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 畜産の情報 2014年4月号

米国農畜産業の展望
〜2014年農業アウトルック・フォーラムから〜

調査情報部 山神 尭基、畜産需給部 需給業務課 田中 あや

【要約】

 米国農務省(USDA)は、2014年米国農業観測会議で各畜種などの需給動向について以下のとおり予測した。

牛    肉:飼養頭数の減少を反映し牛肉生産量は前年比5.3パーセント減。輸出量は
        2年連続で減少となり前年を9.6パーセント下回る。肥育牛価格は供給量の
        減少により、前年の記録的な高値をさらに上回ると予測。

豚    肉:豚肉生産量は、PEDの感染拡大がと畜頭数に与える影響が懸念される
        ものの、枝肉重量の増加が見込まれることから同1.0パーセント増。輸出は
        前年を3.0パーセント上回ると予測。

鶏    肉:鶏肉生産量はと体重量の増加により同2.8パーセント増となり、過去最高を
        記録した前年をさらに上回る。鶏肉卸売価格(丸どり)は前年並みの高水
        準と予測。

酪    農:生乳生産量は同2.2パーセント増の9330万3000トンと過去最高を更新。
        生乳生産者販売価格は、堅調な輸出需要を受け、過去2番目の高水準と
        なる見込み。

トウモロコシ:作付面積は同3.6パーセント減の9200万エーカー(3680万ヘクタール)。
        単収は1エーカー当たり165.3ブッシェル(10.5トン/ヘクタール)。生産量は
        前年並みの139億8500万ブッシェルの見込み。

1.はじめに

 米国農務省(USDA)は2014年2月20〜21日の2日間、農業アウトルック・フォーラム(Agricultural Outlook Forum 2014、以下「フォーラム」という。)を開催した。今年のフォーラムは「農業改革」を主要テーマに掲げ、2014年の米国の農畜産物の需給見通しのほか、国際貿易、農地問題、農業の後継者問題などさまざまな分野について有識者による発表が行われた。

 なお、本稿中の為替レートは、1米ドル=103円(2月末日TTS相場:102.94円)を使用した。
会議の風景(パネルディスカッションにて)

2.基調講演

(1)グラウバー氏(USDA主席エコノミスト)による講演

 

フォーラム最初の講演として、USDAのグラウバー氏(主席エコノミスト)から、米国農業を取り巻く最近の状況および2014年米国の農畜産物の需給動向について、以下の見通しが示された。

1 2013年の需給動向について

・ 好天に恵まれ、主要飼料穀物の生産量が記録的高水準となった結果、高騰していた
 これらの価格が下落し、在庫水準の改善につながった。

・ 世界的な需要の高まりに後押しされ、農産物輸出総額は過去最高となった。

2 2014年の需給見通しについて

・ 多くの穀物・油糧種子について、2014/15年度(9月〜翌8月)の価格は、過去5年間で
 最も低い水準となる見込み。ただし、2000年代初頭と比較すると、期末在庫量が依然と
 して十分とは言えない状況であり、それが価格に影響を及ぼす不安要素となり得る。

・ 主要農産地域であるカリフォルニアや中西部の穀物地帯で長らく続く干ばつは、農畜産
 物の生産に深刻な影響を及ぼしており、2014年も、野菜、果実、ナッツ類の生産量の減
 少や品質低下の恐れがある。また、これらの農産物の価格高騰が農家の収益低下に
 つながることを懸念。

・ 農産物輸出総額は、2013年をさらに上回る1426億ドル(14兆6878億円)と見込まれる。輸出相手国の中で、特に大きな影響力を有する中国に対する輸出額は250億ドル(2兆5750億円)と見込まれ、特に大豆の需要が強いことが輸出額増加の大きな要因との見通し。

・ 畜産物については、2012年の干ばつの影響から、牛の飼養頭数の減少傾向に歯止めが
 かからない状況にあることや、豚流行性下痢(PED)の拡大による肉豚の平均産子数
 低下の可能性などについて言及。

3 その他の関連事項

・ 2013年11月に米国環境保護庁(EPA)が提出した、2014年の再生可能燃料基準
 (Renewable Fuel Standard、RFS)案において、トウモロコシ由来のエタノール使用義務
 量は引き下げられたものの、化石燃料に対する価格競争力次第では、向こう10年間で
 同義務量が増加する可能性を示唆。

