畜産需給部 需給業務課
【要約】全国の食肉販売業者を対象として、食肉の消費・販売動向について調査を実施した結果、26年度上半期においては、為替や現地相場など、輸入品の供給環境の見通しが立てにくいことから、現状を維持する方針の企業が多いことがわかった。なお、調査協力のあった量販店、専門店および卸売業者のいずれの業態においても、消費者の節約志向が未だ根強いことや、4月からの消費税率上昇は、食肉販売においてマイナスの影響をもたらすと認識していることも、改めて浮き彫りとなった。 1.はじめに当機構では、食肉の販売動向を把握するため、年に2回、小売店や卸売業者に対し、食肉の取扱割合や販売見通しに関するアンケート調査を実施している。今回は、平成26年度上半期(4〜9月)の食肉、特に牛肉および豚肉の販売動向について、2月中〜下旬に量販店、専門小売店および卸売業者の協力を得て調査を行ったので、その概要について報告する。 2.調査対象先当機構では、食肉の小売価格や市況(仲間相場)について調査を実施しており、今回も同調査の対象企業にアンケート調査を行った。 (1)小売店…全国の主要量販店および食肉専門店 3.調査結果(1)最近の食肉の取扱割合(重量ベース)量販店および食肉専門小売店(以下、専門店という)に対し、各店における食肉の取扱割合について調査したところ、25年度下半期の同割合において、量販店では豚肉が4割強を占めて最も多く、牛肉および鶏肉はそれぞれ3割弱であった(図1)。また専門店では牛肉が3割強、豚肉が4割弱で、鶏肉は3割弱であった(図2)。前回行った25年度上半期調査の結果と比較すると、量販店の同割合では牛肉および鶏肉がそれぞれ1ポイント低下し、豚肉が2ポイント上昇と、大きな変動は見られないが、専門店においては、牛肉が6ポイント、豚肉が5ポイントとそれぞれ低下し、逆に鶏肉のうち国産品が11ポイントの上昇となった。なお、25年度下半期と26年度上半期見通しを比較すると、量販店においては変動なし、専門店においても1ポイント以内の小幅な変動にとどまっている。
(2)平成26年度上半期の販売見通し(1)品目別販売見通し次に、平成26年度上半期における、品目別の販売見通し(前年同期比)について調査したところ、量販店における和牛肉の販売見通しは「同程度」が最も多く、48パーセントとなった。「増加」の割合は28パーセントと低下した一方、「減少」は24パーセントと上昇した(図5−1)。「減少」の理由として「仕入れ価格上昇分の価格転嫁」が最も多く挙げられており、国産牛肉の相場が高水準で推移していることが大きく影響していると考えられる。 その他国産牛肉の販売見通しについても「同程度」が最も多く、48パーセントとなった。「増加」の割合は32パーセントと上昇した一方、「減少」は20パーセントと低下した(図5−2)。一部、和牛肉からのシフトが見込まれていると思われる。 また、輸入牛肉についても「同程度」が、前回調査時の61パーセントからは低下したが、前年同期の32パーセントより上昇して40パーセントとなり、最も多かった(図5−3)。「増加」の見通しは32パーセントと、前年同期から半減し、逆に「減少」は28パーセントとなり、前年同期および前回を上回った。この背景には、国産牛肉の相場が高水準で推移していることに加え、1年前の月齢制限緩和措置で輸入牛肉の取扱割合が高まる見通しであったものの、為替の円安傾向および輸入品の現地相場高が継続していることにより、輸入コストが高止まりしている現在の状況があるものと考えられる。
さらに、卸売業者に対して、26年度上半期の牛肉および豚肉の部位別販売見通しを調査した。 牛肉については、国産輸入の別に関わらず、全ての品種で「ばら」「切り落とし」を「増加」とした割合が高かった(図9)。理由として「消費者の節約志向」を挙げた企業が最も多く、次いで「消費税率の上昇」であったことから、比較的低価格な部位の販売については伸びるものと見通しているようである。 豚肉については、国産品は「かた」および「ばら」において「増加」が4割を超え、「もも」および「切り落とし」においては半数以上が「増加」と見通している(図10)。