黒毛和種の肉用子牛取引価格は、昨秋以降、上昇傾向で推移しており、平成25年9月の同価格は1頭当たり50万円(前年同月比24.4%高)と、19年8月以来の高値となった(図1)。
図1 黒毛和種の肉用子牛取引頭数・価格 |
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資料:農畜産業振興機構調べ
注:取引価格は雌雄平均である。 |
交雑種の同価格も同様に上昇基調となっており、9月は同28万8000円(同38.8%高)と、過去15年間で最高価格を記録した(図2)。
図2 交雑種の肉用子牛取引頭数・価格 |
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資料:農畜産業振興機構調べ
注:取引価格は雌雄平均である。 |
ホルスタイン種は、24年度前半までおおむね1頭当たり9万円前後で推移していたが、同年11月以降、同10万円超が継続しており、25年9月も同11万7000円(同25.3%高)となっている(図3)。また、乳用種初生牛(おす)の取引価格も、25年6月に同約7万円となるなど、記録的な高水準で推移している(図4)。9月は、同4万円弱まで下落したものの、依然として過去の同時期を上回る水準となっている。
図3 ホルスタイン種の肉用子牛取引頭数・価格 |
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資料:農畜産業振興機構調べ
注:取引価格は雌雄平均である。 |
図4 乳用種初生牛(おす)の取引頭数・価格 |
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資料:日本家畜商協会、 都道府県肉用子牛価格安定基金協会 |
各品種とも、頭数不足が価格上昇の要因
このように、各品種の肉用子牛および初生牛の取引価格が、これまでにない高水準で推移している要因の一つには、取引頭数の減少がある。
黒毛和種および交雑種の取引頭数は、平成25年上半期の各月においておおむね前年を下回っており、9月もそれぞれ3万頭(前年同月比4.1%減)、5,000頭(同11.5%減)となっている。ホルスタイン種については、今年度は前年を上回る月が多いものの、過去5年平均と比較すると15パーセント程度下回って推移している。また乳用種初生牛(おす)も、月毎の変動はあるが、取引頭数の不足感が相場高につながっているものと思われ、上述の25年6月の取引価格高騰についても、取引頭数が過去5年間で最少だったことが原因とみられる。
こうした取引頭数減少の背景には、まず、長期的な傾向として肉用牛繁殖経営、酪農経営共に離農の進行があると考えられる。それに加え、黒毛和種については、22年4月の宮崎県における口蹄疫発生の影響や、大規模経営者の倒産に伴う繁殖用めす牛の減少も原因とみられる。
また、交雑種については、23年度の生乳生産の動向も影響していると考えられる。前年度の生乳需給緩和時と比べ、23年度下半期は酪農経営における黒毛和種の交配率が低下したため、24年の夏から秋にかけての出生頭数が減少し、上述の取引頭数減少につながった。
現在の堅調な枝肉相場も影響
肉用子牛の取引価格は、取引頭数に加え、その時点の牛枝肉卸売価格にも影響を受ける。今年度に関しては、既報の通り、と畜頭数の減少や需要回復などを背景に枝肉相場が堅調に推移している。これにより肥育経営において増頭意欲が高まっていることが、肉用子牛の価格上昇の一因となっている可能性がある。その一方で、今般の子牛価格高騰は、配合飼料価格の高止まりと共に生産コストを上昇させる要因となっている。この子牛価格高騰の状況が継続すると、肥育経営に大きな影響を与える懸念があることから、今後の子牛取引の動向がどのように推移するのか、注視する必要がある。
(畜産需給部 田中 あや)
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