わが国の牛乳消費量(牛乳等向け処理量)は、他の飲料との激しい競合により、平成15年度以降、5年連続で2〜3%台の減少が続いている。 酪農乳業関係者は、牛乳消費の減少に歯止めをかけ、さらには拡大を図るため、生産者団体はもとより、乳業関係者も一丸となって、牛乳の栄養価や機能性などのPRに取り組んでいるところであり、当機構も、畜産業振興事業を通じて支援している。 平成20年4月に、生産者乳価について飼料穀物価格の高騰による酪農家の生産コストの上昇等厳しい経営環境を踏まえ、3円/キログラム引き上げされ、小売価格への影響、さらには消費者の購入動向が注目された。 当機構では、社団法人日本酪農乳業協会(以下、「J−ミルク」という。)が事業実施主体となり、牛乳・乳製品の消費構造の変化等を把握し、消費拡大を図るための資料とするために、消費動向について継続的に調査を実施する事業に対し、補助している。 平成20年度の調査は、昨年6月に消費者3,200人を対象に、定型的な調査の他、「白もの牛乳の値上がりについての認識」について調査が行われ、「牛乳が値上がりしたと感じる価格」をきいたところ、逆に「値上がりしたとは感じていない」人が全体の34%を占め、値上がりしたと感じる人では、「10円くらい」が3割弱であった。また、「値上がりしたことによる行動」をきいたところ、値上がりしたと感じる人の66%が「これまでと変わらない」としているが、23%が「購入する牛乳の銘柄を安いものに変えた」と答えている。 調査月の7月から1月までの飲用牛乳等の生産量をみると、牛乳の値上がりによるものか、今までの減少傾向が続いているのかは難しいところであるが、飲用牛乳等の生産量合計は、前年同期比−2%代となっているなかで、成分調整牛乳の製造(飲用牛乳等の生産量合計の7%程度であるが)が同2割以上の伸びを示していることとも関連があると思われる。 今回は、この調査結果(概要)を紹介し、今後の牛乳消費の維持・拡大に向けた取り組みに何かしらのヒントにつながれば幸いである。 また、生産者乳価は酪農経営の厳しい環境が継続していることから、平成21年3月には、10円/キログラム引き上げることで生産者と乳業者の間で合意がなされ、この価格引き上げと消費者の購買動向がどうなるかということが注目されている。 このことについても、J−ミルクは、昨年12月に大都市圏(東京、名古屋、大阪)の消費者6,000人を対象にWebによる緊急調査を実施し、「普通牛乳・紙パック・1L」が10〜15円値上がりしたときの購入量について、「変わらない」とする人が72.5%いる一方、1割以上減ると答えた人が26.2%いたとしている。 昨年秋以降、わが国の景気が一層後退する局面の中で、3月以降に予定される牛乳価格の改定を控え、牛乳消費の減退を防ぐため、酪農乳業関係者が一丸となって、消費者や流通関係者の理解を得るための努力を行うことの重要性が増している。
1.白もの牛乳類の飲用実態(1) 白もの牛乳類の飲用頻度 〜白もの牛乳類(注1)を毎日飲む人は4割弱〜 飲み方を問わず飲む頻度をきいたところ、毎日飲む人は37%、週に5〜6日飲む人を合わせると、中学生以上の人の46%の人が毎日飲んでいる(図表1)。ほぼ毎日飲用する人の割合は2000年以降、減少傾向となっている。 ほぼ毎日飲む人の割合は、男女とも中学生で高く、逆に、男性の20〜50代、女性の中学生を除く10代では3割台と低い。 2005年まで10%台であった「全く飲まない」人の割合は、2007年以降、12%台となっている。
〜1日あたりの平均飲用量は総じて減少傾向〜 白もの牛乳類の1日あたりの飲用量(注2)は、男性、女性、全体ともに、やや減少している。性年代別にみると、前年比で男女とも中学生と40代で、また女性の60代で増加がみられるものの、他の年代では総じて減少している(図表2)。
〜「コーヒーなどに入れて飲む」飲み方は飲用量の3割強〜 白もの牛乳類の飲み方は、「そのまま飲む」飲み方で「毎日飲む」人の割合は2割強、「他のものと混ぜて飲む」飲み方で「毎日飲む」人の割合は2割弱となっている。 飲用量の飲み方別の割合は、「そのまま飲む」飲み方が62%、「そのまま飲む」以外の飲み方が38%で、2007年に比べて「そのまま飲む」割合がやや減っている一方、「そのまま飲む」以外の飲み方の割合がやや増えている(図表3)。
(4) 白物牛乳類の飲用シーン 〜飲用シーンのトップは「朝食をとりながら」が44%で増加傾向〜 白もの牛乳類を飲むシーンで多いのは、「朝食をとりながら」、「のどがかわいたとき」、「おやつや間食時」でそれぞれ4割前後となっている(図表4)。
