アイルランド政府の措置および欧州食品安全機関のリスク評価が問題の沈静化に効果
2008年12月6日にアイルランド産豚肉のダイオキシン汚染問題が表面化し、EU域内における豚肉消費への影響が懸念されたが、問題発生から1カ月余を経過した現時点においては、豚枝肉卸売価格を見る限り影響は無視できる水準となっている。問題表面化後、アイルランド政府が即座に市場に流通している疑わしい豚肉の市場隔離および確実な処分を発表するとともに、欧州食品安全機関も、汚染された恐れのある豚肉を最大3カ月間摂取したとしても健康上の問題はない旨のリスク評価を発表したことにより、EU全体の豚肉の流通・消費への影響が最小限に抑えられた形となった。
図1 EUにおける豚枝肉卸売り価格の推移
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アイルランド産豚肉の価格はほかの加盟国とほぼ同様の値動き
次の図はEU27およびEUの主要豚肉生産国における豚枝肉卸売価格の推移を示したものである。全体的に豚枝肉卸売価格は2008年夏をピークとして緩やかな低下傾向にあるが、2008年12月以降現在までにおいても、アイルランド産の価格はほかの加盟国とほぼ同様の値動きを示している。2009年1月の第1週の価格を見ると100キログラム当たり137ユーロ(17,637円:1ユーロ=129円)と、EU27カ国平均同141ユーロ(18,189円)を2.8%下回る程度であり、市場で相対的に低い評価を受けていないことがうかがえる。なお、EUの豚枝肉卸売価格は、例年春夏に上昇し、秋冬に低下するというサイクルを繰り返しており、2008年12月における緩やかな価格の低下は、通常の市場動向の範囲内とみることができる。
適切な対応により問題は終息へ
アイルランドは、豚のと畜頭数がEU27全体の1%程度と豚肉の主要生産国ではないものの、2008年12月の問題が表面化した当初はマスメディアで盛んに取り上げられるなど、問題への対応が適切に行われなければEU全体の豚肉流通・消費に何らかの影響を与える可能性もあった。しかし、アイルランド政府などの適切な対応により、EU全体の豚枝肉卸売価格に大きな影響を与えることなく、問題は表面化から約1カ月で終息に向かうこととなった。EUでは、と畜頭数が2008年第2四半期以降前年同期を下回る傾向が続き、2009年第1四半期も同様と見込まれていることもあり、EUの豚枝肉卸売価格はしばらく前年同期を上回る状況が続くとみられる。
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