8月の肉用繁殖雌牛のと畜頭数は大幅に減少
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が9月19日に公表した「Livestock Slaughter」によると、8月の肉牛のと畜頭数は、前年同月比5.9パーセント減の281万8300頭となった(図1)。
図1 と畜頭数の推移 |
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資料:USDA/NASS |
このうち、肉用繁殖雌牛のと畜頭数は、同15.7パーセント減の24万1000頭となった(図2)。繁殖雌牛のと畜頭数は、米国南西部での干ばつによる出荷促進や肥育もと牛価格の下落により、繁殖農家の利幅が減少したため2013年の春に増加したが、晩春から初夏にかけて干ばつが緩み、放牧環境が改善したことから減少に転じている。
図2 肉用繁殖雌牛のと畜頭数の推移
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資料:USDA/NASS |
肉用繁殖雌牛の主産地での草地状態が回復
USDA/NASSが9月9日に公表した「Crop Progress」(毎週発表)によると、全米48州(ハワイ州、アラスカ州を除く)の9月第1週の草地状況は、優(Excellent)が5パーセント、良(good)が30パーセントと、あわせて35パーセントとなっている(表1)。この割合は、干ばつに見舞われた前年同期の18パーセントと比べると17ポイント改善されている。
特に全米の肉用繁殖雌牛の約半数を飼養している7州(テキサス州、ネブラスカ州、ミズーリ州、オクラホマ州、サウスダコタ州、モンタナ州、カンザス州)で、草地状態の回復が進んでいる。
全米で最も肉用繁殖雌牛の飼養頭数が多いテキサス州では、2011年、2012年と2年連続の干ばつとなったことから、草地の痛みがひどく、回復に時間を要している。このため、優・良の合計は昨年をわずかに下回るものの、不良(poor)・著しい不良(very poor)の合計では改善している。また、関係者によると、現在の同州での著しい不良の割合は27パーセントであるが、著しい不良とされている地域では、面積に比べ繁殖牛飼養頭数が著しく少ない状態にある。肉用繁殖雌牛の飼養頭数が全米第2位のネブラスカ州と同3位のミズーリ州では、昨年のこの時期、優・良の割合が0パーセントという草地の状態であったが、現在は、それぞれ、同30パーセントと24パーセントの状態にある。同4位のオクラホマ州と同5位のサウスダコタ州は、昨年優・良の割合が4パーセントであった草地の状態が、現在はそれぞれ47パーセントと49パーセントと回復している。
表1 主要州別草地の優・良割合(9月第1週) |
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資料:USDA/NASS |
2014年のと畜頭数は15パーセント減少の見込み
主要生産州の干ばつは、9月以降も改善されているため、引き続き繁殖雌牛のと畜頭数は前年を下回って推移するとみられ、2014年の繁殖雌牛のと畜頭数は、前年を15パーセントほど下回るとみられている。
草地の回復に加え、豊作によるトウモロコシ価格の下落に伴いフィードロットの収益性が改善されれば肥育もと牛需要の拡大による肥育もと牛価格の上昇も期待できる。このような状況が実現すれば、繁殖農家は、牛群の維持・拡大に向かうものと見込まれる。
(調査情報部 山ア 良人)
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