(5) 白もの牛乳類の飲用理由 〜「カルシウム」「栄養」「健康によい」が牛乳飲用の3大理由〜 白もの牛乳類を飲む理由で最も多いのは「カルシウムがあるから」で、次いで「栄養があるから」、「健康によいから」が多い。 「カルシウムがあるから」は48%、「栄養があるから」は38%、「健康によいから」は34%と、2007年に比べて大きな変化はないが、「好きだから」「おいしいから」では、前年比2ポイント増となっている(図表5)。
2.白もの牛乳類飲用量の変化に関する意識〜この1年間に牛乳を飲む量が「減った」と感じる人は1割強〜 この1年間に、そのまま飲む量が「増えた」と答えた人は7%、「減った」と答えた人が16%、一方、混ぜて飲む量は「増えた」と答えた人が10%、「減った」と答えた人が11%となっており、いずれの飲み方でも「減った」人が「増えた」人を上回っている。全体の飲用量についても、「減った」と答えた人(13%)が「増えた」と答えた人(10%)を上回っており、2007年同様の傾向となっている(図表6(1))。 今後の飲用については、全体の65%が飲みたい(「とても飲みたい」「まあ飲みたい」の合計)という意向を示しており、飲みたくないという人(「全く飲みたくない」「飲みたくない」の合計)は14%である。この1年間に飲用量が減少した人でも5割強が飲用意向を示している(図表6(2))。
3.白もの牛乳類の飲用を阻害する要因〜牛乳を飲まない理由は「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」が4割弱〜 飲用量が減少した、あるいはもともと飲まない理由では、「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」にあてはまる人が最も多く37%となっている。 「牛乳は飲んだあと口に残る(32%)」、「牛乳は味にくせがある(29%)」、「牛乳のにおいが嫌い(28%)」も飲用を阻害する要因として挙げられている(図表7)。
4.白もの牛乳類の購入実態〜白もの牛乳類の購入頻度は週に2〜3回くらいが4割強〜 白もの牛乳類を「ほぼ毎日」買う人は2割弱、「週に2〜3回くらい」買うという人は4割強で、「週に1回くらい」以上買う人は8割強にのぼる。2006年と比べると、この割合は全体で5ポイント以上の増加となっている(図表8)。
ふだん購入する飲み物・乳製品は、「白もの牛乳類」が全体の66%で最も多く、「無糖のお茶飲料」が56%でこれに続く(図表9)。
5.白もの牛乳類の価格の値上がりについての認識〜牛乳が値上がりしたとは感じない人が3割強〜 牛乳が値上がりしたと感じる価格をきいたところ、「値上がりしたとは感じていない」人が全体の34%を占めた。値上がりしたと感じる人では、「10円くらい」が3割弱で最も多く、次いで「20円くらい」が2割弱である(図表10)。
値上がりしたことによる行動では、値上がりしたと感じる人の66%が「これまでと変わらない」としているが、23%は「購入する牛乳の銘柄を安いものに変えた」と答えている(図表11)。
6.ヨーグルトの飲食頻度とタイプ〜ヨーグルトを毎日飲食する人は15%〜 ヨーグルトの飲食頻度は、「毎日食べたり飲んだりする」が15%で、「週に1〜2日」以上ヨーグルトを食べたり飲んだりする人の割合は5割強となっている(図表12)。
2007年と比較すると、ヨーグルトを「週に1〜2日」以上飲食する人の割合は微減となっている。 タイプ別では、「加糖のヨーグルト」を食べる人が2007年に比べて2ポイントほど減少しているが、「プレーンヨーグルト」「果肉フルーツ入りのヨーグルト」「ドリンクヨーグルト」を飲食する人の割合に、ほとんど変化はみられない(図表13)。
7.いろいろな飲み物と牛乳〜普段よく飲む飲み物は「無糖のお茶飲料」に次いで「牛乳」、「コーヒー」〜 普段よく飲む飲み物をいくつでもあげてもらったところ、最も多いのは「無糖のお茶飲料」の65%、次いで、「白もの牛乳類」が57%、「コーヒー」が55%である。 普段よく飲む飲み物の中から最もよく飲むものをひとつだけ選んでもらった結果では、「無糖のお茶飲料」4割弱、「コーヒー」2割強、「白もの牛乳類」2割弱であった。(図表14)
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