乳価、前年対比17パーセント高
LTO(オランダ農業園芸組織連合会)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の1月の平均乳価は、100キログラム当たり40.35ユーロ(5,689円:1ユーロ=141円)となり、前年同月比16.5パーセント高となった(図14)。EUでは、上半期の生乳生産量の減少に加え、最需要期であるクリスマスシーズンに向け乳製品需要が高まったことで、乳価も高止まりの状態となった。このため、最需要期を終えた2014年1月の乳価は大幅に下落するのではないかとの懸念も出ていたが、好調が続く乳製品需要を背景に40ユーロを超える結果となった。
また、オランダの最大手乳業メーカーであるフリースランド・カンピナ社は、1月よりラクトース(乳糖)価格を加味した乳価決定方法を導入しており、国際市場のラクトース価格が高水準で推移しているため、2月も乳価引き上げを発表している。その他の主要乳業メーカーも現状維持もしくは微減を発表しており、当面、EUの乳価は堅調な動きとなる見込みである。
図14 EUの乳価の推移
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資料:LTO
注:域内主要乳業17社の平均値 |
乳価高止まりで、生乳出荷量は増加基調
ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2013年12月の生乳出荷量は、前年対比4.6パーセント増の1168万6300トンとなり、2013年の年間生乳出荷量は、前年同期比1.1パーセント増の1億4197万トンと見込まれている(図15)。
図15 EU(28カ国)の生乳出荷量
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資料:ZMB
注:2013年は暫定数値 |
2013年は、上半期の天候不良による生乳生産の減少から下半期の大幅な回復で特徴づけられるが、ドイツ、オランダなど天候不良の影響を受けなかった地域で増加率が高くなっており、ドイツは同2.3パーセント増、オランダは同4.9パーセント増となっている。また、一方で、地中海沿岸および欧州北東部では、夏場に降雨量が少なく、生乳生産の回復に影響が出たことから、イタリアは同1.5パーセント減、ポルトガルは同4.0パーセント減、ハンガリーは同3.1パーセント減となった(表8)。
下半期の出荷増加の要因として、乳価が高水準で推移していることから酪農家の生産意欲が高まっていること、また、例年と比べて温暖であること、2015年の生乳クオータ廃止に向けた増産体制が整い始めていることが挙げられる。
一方で、下半期の急激な生乳出荷増により、自国のクオータ量を上回る国が例年より多く出る可能性が挙げられている。通常、クオータ量と出荷量の調整は、年明けから対象年度の終了する3月末までに生乳出荷の抑制などにより行っていた。しかし、本年は乳価が高水準で推移していることから、2014年1月以降も生乳出荷は増加基調にあり、クオータ制度による抑制がもはや効いていないとみられている(クオータ制度の課徴金は、超過分100キログラム当たり27.83ユーロ(約3,924円))。
表8 国別生乳出荷量(1月〜12月)
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資料:ZMB
注 1:2013年は暫定値である。
2:閏年調整済み |
需要期を境に、バター価格は下げるも未だ高水準
ZMBによると、2014年1月のバター価格は前年対比18.5パーセント高の100キログラム当たり392ユーロ(5万5272円)となり、未だ高水準であるものの最需要期のクリスマスシーズンを過ぎ、ようやく落ち着きを見せ始めている。
今後の動向としてZMBは、生乳生産が増加基調にあることからバター生産は増加するとしている。また、CAP改革(共通農業政策:Common Agricultural Policy)によるバターの民間在庫補助廃止により、乳業メーカーが、在庫費用を全額負担しなければならないことから、バター価格が現在のような高水準で推移している場合、在庫費用を軽減させるために市場出荷は増加し、バター価格は下落すると予測している。
しかし、バター価格の下落により国際市場でのEU産と競合国との価格差が改善してきていること、また、競合国の一つである米国のバター在庫が少ないことから輸出の大幅な拡大が見込めないことから、EU産バターの国際競争力が強まるとの見方をしており、増加分のバターは国際市場で吸収されるため、バター価格は下落はするものの一定の価格帯で維持されると予測している。
図16 バター卸売価格の推移
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資料:ZMB オランダバター価格 |
図17 EU産およびオセアニア産の国際バター価格の推移
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資料:ZMB |
(調査情報部 矢野 麻未子)
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