調査・報告(寄稿)  畜産の情報 2014年4月号

食肉の消費・販売動向調査の結果(26年度上半期)について

畜産需給部 需給業務課

【要約】

 全国の食肉販売業者を対象として、食肉の消費・販売動向について調査を実施した結果、26年度上半期においては、為替や現地相場など、輸入品の供給環境の見通しが立てにくいことから、現状を維持する方針の企業が多いことがわかった。なお、調査協力のあった量販店、専門店および卸売業者のいずれの業態においても、消費者の節約志向が未だ根強いことや、4月からの消費税率上昇は、食肉販売においてマイナスの影響をもたらすと認識していることも、改めて浮き彫りとなった。

1.はじめに

 当機構では、食肉の販売動向を把握するため、年に2回、小売店や卸売業者に対し、食肉の取扱割合や販売見通しに関するアンケート調査を実施している。今回は、平成26年度上半期(4〜9月)の食肉、特に牛肉および豚肉の販売動向について、2月中〜下旬に量販店、専門小売店および卸売業者の協力を得て調査を行ったので、その概要について報告する。

2.調査対象先

 当機構では、食肉の小売価格や市況(仲間相場)について調査を実施しており、今回も同調査の対象企業にアンケート調査を行った。

(1)小売店…全国の主要量販店および食肉専門店
  ・量販店…25社のうち23社から回答を得た(回収率92.0%)。
  ・食肉専門店…対象企業60社全てから回答を得た(回収率100%)。

(2)卸売業者…全国の主要卸売業者
  ・牛肉:14社のうち13社から回答を得た(回収率85.7%)。
  ・豚肉:14社のうち13社から回答を得た(回収率85.7%)。

 なお、両畜種の調査協力企業は、一部重複している。


3.調査結果

(1)最近の食肉の取扱割合(重量ベース)

 量販店および食肉専門小売店(以下、専門店という)に対し、各店における食肉の取扱割合について調査したところ、25年度下半期の同割合において、量販店では豚肉が4割強を占めて最も多く、牛肉および鶏肉はそれぞれ3割弱であった(図1)。また専門店では牛肉が3割強、豚肉が4割弱で、鶏肉は3割弱であった(図2)。前回行った25年度上半期調査の結果と比較すると、量販店の同割合では牛肉および鶏肉がそれぞれ1ポイント低下し、豚肉が2ポイント上昇と、大きな変動は見られないが、専門店においては、牛肉が6ポイント、豚肉が5ポイントとそれぞれ低下し、逆に鶏肉のうち国産品が11ポイントの上昇となった。なお、25年度下半期と26年度上半期見通しを比較すると、量販店においては変動なし、専門店においても1ポイント以内の小幅な変動にとどまっている。
図1 量販店における食肉の品目別取扱割合
図2 食肉専門店における食肉の取扱割合

 卸売業者に対しても、同様に食肉の取扱割合について調査したところ、牛肉については、25年度上半期の調査結果と比較して、国産品が1ポイント上昇、逆に輸入品が1ポイント低下した結果、両者の割合は51:49となった(図3)。ただし、輸入品の内訳を見ると、冷蔵品が5ポイント低下した一方で、冷凍品が4ポイント上昇しており、品目間の割合に変動が見られる。また、26年度上半期の見通しと比較すると、和牛が2ポイント、国産(乳用種)が4ポイント低下し、国産(交雑種)が1ポイント上昇した結果、国産品全体で5ポイント低下し、逆に輸入品のうち冷蔵品が3ポイント上昇し、冷凍品も2ポイント上昇した結果、輸入品全体で5ポイント上昇し、国産品と輸入品の割合は46:54と逆転する見通しとなった。回答企業が13社と少ない中での見通しではあるが、卸売業者においては、今後、輸入牛肉の取扱割合が増えると見ているようである。
図3 卸売業者における牛肉の品目別取扱割合

 また、豚肉の取扱割合では、国産品が13ポイントと大きく上昇し、輸入品は冷蔵品で6ポイント、冷凍品で7ポイントとそれぞれ低下した(図4)。これには、最近の豚肉冷凍品の輸入量減少が大きく影響しているとみられるが、冷蔵品については輸入量が増加傾向で推移しているにもかかわらず、取扱割合は低下しており、こちらも高止まりで推移している国産豚肉価格との兼ね合いの結果、国産品の取扱割合が伸びたものと推測される。なお、26年度上半期については、国産品が2ポイント低下、輸入品のうち冷凍品が2ポイント上昇する見通しとなっている。
図4 卸売業者における豚肉の品目別取扱割合

