輸出ブランド

群馬の大地で育った 県産ブランド牛肉「上州和牛」、シンガポールで販売



 平成25年までに輸出額を1兆円規模に拡大するという目標の下、官民挙げての総合的な輸出戦略が推進されています。こうした中、各地の畜産物輸出ブランドについて、随時、本稿で紹介していきます。

 今月は、株式会社群馬県食肉卸売市場で処理された群馬県産牛肉「上州和牛」が、シンガポールの日系スーパー向けに輸出されている事例を紹介します。

地元群馬はもとより、首都圏でも古くから親しまれてきた「上州和牛」

 群馬県は、利根川水系の豊富な水資源と上毛三山(赤城山、榛名山、妙義山)に囲まれた畜産が盛んな地域で、この素晴らしい環境の下で生産された群馬の牛肉は、古くから風味の豊かな牛肉として、東京など首都圏の消費地で親しまれていた。

 「上州和牛」とは、群馬県の銘柄牛で、「上州牛」(同県内で肥育され、株式会社群馬県食肉卸売市場で処理された肉牛で、肉質等級2以上のものの総称)のうち、優秀な血統の黒毛和種を和牛用専門飼料により肥育したもので、風味・キメに優れ、肉質が柔らかく、脂も上質なのが特徴とされている。

アメリカ、カナダ、香港に続き、シンガポールでも販売開始

 平成21年6月18日、シンガポールの日系スーパーマーケットにおいて、「上州和牛」の販売が開始された。

 シンガポールでは、平成13年の日本での牛海綿状脳症(BSE)発生により日本産牛肉の輸入が禁止されていたが、平成21年5月14日、同社を含む日本の3カ所の食肉処理施設が対シンガポール輸出可能施設として認定されたことで、輸入再開が認められていた。(「畜産の情報」2009年8月号94頁参照)

 同社は、平成2年に対米輸出認定施設の資格を取得し、続いて平成19年には対カナダおよび対香港認定を取得するなど、積極的に牛肉販売の海外展開を行っている。平成20年の輸出向け加工実績は31.4トン(米国向け24.8トン、カナダ向け1.6トン、香港向け5.0トン)となっている。

高級和牛として、シンガポールでも一定の評価

 同社で処理された「上州和牛」は、輸出取扱者であるJA全農ミートフーズ株式会社を通じ、成田空港→シンガポール・チャンギ国際空港と経由され、出荷から約1週間後には店頭で販売されている。

 現地で販売されている牛肉は、「上州和牛」の中でも最上級ランク(A5・A4)の霜降り牛肉で、リブロース、サーロインといった高級部位を中心とし、主にステーキやしゃぶしゃぶ用として100グラム当たり35シンガポールドル(約2,345円:1シンガポールドル=67円)前後で売られている。豪州産サーロイン牛肉やブラジル産冷凍牛肉と比較すると約10倍前後の高値であるが、現地の高級和食・フレンチレストランにおいても利用されるなど、食に関する興味、関心が高い現地富裕層や同国在住の日本人をターゲットとし、人気を博している。

【シンガポールへ輸出される「上州和牛」】

「海外での販売を継続し、生産意欲の 向上に繋げたい」

 同社や全国農業協同組合連合会およびその関連会社は8月20日、シンガポールの日本食レストランで、地元の食品流通業者であるEuraco Finefood Pte Ltd(ユーラコ社)との共催により、「上州和牛」のPRレセプションを開催した。また、現地スーパーにおいて「上州和牛」のプロモーションを実施するなど、同国での販売促進活動に積極的に取り組んでいる。

 同社営業部の荒井部長は、「日本が誇る和牛は、米国など海外でも認められてきた。シンガポールにおいても非常に好感触だと聞いている。今後とも、上州和牛の品質や味の良さを伝えていきたい。同国への輸出が軌道に乗れば、国内の需要の喚起にもつながり、生産者の励みにもなる」と話し、今後も月に10頭程度の輸出を続けていきたいとしている。

【現地スーパーでのプロモーションの様子】

  協力:株式会社群馬県食肉卸売市場
      群馬県農政部畜産課


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