需給動向 海外

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2008年第3四半期の鶏肉調製品の輸出は引き続き好調


◇絵でみる需給動向◇


2008年第3四半期までの生産量はわずかに増加、価格も好調に推移

 タイ農業・協同組合省(MOAC)によると、2008年9月のブロイラー生産量は前年同月比0.7%増の約7千5百万羽となった。2008年のブロイラー生産量は、8月には前年同月比99.9%となったものの、その他の月は前年同月を上回って推移した。生産量は2007年1月以降、7千万羽を超えて横ばい傾向で推移している。この結果、2008年第3四半期まで(1〜9月)の生産量は、前年同期比2.7%増の約6億7千6百万羽となった。ひなふ化羽数についても、ブロイラー生産量と同様に横ばい傾向で推移しており、9月のひなふ化羽数は前年同月比0.7%増の約7千8百万羽となった。

 生産量が横ばい傾向で推移している中、9月の卸売価格(生体)は、前年同月比6.8%高のキログラム当たり39.0バーツ(約105円:1バーツ=2.7円)となった。同21.0%高の44.5バーツ(約120円)と大幅に上昇した8月と比較すると、87.7%とかなり大きく下降したものの、2007年3月以降、前年同月を上回って堅調に推移している。9月の小売価格(中抜き)は、前年同月比10.3%高の同62.4バーツ(約168円)となり、卸売価格と同様に前年を上回る水準で推移している。

図1 鶏肉生産量と卸売価格の推移

2008年第3四半期までの鶏肉調製品の輸出は大幅に増加

 9月の鶏肉調製品の輸出量は、前年同月比48.3%増の約3万3千トンとなった。主な輸出国別でみると、日本は同98.5%増の約1万6千3百トン、英国は同28.3%増の約9千7百トン、オランダは同16.7%増の約2千6百トンとなった。

 2008年第3四半期まで(1〜9月)の輸出量は約26万4千トンとなり、前年同期の実績約19万4千トンを36.3%上回った。国別実績は、日本が同48.8%増の約11万5千トン、英国は同20.3%増の約7万8千トン、オランダは同49.1%増の約2万7千トンとなった。国別シェアをみると、日本向けは43.6%と、前年同期の39.9%から3.7ポイント増加した。EU向けは49.4%と、前年同期の53.6%から4.2ポイント減少し、50%を下回った。EU向けの約6割を占める英国は33.6%から29.7%へ減少したが、約2割を占めるオランダは9.4%から10.3%へと増加した。

 タイブロイラー加工輸出協会によれば、食品衛生上の問題が発生した中国産からタイ産へのシフトが進んだため、日本向けシェアが増加しているとのことである。

 また、日本とEU以外の新規市場として有望視されている国では、シンガポール向けが同58.4%増の約7千4百トン、韓国向けが同37.8%増の約4千4百トンとなり、いずれもシェアを拡大した一方で、香港向けは約2千7百トンと同6.3%増だったもの、シェアを減少させた。

 シンガポール以外の東南アジア諸国向けでは、ベトナムが約1千5百トン、ミャンマーが約2百トンと、それぞれ同586.9%、同139.6%と大幅に増加している。一昨年輸出が再開されたアラブ首長国連邦には、63トンが輸出された。

調製品の輸出価格は引き続き大幅に上昇

 2008年9月の鶏肉調製品の平均輸出価格は、キログラム当たり154.9バーツ(約403円)となり、対日輸出価格は前年同月比40.5%高の同151.3バーツ(約409円)であった。輸出価格は、2006年以降、総じて低下傾向で推移してきたが、2007年10月以降、上昇傾向で推移している。特に12月以降は、前年同月比10%以上の上昇傾向で推移し、2008年7月には同31.2%、8月には40.9%と大幅に上昇した。

 タイブロイラー加工輸出協会によれば、飼料価格などの生産原価の値上がりにより、2008年8月までに輸出価格は大幅に値上がりしたが、同年12月現在、飼料価格が下がり始めたため、輸出価格も下がっており、2009年第1四半期の輸出価格は、その水準を維持すると推測されるとのことである。

 鶏肉は政府の価格監視品目であるため、生産コストの上昇分を即刻国内価格に反映することは難しいものの、輸出向けの調製品は価格が監視されないため、国内向けに比べてコスト上昇分を転嫁しやすいとされている。

鶏肉調製品国別輸出量(2008年第3四半期まで)

飼料価格値下げのため大豆かす関税引き下げへ

 タイでは、飼料原料のトウモロコシや魚粉の自給率は高いものの、大豆かすは輸入に頼っており、2006年の自給率は約7割であった。飼料用大豆かすの輸入価格は、2007年2月以降上昇を続けている。特に同年11月以降は、世界的な穀物価格の高騰を反映し、前年同月比で40%以上の上昇が続き、2008年9月の平均輸入価格は、同66.7%高のキログラム当たり17.0バーツ(約46円)となった。現在は、国際相場を反映して輸入価格も下降に転じているとされるが、政府は、2009年1月から1年間、大豆かすの関税を4%から2%に引き下げることとしている。

図2 鯛の鶏肉調製品輸出価格と大豆かす輸入価格の推移

高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されるも鶏肉調製品輸出への影響は限定的

 MOACは2008年11月10日、北部のスコーンタイ県で高病原性鳥インフルエンザ(AI)の発生が確認されたと発表した。これは同年1月に2県で発生が確認されて以来の発生となる。また、同月14日には、北部のウタイタニ県でもAIの発生が発表された。いずれのケースも地鶏での発生であり、ヒトへの感染は見られず、殺処分や周辺の移動制限などの防疫措置が実施されている。

 このAIの発生により、マレーシアや中国はタイからの鶏肉の輸入を禁止した。また、報道によれば、香港やサウジアラビア向けの輸出がキャンセルされた。しかしながら、タイブロイラー加工輸出協会では、鶏肉の輸出量は少ないため、鶏肉調製品の輸出への影響は限定的と見ている。2008年第3四半期までの冷凍鶏肉の輸出量は、約1万7千トンとなっている。


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