海外トピックス


アイルランド産豚肉に対する民間在庫補助の適用を決定



アイルランド養豚産業への救済措置としての位置づけ

 欧州委員会の発表によれば、EU加盟国は2008年12月11日、ダイオキシン汚染問題(参考:http://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/eu/ eu20081210.htm)で危機に陥っているアイルランド豚肉産業を救済するため、汚染されていないアイルランド産豚肉について、最長6カ月間、最大3万トンの規模でEUに造成された基金を原資とした民間在庫補助の対象とすることを満場一致で採択した。この措置は総額1千5百万ユーロ(約19億円、1ユーロ=129円)の規模とされ、数日以内に施行されるとみられる。

 アイルランド政府も、欧州食品安全機関(EFSA)が12月10日に公表したリスク評価結果により、実質的にアイルランド産豚肉の流通再開にお墨付きが与えられた形となったことから、問題の発覚(12月6日)より操業停止状態にあった国内の食肉処理施設について、獣医官による監視の強化と汚染飼料を給与されていない豚由来である旨の表示を前提に、12月11日より再開することを発表した。これらの措置によりアイルランド国内で豚肉生産が滞るという最悪の結果は回避できる見込みとなった。

 なお、アイルランド政府はこれまで、汚染が始まったと推定される2008年9月1日以降12月7日までに国内で生産された豚肉およびそれらの製品(以下「豚肉など」という。)をすべて市場から隔離し、汚染飼料を給与した可能性のある豚をすべて処分するという方針を示していたが、同期間に生産された豚肉などであっても、汚染飼料を給与されていない群由来であることが証明できるものについては、市場流通を認める旨を12月10日付で通知した。

民間在庫補助には二重の効果も

 今回措置されたアイルランド産豚肉に対する民間在庫補助には二重の効果があると考えられる。すなわち、現在市場から敬遠されているアイルランド産豚肉が行き場を失い暴落するという事態を避け、アイルランド産豚肉が正当な評価を得られるようになった段階で市場に戻すということが一義的な目的と考えられるものの、アイルランド産豚肉の市場流通を一定程度調節することにより、EU産豚肉全体の消費が減退することを最小限に食い止めるということも視野に入っていると考えられる。

 EU域内においても、民間在庫補助や介入機関による介入買入は古典的な手法と位置付けられ、脚光を浴びる機会は少なくなっているが、今回の措置が功を奏すればこれらの措置の存在意義が見直される可能性もある。

 いずれにしても、2008年上半期まで好調であったとはいえ秋以降低落傾向にある域内豚肉価格の動向が注目される。



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