(2)平成26年度上半期の販売見通し

(1)品目別販売見通し

 次に、平成26年度上半期における、品目別の販売見通し(前年同期比)について調査したところ、量販店における和牛肉の販売見通しは「同程度」が最も多く、48パーセントとなった。「増加」の割合は28パーセントと低下した一方、「減少」は24パーセントと上昇した(図5−1)。「減少」の理由として「仕入れ価格上昇分の価格転嫁」が最も多く挙げられており、国産牛肉の相場が高水準で推移していることが大きく影響していると考えられる。

 その他国産牛肉の販売見通しについても「同程度」が最も多く、48パーセントとなった。「増加」の割合は32パーセントと上昇した一方、「減少」は20パーセントと低下した(図5−2)。一部、和牛肉からのシフトが見込まれていると思われる。

 また、輸入牛肉についても「同程度」が、前回調査時の61パーセントからは低下したが、前年同期の32パーセントより上昇して40パーセントとなり、最も多かった(図5−3)。「増加」の見通しは32パーセントと、前年同期から半減し、逆に「減少」は28パーセントとなり、前年同期および前回を上回った。この背景には、国産牛肉の相場が高水準で推移していることに加え、1年前の月齢制限緩和措置で輸入牛肉の取扱割合が高まる見通しであったものの、為替の円安傾向および輸入品の現地相場高が継続していることにより、輸入コストが高止まりしている現在の状況があるものと考えられる。
図5 量販店における牛肉の品目別販売見通しの推移

 専門店においては、和牛肉および国産鶏肉を除く全ての品目で、「減少」を「増加」の見通しが上回る結果となった(図6)。専門店の場合、量販店と比較して固定客が多く、販売計画を大きく変更しない傾向にあることから、「同程度」の割合が高くなる特徴がある。にもかかわらず、和牛肉においては「同程度」の52パーセントに対して「減少」が36パーセントと、他品目より減少の見通しが強く出ている。和牛肉が「減少」する理由として、「消費者の節約志向」を選択した企業が最も多く、次いで「消費税率の上昇」であったことから、専門店の立場からは、依然として末端の景気は回復に至っていないと見る向きが多いと考えられる。
図6 専門店における食肉の品目別販売見通し

 同様に、量販店における豚肉および鶏肉の販売見通しについても調査したところ、畜種、国産輸入の別に関わらず、いずれも「増加」との回答が4割前後となった(図7、8)。増加の理由としては、「他畜種からの需要シフト」に次いで「消費者の節約志向」が多かったことから、販売価格の高い牛肉からのシフトにより、豚肉および鶏肉の販売見通しが増加すると見込んでいるようである。
図7 量販店における豚肉の品目別販売見通しの推移

図8 量販店における鶏肉の品目別販売見通しの推移

(2)部位別販売見通し(卸売業者)

 さらに、卸売業者に対して、26年度上半期の牛肉および豚肉の部位別販売見通しを調査した。

 牛肉については、国産輸入の別に関わらず、全ての品種で「ばら」「切り落とし」を「増加」とした割合が高かった(図9)。理由として「消費者の節約志向」を挙げた企業が最も多く、次いで「消費税率の上昇」であったことから、比較的低価格な部位の販売については伸びるものと見通しているようである。

 豚肉については、国産品は「かた」および「ばら」において「増加」が4割を超え、「もも」および「切り落とし」においては半数以上が「増加」と見通している(図10)。また、輸入冷蔵品では「かた」、「かたロース」および「ロース」において、半数以上が「増加」と回答した。輸入冷凍品では、「かた」、「もも」および「切り落とし」について4〜6割が「減少」と見通す結果となった。豚肉の販売見通し増減に関しては、牛肉との需要シフトに加えて鶏肉との需要シフトという要因があり、一概に国産品から輸入品へのシフトという見方はできないが、輸入冷蔵品では比較的高価格な部位である「かたロース」および「ロース」が大きく「増加」する見通しとなった一方、輸入冷蔵品で「減少」の割合が高い、低価格部位の「ばら」は、国産品および輸入冷凍品において「増加」する見通しとなったことが特徴的である。
図9 卸売業者における牛肉の部位別販売見通し(26年度上半期)

図10 卸売業者における豚肉の部位別販売見通し(26年度上半期)

(3)販売促進に向けての対応(小売店)

 量販店および専門店において、各畜種の販売拡大に向けた具体的な対応について調査したところ、量販店では前回調査と同様、「惣菜や味付け肉の強化」や「調理方法の提案」を実施するとの回答が多かったほか、「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品揃え強化」「輸入食肉の販売強化」が回答数を伸ばした(図11)。また、「販促の強化」は、牛肉では前回より減少したものの、豚肉および鶏肉では大きく増えた。

