EU域内でアフリカ豚コレラが発生、価格下落を懸念
2014年1月下旬から2月中旬にかけ、EU加盟国のリトアニアとポーランドでASFが確認された。ウイルスが発見されたのは、いずれも家畜ではなく、野生のイノシシからである。両国では、EU指令2002/60/ECに基づき防疫措置がとられている。
先に発生したリトアニアでのASF確認を受け、ロシアはEUの全ての国から輸出停止措置を講じた。また、中国と日本は、EU全域ではなく、ポーランド産豚肉のみ輸出禁止措置を講じている。
EUにとって最大の豚肉輸出先であるロシアの禁輸措置が長引けば、EU域内の豚枝肉価格に大きな影響を与えるとみられている。
なお、ポーランドは、主要豚肉生産国であるとともに、ドイツ、デンマークなどから子豚を輸入している。これらの地域では、生体豚の移動が活発であるため、家畜運搬車などを介して他国への感染拡大を懸念する声も出ている。
2014年1月の豚枝肉卸売価格、前年同月比3.7パーセント安
欧州委員会によると、EUの2014年1月豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり163.62ユーロ(2万3070円:1ユーロ=141円)と前月からやや下落し、前年同月比では3.7パーセント安となった(図12)。
図12 豚枝肉卸売価格の推移 |
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資料:欧州委員会
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年明けの豚枝肉価格は、昨年終盤からの値下がり基調が継続し、前年を下回る形となった。直近の週別価格をみると、1月最終週にはわずかに上昇する動きを見せた。しかし、1月下旬にリトアニアの野生イノシシでアフリカ豚コレラ(ASF)が確認されたとの発表を受け、ロシアが全てのEU産豚肉の輸入を停止したため、再び下降基調に転じている。さらに、リトアニアの隣国であり、EUの主要な豚肉生産国の一つであるポーランドでも、2月中旬にASFの発生が確認されており、今後、EU域外への豚肉輸出の減少が見込まれることで、一層の価格下落が生じるとみられている。
EUの豚飼養頭数はわずかに減少
欧州委員会によると、2013年12月時点のEU22カ国の豚総飼養頭数は、前年からわずかに減少(前年比0.5%減)し、1億3286万頭となった(表5)。主要国の多くで頭数減となったが、デンマークとスペインはわずかに増加した。飼養頭数の減少が依然として継続していることから、上半期も豚肉供給量は限定されるとみられている。
また、繁殖母豚飼養頭数も同様に減少(同1.7%減)し、1118万頭となった。2013年1月からのアニマルウェルフェア規制の強化による減少傾向は継続しているものの、デンマーク、オランダなどの主要生産国では増加基調に転じており、2014年後半には豚肉生産量の減少に歯止めがかかるものと見込まれている。
表5 国別豚飼養頭数(主要8カ国) |
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資料:欧州委員会
注 1:各年12月現在
2:EUに加盟する22カ国の統計値
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2013年の年間域外輸出量はわずかに増加
欧州委員会が公表した統計によると、2013年のEU域外への豚肉輸出量はわずかに増加した(表6)。
主な要因として、ロシア向けの豚肉(冷蔵・冷凍)が大幅に増加(前年比23.2%増)したことが挙げられる。これは同国がラクトパミンを給与した米国産豚肉に対して輸入禁止措置をとったため、結果的にEU産豚肉のシェアが増えることに繋がったためである。また、中国向けの増加も同様の事態が要因である。
一方、韓国向けは輸出量が大幅に減少した(同25.2%減)。これは、同国の国内生産が一昨年の口蹄疫被害から立ち直り、堅調な増産により国内需給が緩和されているためとみられている。
表6 EU域外への豚肉等輸出量(輸入先国別、2013年) |
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資料:欧州委員会
注:製品重量ベース
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(調査情報部 宅間 淳)
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