平成25年2月1日付で、米国産等牛肉の月齢制限が20カ月齢以下から30カ月齢以下へと緩和されてから、1年余りが経過した。この緩和措置実施に伴い輸入量拡大が本格化した25年4月から26年1月までの輸入量を国別に見ると、米国産は17万3629トン(前年同期比51.7%増)と、大幅に増加し、その増加率は過去5年間で最大となった。一方、豪州産は、23万9190トン(同9.8%減)とかなりの程度減少し、また同国が最大の輸入相手国であることに変わりはないものの、そのシェアは5割強と、6割以上だった24年度と比較して大きく低下した(図1)。米国産と豪州産のシェアは、米国におけるBSE発生後、同国産の輸入が再開された18年度以降、一貫して接近する傾向にあり、今回の月齢制限緩和措置はそれに拍車をかけたと言える。
図1 国別牛肉輸入量の推移 |
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資料:財務省「貿易統計」
注 1:部分肉ベース。
2:計には、煮沸肉、ほほ肉および頭肉を含む。 |
25年度(4月〜翌1月)の牛肉輸入量の合計は46万2867トン(同6.5%増)と、かなりの程度増加したが、月ごとの輸入動向は一定ではなかった。まず、25年4〜5月に、需要増加の見込みや先高感から輸入量が急激に増加した。その結果、6月には、冷凍品のセーフガード発動回避のため、通関繰り延べの動きがみられた。また、その反動により、7月の輸入量は6万9089トン(前年同月比37.3%増)と記録的な水準に達した。しかしながら昨夏以降は、在庫過多、現地相場高および為替の円安傾向などが月齢制限緩和措置実施よりも大きな影響を及ぼしたとみられ、第1四半期のような月ごとの輸入量の大きな増減はなかった。
平成26年1月の輸入量は前年を下回る
1月の輸入量も、同様の傾向から、冷蔵品が1万4275トン(前年同月比2.9%増)、冷凍品が1万9315トン(同5.9%減)、合計では3万3665トン(同2.3%減)と、月齢制限緩和措置実施の見込みから輸入量が減少した前年同月をさらに下回った。
国内の輸入品の価格動向に目を向けると、不需要期とされる年明け以降も、供給量の減少から需給が比較的締まっており、豪州産、米国産共に高止まり、もしくは上昇基調が継続している。例えば、テーブルミートとしても業務用としても汎用性が高い生鮮・冷蔵品の豪州産チャックロールや米国産チャックアイロール(共に「かたロース」に相当)の26年1月の仲間相場は、それぞれキログラム当たり793円(前年同月比17.3%高)、同1,026円(同16.7%高)と前年を大幅に上回っている(図2、3)。また、主に外食店などで利用され、月齢制限緩和に伴う供給量増加により価格低下を期待する声もあった、冷凍品の米国産ショートプレート(「ばら」に相当)については、上昇基調ではないものの、大きく低下することなくおおむね横ばいで推移している。
図2 米国産仲間相場の推移 |
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資料:農畜産業振興機構調べ |
図3 豪州産仲間相場の推移 |
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資料:農畜産業振興機構調べ |
平成26年度も「買いづらい」状況が続く見込み
平成26年度に入っても、引き続き現地相場高や他国との競合などから、日本にとって厳しい輸入環境が予想され、場合によっては買い付けが一層困難な状況となる可能性も考えられる。26年度の牛肉輸入量がどのように推移するかは、国産品の供給量および卸売価格の動向にも左右されるが、25年度と比べて大幅に増加する可能性は低いとみられる。
(畜産需給部 田中 あや)
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