 また、専門店においては、各畜種とも「販促の強化」が飛び抜けて高かったが、それ以外では前回調査とほぼ変わらない結果となった(図12)。ただし、「現時点では特に対応を考えていない」、「今後の顧客の反応を見てから考える」とのコメントも複数あり、今後の価格の推移や、消費増税後の消費動向が不透明な中、対応を決めかねている企業も多いものと見受けられる。
図11 量販店における食肉の販売拡大に向けた対応

注:複数回答
図12 専門店における食肉の販売拡大に向けた対応

注:複数回答

(4)米国産牛肉の取扱割合について

 昨年2月に、米国産等牛肉の輸入条件が30カ月齢以下へと変更されてから1年が経過し、月齢制限緩和措置に対する各社の対応も落ち着いたとみられることから、輸入牛肉の取扱量および輸入牛肉に占める米国産の割合について、26年度上半期の見通しについて調査した。

 前年同時期と比較した輸入牛肉の取扱量の見通しは、量販店においては、「増加」「減少」と見通す企業がそれぞれ約3割、卸売業者においては「増加」と見通す企業が約4割となっている(図13)。それに対して、輸入牛肉に占める米国産の割合を見ると、量販店で「増加」と回答した企業は約4割、「減少」は約2割、卸売業者で「増加」と回答したのは約3割となった(図14)。量販店における、輸入牛肉全体の取扱割合が「増加」する理由には、「国産牛肉相場の高止まり」が挙げられ、「減少」の理由には、「円安、現地相場高による仕入れコスト上昇」や、「価格の変動が大きく安定しないため扱いにくい」点が挙げられている。また、米国産の取扱割合における「増加」の理由には、「豪州産価格の上昇」、「部位により人気の高い米国産を強化する方針」などが挙げられ、「減少」の理由には、「為替の円安傾向」が多く挙げられている。

 卸売業者における輸入牛肉全体および米国産の取扱割合について、「国産牛の出荷頭数減」、「高値相場」、「消費需要回復の遅れ」に加えて、「今後の消費税率上昇」を理由とする「増加」と、「為替の円安傾向」を理由とする「減少」が挙げられた。

 最後に、専門店では、輸入牛肉全体および米国産の両方において、「変化なし」が最も多くなった。なお、どちらも「増加」と回答した企業から、「国産牛肉相場の上昇により輸入牛肉にシフトし、輸入牛肉の中では、価格と品質のバランスから、豪州産より扱いやすい米国産にシフト」するため「増加」する、との具体的なコメントがあった。
図13 輸入牛肉全体の取扱量(前年同期比)

図14 輸入牛肉に占める米国産の割合(前年同期比)

4.おわりに

 米国産等牛肉の月齢制限緩和措置の実施から1年が経過し、同措置実施前と比較して、米国産牛肉の輸入量は確実に増加したが、為替の円安傾向および現地相場の高止まりは依然として継続していることから、輸入コストの上昇は、輸入牛肉を取り扱う各社にとって、大きな懸念材料となっている。その一方で、最近の国産牛肉の卸売価格は回復基調で推移してきたが、現在は出荷頭数の減少により高水準で推移しており、これが急激に改善する要素が見られないことから、今後も高水準を保って推移すると考えられる。

 また、国産豚肉の生産量は、前年と比較して微増で推移しているものの、一昨秋以降、冷凍品輸入量が大幅に減少していることから、その代替需要で、国産豚肉の卸売価格が高水準で推移しており、こちらについても生産量が大幅に改善する要素が見られず、価格は高水準で推移するものと考えられる。

 こうした中、本年4月からは消費税率が5パーセントから8パーセントにアップすることが決まっており、これらの状況が食肉の販売にどのように影響するのか、食肉の販売を行う各社はどのような対応を考えているのかという点を中心に調査を実施した。今後の国産品価格および輸入コストの推移が不透明な中、26年度上半期の小売店および卸売業者における食肉の販売活動の方針は、国産品と輸入品、または牛肉、豚肉および鶏肉のいずれの畜種に重点を置くか、様々な対応があるものと予想された。調査の結果、業種による差はあるものの、各畜種において「同程度」との回答が中心となり、各社とも国内相場、為替および海外現地相場などをにらみつつ、様子見せざるを得ない状況にあると推察される。4月以降の供給と需要、さらに、それを受けた食肉販売業者の動きが注目される。


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