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米国農務省、新たな酪農支援策を発表


290百万ドルの酪農家への支援を発表

 2010年会計年度(2009年10月〜2010年9月)の農業予算に関する議論において、乳価低迷とコスト高に苦しむ酪農経営の厳しい現状にかんがみ、350百万ドル(325億5千万円:1ドル=93円)を酪農分野に充当することが決定され、その使途について、60百万ドル(55億8千万円)を乳製品の買い上げに、残りの290百万ドル(269億7千万円)を生産者への直接的な支援に用いることが検討されていた。

 このような中、米国農務省(USDA)ヴィルサック農務長官は2009年12月17日、この290百万ドルを財源とした、酪農家を直接支援する酪農経営損失補てん事業(DELAP)の実施を発表した。

 なお、当初は、この290百万ドルを活用してMILC(生乳所得損失補償契約事業)をベースとした直接支援策が議論されていたが、大規模生産者を多く抱える西部州の議員が、一戸当たり乳量の上限が小さいMILCでは大規模生産者には効果が少ないと反発していた経緯がある。

大規模生産者にも配慮された支援策

 DELAPの具体的な補助額は、2009年2〜7月の半年間の乳量の2倍を年間の乳量と見なし、それに支払単価を乗じて支払いが行われるとされている。同省農業サービス局(USDA/FSA)の試算では、875億ポンド(約4000万トン)の生乳が対象となり、100ポンド当たり0.32ドル(キログラム当たり0.7円)が支払われるものとしている。また、USDAは、対象となる生産者の1戸当たり乳量の上限は600万ポンド(約2700トン)とし、2006〜2008年において農外収入が年間50万ドル(4650万円)を超える生産者は対象外にするとしている。

 なお、MILCの上限乳量が298万5千ポンド(約1354トン)/戸なのに対して、今回の事業は600万ポンド/戸となり、上限設定に当たってUSDAが西部州など大規模生産者に一定の配慮をしたものと推測されるが、依然として西部州選出議員の一部から不満の声も残っている。

再三の支援策で経営回復が期待される酪農家

 USDAは翌日の12月18日、2010会計年度で確保されていた60百万ドル分の乳製品の買い上げについてはチーズを買い上げることを公表した。

 これまで政府は、苦境に立つ酪農家の支援策として5年ぶりに乳製品輸出奨励事業(DEIP)を再開したほか、乳製品価格支持制度(DPPSP)の買入価格を引き上げるなどの支援策を行ってきたところである。

 最近、乳製品の国際需給のタイト感が強まったことから米国内の乳製品価格も上昇してきている。このような中、今回の支援策により、酪農経営が一層改善されることが期待されている。

 USDAのこの支援策について全国生乳生産者連盟(NMPF)は、「経済的な困難と税金の支払いのためにDELAPの実施によって少しでも早く生産者の手元に現金が届くことを希望するが、短期的な生産者支援としてはチーズの買い上げに多くの予算を配分することが有効であるとし、これからもNMPFは乳価低迷に苦しむ生産者を支援するための長期的アプローチを模索し続けていく」と声明を公表した。

 また、本年1月6日に、ヴィルサック農務長官は昨年8月に設置した酪農検討委員会(Dairy Industry Advisory Committee)の委員を公表した。この委員会は、2年間にわたって酪農家の手取り乳価や収益の安定策について検討を行い、その結果を農務長官に提案することになっている。今後の酪農政策を巡る動きが注目される。

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