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(別表) 2.高脂肪食 |
表1 食餌組成表(g/1.0kg)
実験2(表2)
−動物実験(マウス)による混餌投与した牛乳ラクトフェリンの脂質代謝に対する影響の検討−
ICR系雄マウス(初体重25〜27g)を3日間予備飼育後、体重により有意な差が生じないように1群6匹で群分けした。実験群は、別表2のようなものである。飼育期間は28日間である。解剖前に15時間絶食させた。心臓採血で血液を採取し、血清を得て、血清脂質を測定した。食事摂取量は週1回、飼育4日目、11日目、18日目、25日目に測定した。肝臓重量、脂肪組織重量(精巣上体脂肪組織、腎周囲脂肪組織、腸間膜脂肪組織、腹膜脂肪組織)を測定した。また、飼育14日目にマウスの尾静脈から採血を行い、血清脂質の測定も行った。この場合は、採血前に15時間絶食を行った。
(別表2) (1)対照群:20%カゼイン+1%コレステロール+0.25%コール酸ナトリウム (2)ラクトフェリン食餌添加群:19%カゼイン+1%ラクトフェリン+1%コレステロール+0.25%コール酸ナトリウム (ただし、実験群の1%ラクトフェリンの1%とは、タンパク質換算で1%になるよう設定している。) |
表2 食餌組成表(g/1.0kg)
統計分析
実験結果の統計的分析には、Student’s t-Testを用いた。
(1)実験1の結果(図1、図2)
食事摂取量、体重増加量には群間で有意な変化は観察されなかった。肝臓重量は無脂肪食、高脂肪食でラクトフェリンを投与により有意に低下した。血清コレステロール濃度は高脂肪食のラクトフェリン投与群で有意に低下した。血清トリグリセリド濃度には、ラクトフェリン投与の影響は観察されなかった。肝臓中のコレステロール、リン脂質、トリグリセリド量はラクトフェリン投与による有意な変化は観察されなかった。
図1 マウスにおけるラクトフェリンの体重、肝臓重量、
血清コレステロール、血清トリグリセリド濃度に対する影響
図2 マウスにおけるラクトフェリン経口投与の肝臓総脂質、
トリグリセリド、リン脂質、コレステロールに対する影響
(2)実験2の結果(図3、図4)
食事摂取量、体重増加量は群間で有意な変化は観察されなかった。14日目の血清コレステロール濃度は、ラクトフェリン食餌添加群で減少傾向が観察された。28日目の血清コレステロール濃度では群間で有意な差は観察されなかった。14日目の血清トリグリセリド濃度はラクトフェリン食餌添加群で減少傾向が観察された。28日目の血清トリグリセリド濃度は群間で有意な差は観察されなかった。肝臓重量、脂肪組織重量は群間で有意な差は観察されなかった。
図3 マウスにおけるラクトフェリン食餌添加の体重、
肝臓重量、食餌摂取量、血清コレステロール、血清トリグリセリド濃度に対する影響
図4 マウスにおけるラクトフェリン食餌添加の精巣上体脂肪組織、
腸間膜脂肪組織、腹膜脂肪組織、腎周囲脂肪組織に対する影響
(3)考察
実験1より、血清コレステロール濃度は高脂肪食においてのみ、対照群と比べて、ラクトフェリンの経口投与により有意に低下した。血清トリグリセリド濃度には、対照群と比べて、ラクトフェリン投与の有意な影響は観察されなかった。肝臓重量は、無脂肪食、高脂肪食のどちらにおいても、対照群と比べて、ラクトフェリンの経口投与により有意に低下した。肝臓全体で表現した肝臓総脂質量は、対照群と比べて、ラクトフェリン投与により減少傾向を示し、その減少は、主に肝臓のトリグリセリド量の低下によるものであった。
実験2より、飼育14日目の血清コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度には低下傾向が観察された。今後、ラクトフェリン添加量や飼育日数を変化させたときの脂質代謝への影響を含めた、詳細なメカニズムの解明の検討が望まれる。
以上の結果から、ラクトフェリンはメタボリックシンドロームと関連するコレステロール代謝を改善する可能性が示唆された。今後、マウスを長期間飼育した場合や投与レベルを変化させた場合の高コレステロール血症や肥満に対する影響を検討することが望まれる。
(文献)
1)K.K. Carroll, and R.M.G. Hamilton : J. Food Sci., 40, 18-23(1975)
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