農林水産省は、20年度の肥育豚生産費を公表した。これによると、肥育豚1頭当たり全算入生産費は3万5,337円で、前年度に比べ3.9%増加した。これは、配合飼料価格の高騰により飼料費が増加したことなどによる。一方、1頭当たり粗収益は3万4,690円で、年度前半は枝肉価格が堅調に推移したため0.6%減とほぼ前年並みであった。これらの結果、1頭あたり所得は3,144円と前年度に比べ34.7%の減少となった(図2)。
[注] 「所得」=粗収益−〔生産費総額−(家族労働費+自己資本利子+自作地地代)〕
図2 肥育豚100kg当たり生産費との一頭当たり粗収益の推移
|
|
一方、豚肉の卸売価格は、20年9月以降15カ月連続で前年同月を下回って推移しており、出荷頭数の増加や景気低迷により、21年7月以降、下落幅が大きくなり、安定基準価格を下回る状況となったことから、10月中旬から調整保管が開始された。これにより、11月以降はキログラム当たり400円程度に回復した。さらに、12月下旬は年末需要や寒波の影響などで供給量が減少し、一時的に高値となったものの、養豚経営はコスト割れの状態にあり、極めて厳しい状況にある(図3)。このため、当機構は、養豚経営の安定を図るための対策を緊急に講じることとした。
具体的には、地域肉豚基金を補完する形で、肉豚価格(省令価格)がキログラム当たり440円(肉豚における物財費相当)を下回った場合に、その差額の1/2相当の補てん金を交付する。補てん金単価は、キログラム当たり20円(1頭当たり約1,500円)を上限とし、月ごとの枝肉単価がキログラム当たり400円を上回った場合、補てん金単価は減額となる。
指標となる枝肉価格は、省令価格(東京・大阪市場の加重平均価格)で、22年1〜3月に出荷される豚が対象(前年度同時期の交付実績頭数が上限) となる。
図3 豚肉卸売省令価格の推移(東京・大阪加重平均)
|
|
|