・ 2014年2月初旬に可決された新農業法の施行により、農業経営におけるセイフティ・
 ネットの構築が確固たるものになると期待。

 最後に、グラウバー氏は、世界全体の穀物や油糧種子の生産量が記録的な高水準となったことにより、これらの価格が大きく下落したが、この傾向は2014年も継続すると予想した。しかし、依然として在庫率が回復していないことから、米国内外の生産動向次第で価格が大きく変動する可能性をはらんでいることを改めて指摘し、講演を締めくくった。
基調講演を行うグラウバー主席エコノミスト

(2)ヴィルサック農務長官による基調講演

 フォーラムの午前の部の終わりに、ヴィルサック農務長官から米国農業の現状および今後の取り組みなどについて、以下のような基調講演が行われた。

1 新農業法

・ 2014年2月に農業法が可決されたことに対し、両院での意見の不一致など困難な状況
  下で、同法案の可決に向け尽力した関係者を讃える。

・ 可決された農業法におけるセイフティ・ネット対策では、(1)若者の農業分野への参入や
 事業継続の奨励、(2)米国産の食品価格を廉価な状態に維持、(3)食料安全保障のため
 他国への食料依存を抑制−を重要なポイントと認識している。

2 貿易

・ これまでのように大手企業などを対象とした輸出市場の拡大を図るだけでなく、小規模
 農家のための国内地方市場の拡大を図る。

・ 今後も輸出市場を拡大するため、自由貿易に焦点を当てると共に、実行力のある企業
 のため輸出促進を図る。

3 2012年農業センサス

・ 本年5月に公表が予定されている2012年農業センサスの結果では、1982年から7200万
 エーカーの農地が減少したが、その減少割合が2007年と比べて緩やかになってきてい
 ることなどが明らかになった。

・ 農家戸数は、前回の調査から4.3パーセント減少しており、特に中規模農家の減少が
 目立っている。干ばつなどの影響を受けた彼らへの支援を早急に行わなければならない
 と訴えた。

・ 35歳以下の農業者数が、前回の調査からわずかに増加したことは明るい話題であり、
 今後、さらに米国農業を支える若い農業者を支援する意向である。

 最後に、同長官は、今後の米国農業には、多様性という考え方を受け入れる姿勢や、より多くの若い世代の人々が農業分野に参入するよう魅力的な産業へ革新することが求められているとまとめた。
基調講演を行うヴィルサック農務長官

3.2014年農畜産物の需給見通し

 フォーラムでは、畜産物および穀物などの需給見通しが発表された。この中で特に目を引いたのは、干ばつの影響により生産減と見込まれている牛肉や、回復傾向にあるとされるものの気象条件によって大きく左右されるトウモロコシの生産動向である。農業大国である米国の需給動向は、わが国にも大きな影響を及ぼすだけに、その見通しが注目された。それぞれの需給見通しは以下の通り。

(1)牛肉:飼養頭数は過去最低、生産・輸出も減少見通し

ア.飼養頭数

 2014年1月1日現在の牛飼養頭数は、前年比1.8パーセント減の8773万頭となり、1951年以降最低を記録した。このうち、繁殖雌牛頭数は同0.7パーセント減の3825万1000頭となり、2008年以降、減少傾向が続いている。また、これに伴い、2013年の出生頭数が同3.7パーセント減の3393万頭となったことから、2014年も牛飼養頭数の減少傾向は継続するとみられる。

 一方、肉用繁殖後継牛の飼養頭数は、同1.7パーセント増の547万800頭となり、牛群の再構築に向けた動きがみられるものの、平均飼養期間を考慮すると、肉用牛飼養頭数が増加に転じるのは早くても2015年以降と予測される。

イ.生産量

 2014年の肉用牛と畜頭数は、繁殖雌牛の保留(肉用および乳用)が進むことから、前年比5パーセント以上の減が予想される。平均枝肉重量は、飼料穀物価格の下落により肉牛肥育農家での飼養期間が延びることで約793ポンド(360キログラム)と増加が見込まれるものの、と畜頭数の減少を補うには至らず、この結果、2014年の牛肉生産量は前年比5.3パーセント減の1104万5000トンと見込まれる(図1)。


図1 牛肉生産量の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
肉牛の放牧風景(テキサス州)
ウ.輸出量

