海外トピックス


9月26日より中国製粉ミルクなどの輸入を禁止するとともに
中国製菓子類の検疫を強化


経緯

 中国製粉ミルクなどで高濃度のメラミンが検出され、乳幼児に深刻な健康被害が生じていることが2008年9月に表面化し、欧州委員会は以下の手続きを経て9月26日より中国製粉ミルクなどの域内への輸入を禁止するとともに、乳成分を15%以上含む中国製品の輸入の際に、すべてのロットについてメラミンの混入の有無を検査する措置を導入した。

( 1 ) 9月19日:欧州委員会保健・消費者保護総局(DG Sanco)より、メラミンに汚染された中国製乳製品を含む可能性のある食品の摂取に関する緊急のリスク評価の実施を欧州食品安全機関(EFSA)に要請。

( 2 )9月25日:EFSAは、以下の内容のリスク評価結果を公表。

(1) 成人の場合、最悪のシナリオでもEFSAが設定した許容一日摂取量(TDI)である体重1キログラム当たり0.5ミリグラムを超えない。

(2) 子供の場合、ビスケット、ミルクキャンディおよびチョコレートを普通に摂取してもTDIを超えないものの、最悪のシナリオ、すなわち、これまで中国で確認された中で最高の汚染濃度(約2,500ミリグラム/キログラム)の原料を用いたビスケットまたはチョコレートを大量に摂取した場合、それぞれTDIを超える可能性がある。

( 3 )9月26日:欧州委員会は以下の内容の措置を決議し、即日施行。

(1) 加盟国は、中国製(第三国経由を含む。以下同じ。)の牛乳・乳製品を含む乳幼児用の粉ミルクなどのEU域内への輸入を禁止。

(2) 加盟国は、乳成分を15%以上含むすべての中国製品および乳成分の含有量が不明な中国製品の輸入の際に書類・現物の確認および実験室での検査を実施。

(3) 加盟国は、(2)の検査の結果2.5ミリグラム/キログラム以上のメラミン混入が認められた場合には、直ちに全量を処分。

(4) (2)の実施に必要な費用は、輸入業者が負担。また、(3)の処分に要する費用は当該製品に責任を有する食品会社が負担。

※(1)については、従前より衛生上の理由で中国製の牛乳・乳製品のEU域内への輸入は許可されていないが、それを改めて規定したもの。


導入された措置の影響

 乳成分を15%以上含む中国製品に対する検査が導入された結果、10月3日現在、既に設定された基準値(2.5ミリグラム/キログラム)を上回る中国製チョコレート菓子、キャンディーが複数の加盟国で確認され、回収措置が講じられている。

 前述のとおり、EUは衛生上の理由から中国製の牛乳・乳製品の輸入を従前より認めてこなかったため、今般の乳幼児用の粉ミルクなどの輸入禁止による直接的な影響はないとみられる。しかしながら、輸入業者は、消費者の「中国製食品」に対する信頼が揺らぐ中で、これまで相当量が輸入されてきた中国製菓子類について新たに導入された措置に要する労力・費用を負担してまで輸入を継続することの是非を再検討することになるとみられる。

 安価な労働力を背景に世界の食品加工基地として発展してきた中国において、近年相次いで食の安全を揺るがすケースが発生しており、これまで中国製の牛乳・乳製品を利用することにより安価な加工食品を生産・供給してきた食品産業が、中国製以外の乳製品を国際市場に求める動きが広がれば、EUを含む世界の乳製品市場にも影響を与えることになるとみられる。


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