需給動向 海外

◆米 国◆

輸出低迷の影響を受ける米国の豚肉需給


◇絵でみる需給動向◇


6月の豚肉輸出量 は前年を36%下回る。2009年は前年を10%下回る見込み

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2009年6月の豚肉輸出量(枝肉重量ベース)は前年同期を35.7%下回る13万6千トンとなった。世界的な景気の後退による需要の減退や、4月末に米国において新型インフルエンザ(A/H1N1)が発生したことに伴い、十数カ国が米国または米国の一部の州からの輸入を禁止したことから、豚肉輸出は、5月、6月は前年同月を3割以上も下回り、1〜6月の上半期累計では20.4%下回る90万1千トンとなった。

図1 輸出先国別豚肉輸出量の推移

 全輸出量の8割以上を占める上位6カ国の上半期の輸出量は前年同期を35.4%下回る11万5千トンとなっている。このうち、減少幅が最も大きかったのが中国(香港を含む)である。2008年には、オリンピックや国内生産の減少による特需により日本に次ぐ輸出先となったが、2009年は、特需が終わり輸出が大幅に減少する中、米国での新型インフルエンザ発生後、発生州からの輸入を禁止したため、前年同期を72.9%下回っている。また、2008年の輸出先第4位のロシアは、米国産豚肉に対する検疫の関係で昨年12月以降大幅に輸入量を減らす中、米国の新型インフルエンザ発生に伴い、発生州からの輸入を禁止したため、前年同期を37.6%下回っている。

 最大の輸出先である日本は、為替が円高ドル安であったことから1月、2月は前年を2割前後上回ったが、国内在庫が膨らんだため5月、6月は大きく減少し、上半期は前年同期比0.3%増にとどまった。

 上位6カ国の中で唯一輸出が大きく伸びているのがメキシコ向けで、前年同期を38.6%上回っている。2009年は新型インフルエンザの影響で5月のみ前年を下回ったが、6月は前年を26.8%上回るなど驚異的に回復し、今後も輸出増加が期待されている。

 米国の豚肉輸出は、世界的な景気後退に伴う需要の減退や秋以降の新型インフルエンザの世界的流行が予想されることから減少基調から抜け出す見通しはなく、同局は2009年の輸出は前年を10.4%下回ると予測している。

図2 輸出先国別豚肉輸出の前年同期比の推移

輸出の減少により緩む国内需給

 豚肉生産量は生産者の生産調整により本年1〜7月の累計では2.5%下回っているものの、輸出の減少分が国内に回り、それに見合う国内需要がないことから、在庫は膨らみ、7月末の在庫は前年を9.0%上回る水準となっている。

 と畜頭数は飼養頭数の削減を受けて減少傾向にあるが、一方で、ここ1カ月の繁殖母豚のと畜頭数については、前年同期を上回る傾向が顕著になってきている。生産者が経営規模の縮小に本格的に取り組み始めた兆候ではないかと推測される。

 このような中、全米豚肉生産者協議会(NPPC)は8月17日、豚肉需給の改善を図るため、豚肉の買い上げを中心とした総額2億5千万ドルの対策を要請する書簡をヴィルサック農務長官に発出した。これを受け、USDAは9月3日、2009年度予算で3千万ドルの豚肉買い上げを発表したところである。(詳細は「海外トピックス」参照)

図3 繁殖母豚と畜頭数の推移と前年同期比

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