 2013年の輸出量は、牛肉生産量は減少したものの、アジアなどを中心とした輸出相手国の経済成長や日本の月齢制限緩和措置の実施により、前年比5.3パーセント増の117万2000トンとなった(図2)。2014年は、輸出需要は堅調ながらも、生産量の減少やそれに伴う輸出価格上昇の影響により、同9.6パーセント減の105万9000トンと見込まれる。
図2 牛肉輸出量の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
エ.価格

 2013年の主要5地域(テキサス・オクラホマ、カンザス、ネブラスカ、コロラド、アイオワ・ミネソタ)の肥育牛価格は、100ポンド当たり平均125.89ドル(1キログラム当たり約286円)と、記録的な高水準となった前年実績(同122.86ドル)からさらに2.5パーセント上昇した。2014年も、出生頭数の減少により100ポンド当たり平均132ドル〜140ドル(1キログラム当たり約300円〜317円)と予想され、上昇基調が続くとみられる(図3)。
図3 肥育牛価格の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値

(2)豚肉:PED拡大の影響で出生頭数は微増にとどまる見通し

ア.飼養頭数

 2013年12月1日現在の豚総飼養頭数は、前年比0.7パーセント減の6594万頭となった。このうち、繁殖雌豚頭数は、飼料穀物価格上昇に伴う収益性悪化の懸念を背景に生産者の導入意欲が低下し、同1.1パーセント減の575万7000頭となった。

 2014年の飼養動向については、飼料穀物価格の下落により生産者には繁殖雌豚増頭の意欲があるものの、PEDの影響により、離乳子豚頭数が伸び悩むことから、同年上半期は前年をわずかに上回るにとどまると見込まれる。

イ.生産量

 2014年のと畜頭数は、PEDの影響により前年をわずかに下回ると見込まれるものの、平均枝肉重量が、95.3キログラム超となると予測されることから、豚肉生産量は、前年比1.0パーセント増の1062万3000トンと見込まれる(図4)。

 なお、母豚増頭の動きにより、同年下半期に出生頭数の増加が見込まれることから、と畜頭数は2015年上半期には増加に転じるとみられる。

図4 豚肉生産量の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
ウ.輸出量

 2013年の輸出量は、前年比7.3パーセント減の226万4000トンとなった(図5)。減少の主な要因として、ロシアでのラクトパミン(成長促進剤)の使用規制に伴う米国産豚肉の輸入停止措置の影響が挙げられる。一方、2014年は、中国などの輸出相手国の経済成長に伴う食肉需要の増加や、米国での生体価格の下落により、同3.0パーセント増の233万1000トンと見込まれる。
図5 豚肉輸出量の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
エ.価格

 2014年の肥育豚価格(赤身率51〜52%、生体重量ベース)は、上半期は供給不足により前年を上回るが、下半期は供給量の回復により前年を下回ると見込まれることから、年間では前年(100ポンド当たり64.05ドル:1キログラム当たり約145円)を下回る同平均61〜65ドル(1キログラム当たり約138〜148円)と見込まれる(図6)。
図6 肥育豚価格の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
 また、豚肉小売価格の平均は、2013年の実績(1ポンド当たり3.61ドル:1キログラム当たり約819円)を6〜7パーセント下回ると見込まれる。

(3)鶏肉:生産量、輸入量共に過去最高の見込み

ア.生産量

 2013年の鶏肉生産量は、上半期は飼料穀物価格の高止まりにより大幅な増加はみられなかったものの、下半期は、同価格の下落に伴い急速に増羽が進んだことで、年間では前年比2.1パーセント増の1715万3000トンとなった(図7)。

 2014年は、前年と同様、ブロイラーのひなふ化羽数の大幅な増加は見込まれないものの、平均と体重量が増加することから、同2.8パーセント増の1763万3000トンと見込まれる。
図7 ブロイラー生産量の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
イ.輸出量

 2013年の輸出量は、上半期は前年同期を約3パーセント上回ったものの、下半期は前年をわずかに下回り、年間では前年比1.2パーセント増の334万トンにとどまった(図8)。
図8 ブロイラー輸出量の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
 2014年は、世界的な経済成長の拡大や輸出価格の下落により、340万2000トンと、過去最高を記録した前年をさらに上回る見込みであるが、その増加率は同1.8パーセントと、前年同様に緩やかなものとしている。

