不振であった昨年同期に比べ、数量で5割以上増 国家動植物衛生機構(SENASA)によると、2009年上半期のアルゼンチンの牛肉輸出(生鮮、冷蔵および冷凍、製品重量ベース)は、国際金融危機の影響が懸念されていたが、生鮮肉をはじめ各品目が軒並み増加したことから、数量で前年同期比56.0%増の約25万4000トン、金額で同27.6%増の約8億3300万ドル(783億円、1ドル=94円)となった。今年上半期の輸出は、近年では数量、金額ともに高水準にある。 品目別では、生鮮肉が数量で同65.1%増の14万3000トン、金額で同35.3%増の4億8800万ドル(459億円)、加工肉がそれぞれ同57.1%増の1万6000トン、同66.4%増の6000万ドル(56億円)などとなった。しかし、一定基準を満たす骨なし高級生鮮牛肉に関する関税割当制度(通称ヒルトン枠:割当数量は2万8000トン、年度は7月から翌年の6月、他品目よりも輸出価格が高い)に基づくEU向け輸出は、数量で同55.5%増の1万9000トンとなったものの、国際金融危機の影響による世界的な牛肉需要の不振およびこの期間の全般的なドル高傾向により輸出単価が大幅に下落したことなどから、金額で同0.6%増の1億8200万ドル(171億円)にとどまった。なお、2008/09年度のヒルトン枠は、ほぼ全量が消化された。
順調な輸出許可が原因 この原因について、業界関係者は、今年は政府の牛肉の輸出許可が順調に出ていることを挙げている。昨年は3月以降の穀物輸出課徴金をめぐる政府と農業団体の対立が激化したことから、牛肉の輸出許可がこの時期にあまり出ていなかったとのことである。また、そのころの農業団体などのストライキによる道路封鎖の影響から、生産者から牛肉パッカーへの牛の出荷が一部滞ったことなども影響したとのことである。 さらに、今年3月に政府と農業団体との協議で、牛肉輸出に関して、以下の事項が合意されたことも影響しているとみられる。 1 年間54万トン(枝肉ベース)の輸出許可数量を60万トンに増加(ヒルトン枠は除く。) 2 各牛肉パッカーの国内向け牛肉保管を75%から65%に引き下げ 3 ヒルトン枠に対する輸出許可の迅速化 下半期以降の輸出は、繁殖メス牛減少の影響を受け減少へ しかしながら、SENASAが発表する口蹄疫ワクチン接種頭数結果によれば、2008年下半期の繁殖めす牛頭数は、前年同期比6.3%減の2214万頭となっており、受胎率も低下していると言われていることから、牛肉生産量は今後減少傾向が続くとみられる。 (詳細は、http://lin. lin. go. jp/alic/week/2009/ar/ar20090508b. htm参照)。 そこで、今年下半期の輸出見通しについて、業界関係者に聞いたところ、「今年上半期の輸出は、月間平均4万2000トン以上になったが、牛肉生産量減少の影響を受け、9月以降は同3万5000トンから4万トンになるであろう。2010年および2011年の牛肉輸出は、その影響でさらに減少するのではないか。」とのことであった。なお、業界関係者の間では、政府が今後の牛肉の国内供給不足を回避するため、牛肉の輸出停止措置など再び輸出管理を強めるのではないかと懸念されている。 |
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