需給動向 海外

◆タ イ◆

2008年上半期の鶏肉調製品輸出量は大幅に増加


◇絵でみる需給動向◇


生産量は7千万羽台で推移

 タイ農業・協同組合省(MOAC)によると、2008年6月のブロイラー生産量は、前年同月比2.8%増の約7千5百万羽となった。ブロイラー生産量は、2007年1月以降7千万羽台を維持するとともに、同年3月以降は前年を上回って推移している。このため、2008年の上半期(1月〜6月)における生産量も前年同期比3.7%増の約4億5千万羽となった。また、6月のひなふ化羽数は、前年同月比2.8%増の約7千8百万羽となった。ひなふ化羽数は、2007年7月以降、おおむね7千8百万羽で推移している。

 タイでは、高病原性鳥インフルエンザ(AI)が2004年から2005年にかけて発生し、鶏肉・鶏卵産業に大きな影響を及ぼした。その後も、2006年7月〜8月、2007年1月〜3月に発生が確認されたほか、今年1月にも北部2県における発生が確認されている。しかし、2006年以降はいずれも発生規模が小さかったことや、MOAC畜産開発局(DLD)などによる防疫措置により、AI感染地域の拡大は回避されている。さらに、消費者の冷静な対応などもあり、同国におけるブロイラー生産への影響は小さなものにとどまっている。

 一方、6月の卸売価格(生体)は前年同月比11.2%高のキログラム当たり36.9バーツ(約114円:1バーツ=3.1円)となった。卸売価格(生体)は、2007年3月以降前年を上回って推移し、4月中旬にはタイの旧正月(ソンクラーン)を迎えたこともあり、同42.3バーツ(約131円)と40バーツ台まで上昇した。しかし、旧正月終了後には食肉需要も落ち着きを取り戻し、6月は前年同月を上回ってはいるものの、前月比では11.5%安となっている。


鶏肉調製品輸出量は大幅に増加

 6月の鶏肉調製品の輸出量は、前年同月比26.0%増の約2万9千トンとなった。主な輸出先別で見ると、日本は同44.3%増の約1万3千トン、英国は同21.2%増の約9千トン、オランダは同9.1%増の約3千トンとなった。このうち、日本向けについては、2007年10月以降、1万トンを超える水準で推移している。また、輸出価格については、同19.8%高のトン当たり131,271バーツ(約406,940円)となり、飼料費や燃料費の価格上昇などを反映したものとなっている。

 上半期の輸出量は、約16万9千トンとなり、前年同期を32.7%上回った。国別では、日本が同31.5%増の約7万トン、英国が同19.6%増の約5万トン、オランダが同80.5%増の約1万9千トンとなった。鶏肉調製品の輸出先は、日本とEUで9割(日本向けは41.6%、EU向けは51.5%)を占め、このうちEU向けでは、英国とオランダの上位2カ国で8割を占めている。日本とEU向け以外では、シンガポール向けが同69.0%増の約4千7百トン、韓国向けが同38.9%増の約3千トン、香港向けが前年同の約1千6百トンとなっている。また、シンガポール以外の東南アジア諸国向けでは、ベトナムが742トン、ミャンマーが148トンとなっている。昨年輸出が再開されたアラブ首長国連邦には、1月〜2月にかけて約48トンが輸出されたが、3月から6月にかけては輸出実績がない。

鶏肉調製品国別輸出量(2008年1〜6月)


非加熱鶏肉(冷凍鶏肉)の輸出再開を模索

 DLDは現在、国内の養鶏業者に対しコンパートメントシステム(※)の導入を奨励している。タイでは、前述のとおり2004年以降毎年AIの発生が確認されたことから、DLDは、同システムの導入によりタイ産鶏肉の安全性をアピールし、日本やEUなどの主要輸出国に対し非加熱鶏肉(冷凍鶏肉)の輸入再開を働きかけるとしており、CPF社(Charoen Pokphand Foods Public Company Limited)やサハ・ファーム社(Saha Farms Company Limited)など、合計7社がDLDによる承認を受けている。

 タイの鶏肉輸出は、90年代以降、冷凍鶏肉の輸出拡大とともに、焼き鳥や唐揚げなど高付加価値化を進めてきたことに加え、同国でのAIの発生を機に2004年1月以降、日本およびEU各国がタイ産非加熱鶏肉の輸入を停止していることから、加熱処理された鶏肉調製品へシフトしている。

 しかし、コンパートメントシステムの導入により、AI発生の可能性を減少させることは可能であるが、AI再発時のリスクを考慮すれば、従来どおり鶏肉調製品の輸出を強化するほうがメリットが大きいと判断している大手インテグレーターもいる。このためないのが現状といえる。

 なお、非加熱鶏肉は2004年以降も輸出されており、2007年は約1万8千トンであった。このうち、約1万7千トンがベトナム向けで、残りの大部分が、DLDは非加熱鶏肉の輸出再開に向けた取り組みを進めているものの、必ずしも国内の足並みは揃っていマレーシア向けとなっている。
 
(※)コンパートメントシステム
 特定の疾病に対する衛生状態が明確に区分されている1つまたは複数の施設に対し、統一的なバイオセキュリティー(衛生管理)が行われるシステム。

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