また、輸入冷蔵品では「かた」、「かたロース」および「ロース」において、半数以上が「増加」と回答した。輸入冷凍品では、「かた」、「もも」および「切り落とし」について4〜6割が「減少」と見通す結果となった。豚肉の販売見通し増減に関しては、牛肉との需要シフトに加えて鶏肉との需要シフトという要因があり、一概に国産品から輸入品へのシフトという見方はできないが、輸入冷蔵品では比較的高価格な部位である「かたロース」および「ロース」が大きく「増加」する見通しとなった一方、輸入冷蔵品で「減少」の割合が高い、低価格部位の「ばら」は、国産品および輸入冷凍品において「増加」する見通しとなったことが特徴的である。
(3)販売促進に向けての対応(小売店)量販店および専門店において、各畜種の販売拡大に向けた具体的な対応について調査したところ、量販店では前回調査と同様、「惣菜や味付け肉の強化」や「調理方法の提案」を実施するとの回答が多かったほか、「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品揃え強化」「輸入食肉の販売強化」が回答数を伸ばした(図11)。また、「販促の強化」は、牛肉では前回より減少したものの、豚肉および鶏肉では大きく増えた。また、専門店においては、各畜種とも「販促の強化」が飛び抜けて高かったが、それ以外では前回調査とほぼ変わらない結果となった(図12)。ただし、「現時点では特に対応を考えていない」、「今後の顧客の反応を見てから考える」とのコメントも複数あり、今後の価格の推移や、消費増税後の消費動向が不透明な中、対応を決めかねている企業も多いものと見受けられる。
(4)米国産牛肉の取扱割合について昨年2月に、米国産等牛肉の輸入条件が30カ月齢以下へと変更されてから1年が経過し、月齢制限緩和措置に対する各社の対応も落ち着いたとみられることから、輸入牛肉の取扱量および輸入牛肉に占める米国産の割合について、26年度上半期の見通しについて調査した。前年同時期と比較した輸入牛肉の取扱量の見通しは、量販店においては、「増加」「減少」と見通す企業がそれぞれ約3割、卸売業者においては「増加」と見通す企業が約4割となっている(図13)。それに対して、輸入牛肉に占める米国産の割合を見ると、量販店で「増加」と回答した企業は約4割、「減少」は約2割、卸売業者で「増加」と回答したのは約3割となった(図14)。量販店における、輸入牛肉全体の取扱割合が「増加」する理由には、「国産牛肉相場の高止まり」が挙げられ、「減少」の理由には、「円安、現地相場高による仕入れコスト上昇」や、「価格の変動が大きく安定しないため扱いにくい」点が挙げられている。また、米国産の取扱割合における「増加」の理由には、「豪州産価格の上昇」、「部位により人気の高い米国産を強化する方針」などが挙げられ、「減少」の理由には、「為替の円安傾向」が多く挙げられている。 卸売業者における輸入牛肉全体および米国産の取扱割合について、「国産牛の出荷頭数減」、「高値相場」、「消費需要回復の遅れ」に加えて、「今後の消費税率上昇」を理由とする「増加」と、「為替の円安傾向」を理由とする「減少」が挙げられた。 最後に、専門店では、輸入牛肉全体および米国産の両方において、「変化なし」が最も多くなった。なお、どちらも「増加」と回答した企業から、「国産牛肉相場の上昇により輸入牛肉にシフトし、輸入牛肉の中では、価格と品質のバランスから、豪州産より扱いやすい米国産にシフト」するため「増加」する、との具体的なコメントがあった。
4.おわりに 米国産等牛肉の月齢制限緩和措置の実施から1年が経過し、同措置実施前と比較して、米国産牛肉の輸入量は確実に増加したが、為替の円安傾向および現地相場の高止まりは依然として継続していることから、輸入コストの上昇は、輸入牛肉を取り扱う各社にとって、大きな懸念材料となっている。その一方で、最近の国産牛肉の卸売価格は回復基調で推移してきたが、現在は出荷頭数の減少により高水準で推移しており、これが急激に改善する要素が見られないことから、今後も高水準を保って推移すると考えられる。 |
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