収益性の改善に伴い増産に向かうブロイラー産業
2009年(1〜12月)のブロイラー生産量は前年比3.8%減の1609万8千トンとなり、1973年以降初めて前年を下回ることとなった。これまで米国のブロイラー産業は、健康志向を反映した国内消費の増加などに支えられ、着実に生産を伸ばしてきたところであるが、トウモロコシをはじめとする飼料原料価格の高騰を反映し、2009年の生産量が減少したものと考えられる。
2010年1月の生産量は、前年比1.4%減の128万4千トンとなっており前年の減産傾向は継続している。しかし、米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)の「Broiler
Hatchery」によると、米国の主要19州におけるブロイラー種卵ふ卵個数は、2008年3月下旬以降約20カ月間にわたり前年を下回る状態で推移したが、収益性が改善するにつれてその減少幅は次第に小さくなり、昨年11月中旬には前年を上回るようになった。2009年末から2010年2月第4週までの6週間では連続して前年を上回る水準で推移しており、こうした動きを反映して、USDA経済調査局(USDA/ERS)は、2010年の生産量は第4四半期には前年比3.1%の増加となり、通年でも前年比約1%増の1628万4千トンと、再び増加に転じると見込んでいる。
図7 ブロイラー種卵ふ卵個数
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ロシア、中国向けの輸出が大きな課題
USDA/ERSによると、2009年のブロイラー輸出量は、前年比1.8%減の310万トンとなっている。国別の動向を見ると、メキシコ向けは景気悪化に伴う低価格志向などにより前年比19.9%の増加となったものの、輸出量の約25%のシェアを占めるロシア向けが、関税割当量の減少などの理由により前年比10.9%減となっており、全体の輸出量に影響を与えたものと考えられる。ロシア向けについては、2010年の関税割当数量が750千トンから600千トンへ削減されることに加え、米国における食鳥処理時の塩素系洗浄水の使用が衛生上の問題とみなされ、2010年1月19日より輸出が禁止されている。当該措置については、両国間で協議が行われているものの、3月上旬時点において、輸出が再開される目途は立っていない。また、中国向けについては、米国産鶏肉に対するアンチダンピング措置として2月13日より最高105%の関税が課せられており、輸出の大きな障害となっている。これら主要輸出先の現状を踏まえて、USDA/ERSは、2010年の輸出量を前年比14.4%減の264万2千トンと見込んでいる。
表2 国別ブロイラー輸出量の推移(1〜12月)
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2010年の鶏肉卸売価格は堅調、しかし、もも肉価格には注意が必要
2010年の鶏肉卸売価格(丸どり、中抜き)については、生産量が微増にとどまることや鶏肉消費が堅調なことなどから、USDAは前年並みのポンド当たり76〜81セント(約69〜73円:1ドル=90円)としており、生産量がやや増加する第4四半期にはさらに数セント低下するものと見込んでいる。しかし、ロシアとの輸出条件の摺り合わせや、中国のアンチダンピング措置など、輸出をめぐる情勢が刻一刻と変化しており、国内の卸売価格にも大きな影響を与える可能性も否定できない状況にある。特に、ロシア向け輸出量の約9割は冷凍もも4分体(レッグクォーター)に集中しているが、USDA/NASSの「Cold
Storage」によると、2010年1月の冷凍もも4分体の期末在庫は、ロシアへの輸出禁止の影響もあり、前月比23%増の4万1千トンと増加し、同月の冷凍もも4分体の卸売価格(北東部)は3カ月ぶりに前年同月を1.2%下回っている。輸出の動向が、今後の国内のもも肉卸売価格、ひいては鶏肉全体の卸売価格にどのような影響を与えるのか、注目されるところである。
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