量の水分が蓄えられ、徐々に青々とした牧草の風景がよみがえるなど、放牧環境は少しずつ回復を見せている。

 ワイカト地方はNZの生乳生産量(15,134百万リットル:2005/06年度(6〜5月))の約3割を産出する最大の酪農生産地帯であるが、この地方の2008年1月の生乳生産量は前年同月比15〜18%減となり、その後の減少幅もさらに広がり、3月には同30%以上減少したとみられている。このため、NZ全体の生乳生産量にも大きな影響を与え、2007/08年度(6〜5月)の生乳生産量は、最終的に前年度比で3〜5%のマイナスが予想されている。

生乳生産量の推移(NZ北島)


干ばつによる酪農家の被害額は一戸当たり659万円も、高水準の乳価でカバー

 NZ農林省の算出によると、今回の干ばつによりワイカト地方を含む北島を中心としたNZの酪農家が受けた被害額(コスト増加分)としては、2007/08年度で総額10億2,400万NZドル(850億円:1NZドル=83円)に上るとしている。これを酪農家一戸当たり平均で見ると約7万9,400ドル(659万円)となる。放牧主体のNZ酪農では、牧草の生育状況が生乳生産に直結することから、放牧環境の悪化で酪農家の多くは粗飼料などを追加的に購入せざるを得なかった。NZ生乳生産量の9割以上を取り扱うとされる最大の酪農協フォンテラが今年2月に試算したところでは、干ばつによる酪農家全体での被害額を最大で5億NZドル(415億円)としていたが、干ばつの状況が当初予測以上に広がったことから、被害額もフォンテラの予測を倍以上も上回る結果になった。一方で、同省は、好調な乳製品の輸出価格を反映した高い乳価水準により、このような厳しい状況ながらも、酪農家の経営状況は前年度よりもよい状態にあるとしている。


2007/08年度の最終乳価は過去最高水準、来年度乳価も高価格でのスタート

 フォンテラ社は5月末、2007/08年度の乳価見通しを発表した。これによると、乳製品の国際価格高騰を反映して最終乳価は乳固形分1キログラム当たり7.90NZドル(656円)としており、これは、前年度の最終乳価(同4.46NZドル:乳業メーカー平均)と比較して倍近い引き上げ額となり、過去最高水準に達する。また、2008/09年度の乳価についても、過去に例のない同7.00NZドル(581円)を予定している。フォンテラ社は、今後の世界的な乳製品需給動向はひっ迫化傾向が続くと見ており、また、国内の酪農家の期待に応える必要があるとして、高い乳価水準を維持できるよう最善の策を尽くすとしている。


元のページに戻る