需給動向 海外

◆E U◆

生産量は前年並み、需要増により価格上昇


2013年8月の豚枝肉卸売価格、前年同月比5.8パーセント高

 欧州委員会によると、EUの8月の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり190.07ユーロ(2万5279円:1ユーロ=133円)と前月からやや値を上げ、前年同月比5.8パーセント高となった(図11)。3カ月連続の価格上昇となり、ユーロ導入以降、最高価格を記録した昨年9月(190.11ユーロ、2万5285円)に迫るまでになっている。
図11 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会
 価格上昇は、EU域内の消費需要と、EU域外への輸出需要がともに堅調であったことが要因である。EU域内では、前年と比べ気候が温暖で、晴天が続いたことから、欧州北部ではバーベキュー需要の増加により、リブの味付け肉などの売り上げが好調となった。加えて、南部でも、夏季休暇の旅行者向け消費も堅調であった。また、輸出は、ロシア向け輸出が回復するとともに、中国向け輸出が大幅に増加した。

豚肉生産量は前年並み

 2013年1月から開始されたアニマルウェルフェア規制強化の影響を受けた飼養頭数減により、豚肉供給量の減少も懸念されている。こうした中、豚と畜頭数は前年同期(1〜5月)と比べ0.1パーセント減少したが、豚肉生産量は、ほぼ前年並みで推移しており、供給量の減少はみられていない(表5)。
表5 豚枝肉生産量(EU27カ国)
資料:欧州委員会
  注:枝肉重量ベース

 これは、1頭当たり枝肉重量が前年を上回り、頭数減少分を補ったことによる(図12)。1頭当たり枝肉重量は、アニマルウェルフェア規制強化により増加した廃用母豚の影響を受け、1月に大きく増加した。その後、飼料穀物価格が軟化し、肥育期間を延長する経営が多くなった結果、4〜5月は前年を上回った。ただし、今夏の暑さは肉豚の成育に大きく影響しているとみられており、9月以降に出荷される豚の枝肉重量減少を懸念する見方もある。
図12 1頭当たり枝肉重量の推移
資料:欧州委員会公表資料よりALIC作成
  注:2013年6月以降は推計値

豚肉輸出量が回復、ロシア・中国がけん引

 欧州委員会によると、2013年1月から7月におけるEU域外への豚肉等輸出量は、前年並みとなった(表6)。

 域外への輸出量は今年に入り低迷していたが、前年から継続して堅調に増加する中国向け輸出と、ロシア向け輸出量が回復した結果、累計で前年水準に戻すこととなった。

 中国向け輸出量は、全体で前年同期(1〜7月)比29.3パーセント増と大幅に増加した。内訳をみると、豚肉(同60.3%増)、内臓等(同15.3%増)と、それぞれかなり大きく増加した。なお、香港向けを含めると、合計でEUの域外輸出量の37.3パーセントを占めており、豚肉(輸出占有率24.5%)、内臓等(同50.4%)とともに、第1位の輸出先となっている。
表6 EU域外への豚肉等輸出量(2013年1〜7月)
資料:欧州委員会
  注:製品重量ベース
 また、2013年のロシア向け輸出量は、ブラジル産、北米産にシェアを奪われ、EU産は低迷していたが、2月にロシアの衛生当局がラクトパミンを使用した米国産豚肉の輸入を停止したことを受け、EU産豚肉がシェアを取り戻す形となった(図13)。ロシアへのEU産豚肉輸入量を見ると、第1四半期(1〜3月)は前年同期比20.1パーセント減と大幅に減少したが、第2四半期(4〜6月)は同33.7パーセント増と大幅な増加となった。また、輸入占有率を見ても、第2四半期は前年の37.1パーセントから62.5パーセントとなり、25ポイント以上の上昇となった。

 なお、ロシア衛生当局は衛生上の課題から、9月にブラジルの一部の食肉パッカーに対する輸出許可を取り消したとの報道もあり、今後とも、同国におけるEU産豚肉のシェアは保たれるものと見込まれる。
図13 国別豚肉輸入量の推移(ロシア、四半期別)
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
HSコード:0203
                                       (調査情報部 宅間 淳)

元のページに戻る