若齢牛価格は低調の一方で、肥育牛価格は堅調に推移
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は2014年1月後半頃から上昇傾向にあるものの、2月末時点は1キログラム当たり309豪セント(前年同期比8.1%安、287円:1豪ドル=93円)と、引き続き直近5カ年水準を大幅に下回って推移している(図3)。2月は、クイーンズランド(QLD)州北部やニューサウスウェールズ(NSW)州の広範囲で、平年並みあるいは平年を上回る降雨があり、NSW州での放牧環境の改善を見越した牧草肥育農家によるもと牛需要の高まりから価格上昇が見られたが、他州ではもと牛需要が低調なことから、EYCI価格は依然、低水準での推移となっている。
一方、2月のと畜直行牛の生体取引価格のうち、主に日本市場に向けられる重量級の肥育去勢牛(Heavy Steer、QLD州、生体重500キログラム以上あるいは枝肉重量320〜400キログラム)の取引価格は、同315豪セント(同3.5%安、293円)と、直近5カ年平均をわずかに下回る水準となっている(図4)。と畜頭数は2月も引き続き増加しているにもかかわらず(図5)、肥育去勢牛価格が堅調に推移していることについては、長期に渡る干ばつによる飼養環境悪化から、肉用牛が十分に肥育されずに出荷され、重量級の肉用牛が不足していることが要因とみられる。
図3 家畜市場におけるEYCI価格の推移
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資料:MLA
注 1:枝肉重量ベース
2:年度は7月〜6月
3:EYCI価格は東部3州(QLD州、NSW州、VIC州)の主要家畜市場の
若齢牛の加重平均取引価格。家畜市場の指標価格となっており、
肥育牛や経産牛の家畜市場価格などとも9割近い相関関係にある。 |
図4 と畜場における肥育去勢牛価格の推移
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資料:MLA
注:枝肉重量ベース |
図5 成牛と畜頭数の推移
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資料:MLA
注:QLD州、NSW州、ビクトリア州、南オーストラリア州およびタスマニア州
の主要なと畜場における成牛と畜頭数の合計 |
2月輸出量、日本向けは米国向けを下回るも、7カ月ぶりに前年を上回る
豪州農漁林業省(DAFF)によると、2014年2月の牛肉輸出量は、と畜頭数の増加により10万31トン(前年同月比24.2%増)となった(表2)。
表2 2014年2月の牛肉輸出先上位10カ国・地域
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資料:DAFF
注:船積重量ベース |
国別では、米国向けが2万3644トン(同38.5%増)、次いで日本向けが2万2158トン(同4.9%増)、中国向けが1万3184トン(同11.1%増)となった。米国向けが日本向けを上回ったのは、2012年3月以来となる。米国では、2012年の干ばつによる肉牛飼養頭数の減少などから、と畜頭数減による牛肉価格の上昇が伝えられており、より安価な豪州産への引き合いが強まっている。一方、日本向けは2位に転じたものの、冷蔵牛肉の輸出増加(9,874トン、同6.2%増)がけん引し、7カ月ぶりに前年同月を上回った。競合する米国産の価格上昇から豪州産に需要がシフトしたことや、中国が2013年10月以降、輸入条件などの変更により、豪州産冷蔵牛肉の輸入を完全に停止していることなどが、日本向け冷蔵牛肉輸出の増加につながったとみられている。
2013年の内臓肉輸出、堅調
MLAによると、2013年の内臓肉輸出量は14万5118トン(前年比11%増)、輸出額は4億6600万豪ドル(同9%増、433億円)となった。2013年のと畜頭数の増加、決済通貨である米ドルに対する豪ドル安基調が、内臓肉輸出の増加の要因となった。
国別では、韓国向けが2万6018トン(同12%増)、日本向けが2万5627トン(同7%増)、香港向けが2万2949トン(同19%増)と、いずれも増加した(図6)。輸出額ベースでは、日本向けが1億6700万豪ドル(前年同、155億円)、韓国向けは6700万豪ドル(同7%増、62億円)、香港向けは7400万豪ドル(同42%増、69億円)となり、タンや横隔膜など輸出単価の高い部位が多い日本向けが他を引き離した。
日本向けの主な部位を見ると、タンが8,802トン(同9%増)、横隔膜(ハラミ・サガリ)が7,929トン(同7%増)、トライプ(反すう胃)が3,105トン(同16%増)といずれも増加した(図7)。タンは、日本での米国産の月齢制限緩和により、2013年当初は米国産の輸入増が見込まれていたものの、米国の現地価格が高値で推移したことから、豪州産に需要が集まったものとみられている。一方、小腸は2,831トン(同12%減)と、前年から大きく減少した。これは、韓国向けの輸出の増加などが影響したとみられる。
図6 内臓肉の国別輸出量の推移 |
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資料:MLA
注:船積重量ベース |
図7 日本向けの主要部位別輸出量の推移 |
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資料:MLA
注:船積重量ベース |
(調査情報部 伊藤 久美)
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