需給動向 海外

◆米 国◆

好調な米国の鶏肉輸出に構造変化の兆し


◇絵でみる需給動向◇


2008年の輸出量は前年から17.9%増加

 米国農務省(USDA)によると、2008年のブロイラー輸出量(加工品を含む)は前年を17.9%上回る315万8千トンとなり、昨年に続き、過去最高水準を更新した。これは、国内のブロイラー生産量1,674万トンの18.9%に相当し、生産量に占める輸出量の割合も過去最高となっている。

 図1は米国から輸出されるブロイラーの品目別数量の推移を示したものである。米国の鶏肉輸出の大半は国内消費が少ないもも肉に集中しており、2008年の総輸出量のうち、冷凍もも四分体(レッグクォーター)が189万7千トンと全体の60.1%を占めている。しかし、その輸出の伸びは前年比8.7%増と平均を下回っている。

 冷凍もも四分体に次いで輸出が多かったのは全体の14.5%を占める冷凍その他(むね肉や味付部分肉など)で、前年比25.8%増の45万8千トンとなった。さらに、生鮮部分肉が前年比30.8%増の24万7千トンと全体の7.8%を占めてこれに続いている。

図1 ブロイラーの品目別輸出量の推移

最大の輸出先であるロシア向けは 前年を下回る

 図2は主要輸出先別に四半期ごとのブロイラー輸出量の推移を示したものである。2008年第4四半期の輸出量は79万6千トンと前年同期を7.8%上回ったものの、過去最高の水準だった前期(2008年第3四半期)に比べると8.2%減少した。

 このうち、最大の輸出先であるロシア向けは15万2千トンと大きく減少し、前年同期を35.2%、前期を35.5%下回った。ロシア向けの輸出は、原油価格が下落し始めた2008年8月以降、前年を下回る状況が続いていたが、特に12月については前年同月比75.9%の大幅減となる1万1千トンにとどまった。これは、食鳥処理時に塩素系の洗浄水を使用する米国に対し、ロシア側が衛生上の問題から2009年以降の全面的な輸入規制の導入を通告した影響によるものであり、2008年末に両国間で実施の1年先送りが合意されたことを受けて、2009年1月の輸出量は前年同月比19.8%増の6万5千トンに回復している。なお、2008年全体のロシア向け輸出量は、前年を3.8%下回る82万3千トンとなっており、全輸出量に占めるシェアも26.1%に低下している。

中国向け、メキシコ向けは好調が続く

 一方、ロシアに次ぐ輸出先の中国については、2008年第4四半期の輸出量が8万1千トンに達し、前年同期を20.2%、前期を16.8%上回った。北京五輪の終了後には一時的に伸び悩んだものの、2008年11月以降の輸出量は前年を上回る状況が続いており、2009年1月も3万2千トンと前年同月を57.9%上回っている。2008年全体で見ると、中国向け輸出量は33万3千トンと前年を12.1%上回ったものの、米国の全輸出量に占めるシェアは10.5%と前年の11.1%よりも低下している。

 また、米国にとって第3位の輸出先となるメキシコ向けについては、第4四半期の輸出量が前年同期比56.4%増、前期比19.1%増の9万5千トンとなった。2009年1月の輸出量についても2万7千トンと前年同月を28.7%上回り、2008年2月以降12カ月連続で前年実績を上回っている。2008年全体では、メキシコ向け輸出量は30万8千トンと前年を27.4%上回り、全体に占めるシェアも前年の9.0%から9.8%に上昇している。

 これ以外の仕向け先については、ウクライナ向けが前年比96.9%増の17万7千トン、キューバ向けが同50.4%増の14万4千トン、カナダ向けが同6.0%増の12万1千トン(いずれも2008年合計)となっている。

図2 ブロイラーの輸出量の推移(四半期別)

冷凍もも四分体の在庫数量は急速に減少

 図3は米国の冷凍もも四分体の卸売価格、平均輸出単価、在庫数量をまとめたものである。

 2009年2月の米国北東部における冷凍もも四分体価格は前年同月比16.4%安のキログラム当たり0.80ドル(キログラム当たり79.2円:1ドル=99円)となり、2008年11月以降4カ月連続で前年を大きく下回った。また、平均輸出単価も低下傾向にあり、2009年1月は前年同月比0.7%安のキログラム当たり0.84ドル(キログラム当たり83.2円)となった。特に、中国向けが同30.5%安の0.66ドル(同65.3円)、メキシコ向けが同15.7%安の0.73ドル(同72.3円)に低下していることが注目される。

 一方、期末在庫数量は2008年11月をピークに減少に転じ、2009年2月は前年比25.5%減の2万8千トンに低下している。飼料価格の高騰を背景に生産羽数の削減を進めてきた米国のブロイラー企業が、世界的な景気の悪化を契機に、昨年末から今年初めにかけて冷凍もも四分体の在庫処分輸出を進めてきたことがうかがえる。

 ロシア向けの輸出については、2005年に締結された食肉貿易協定の一部見直し交渉が2008年末に妥結されたことにより、両国間で懸案となっていた食鳥処理時の塩素系洗浄水の使用の問題の解決を1年先送りする一方で、2009年の家きん肉の関税割当数量を2008年の割当数量から18万トン減(実績数量から7万3千トン減)となる75万トンにすることが合意されている。このような背景もあって、2009年1月のロシア向け冷凍もも四分体の輸出単価は、平均輸出単価を大きく上回る同1.03ドル(同102.0円)となっている。

図3 冷凍もも(後四分体)の価格と在庫量の推移

 


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