ウ.価格  

2013年の鶏肉卸売価格は、需要の増加に伴い、特に上半期が高水準であったことから、1ポンド当たり99.7セント(1キログラム当たり約226円)となった。

 2014年は、前年と同様、増産が見込まれるものの、牛肉需給のひっ迫や、米国の景気回復により鶏肉需要のさらなる増加が期待されることから、鶏肉卸売価格(丸どり(中抜き))は1ポンド当たり平均94〜101セント(1キログラム当たり約213〜229円)と、引き続き高水準での推移が見込まれる(図9)。
図9 丸どり卸売価格の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値

(4)酪農:乳製品輸出は過去最高を記録、2014年は減少見込み

ア.飼養頭数

 2013年の経産牛飼養頭数は、2012年の干ばつによる経産牛と畜頭数増加の影響を受け、前年比0.1パーセント減の922万1000頭となった。

 2014年は、前年の更新用未経産牛の頭数に変化はなかったものの、今後、分娩の可能性のある繁殖雌牛頭数が前年を2.0パーセント上回るとみられることから、同0.3パーセント増の925万5000頭と見込まれる。
乳牛の飼養風景(カリフォルニア州)
イ.生産

 2013年の生乳生産量は、1頭当たりの乳量の増加や2013年の下半期の経産牛頭数が前年を上回ったことから、前年比0.3パーセント増の9127万トンと過去最高を記録した。2014年は、経産牛飼養頭数および1頭当たり乳量について同1.9パーセントの増加が予想されており、これにより生乳生産量は、同2.2パーセント増の9330万3000トンと見込まれる(図10)。
図10 生乳生産量の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
ウ.輸出

 2013年の乳製品輸出量は、海外需要の増加を受け、無脂乳固形分は前年比15.9パーセント増の1750万8500トン、乳脂肪は同40.9パーセント増の562万4500トンと、ともに過去最高を記録した。

 2014年は、欧州や豪州の乳製品輸出量の増加および米国内の乳製品需要の拡大により、無脂乳固形分は同1.0パーセント減の1732万7100トン、乳脂肪は同7.3パーセント減の521万6300トンと、ともに前年を下回ると見込まれる。

エ.生乳価格

 2013年の生産者乳価は、好調な輸出需要などを背景に落ち着きを見せていた前年(100ポンド当たり18.53ドル(1キログラム当たり約42円))から上昇し、同20.01ドル(同約45円)となった。これは過去最高を記録した2011年に次ぐ水準である。

 2014年は、堅調な国内外の需要の増加に対し、供給量がタイトになるものとみられることから、同20.85〜21.55ドル(同47〜49円)と前年をかなり大きく上回ると見込まれる(図11)。
図11 乳価の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値

(5)穀物:トウモロコシ、生産量は前年並みの見通し

ア.作付面積・生産量

 2014/15年度のトウモロコシ作付面積は、2013/14年度の豊作により価格が大幅に下落した一方、大豆価格が堅調に推移したことで大豆への転作が進むとみられることから、前年よりも340万エーカー(136万ヘクタール)下回る9200万エーカー(3680万ヘクタール、前年比3.6%減)との見込みである。

 一方、1エーカー当たりの収量は、品種改良が進んでいることなどから生育期間の天候が平年並みとなった場合、165.3ブッシェル(同4.1%増)に上昇すると予測される。この結果、生産量は前年をわずかに上回る139億8500万ブッシェル(3億5522万トン、同0.4%増)と見込まれる(図12)。
図12 トウモロコシ生産量の推移
資料:USDA
  注:14/15年度は予測値
トウモロコシの作付風景
イ.消費量

 需要については、2014/15年度が2年連続の豊作となった場合、価格はさらに下落すると見通される中で、エタノールおよび輸出向けを除く用途(飼料等、食品等)の需要増が見込まれており、2014/15年度の消費量は、前年を1億3000万ブッシェル(330万トン)上回る118億3000万ブッシェル(3億48万トン、前年比1.1%増)と見込まれる。飼料等向けは、豚肉およびブロイラー部門の増産を背景に前年を上回る54億ブッシェル(1億3716万トン、同1.9%増)としている。輸出向けは、ウクライナやブラジルなどの輸出競合国からの輸出量の増加が見込まれることから、5000万(127万トン)ブッシェル減の15億5500ブッシェル(3950万トン、同3.1%減)としている。また、エタノール向けは、ガソリン消費量の減少見込みにより前年同の50億ブッシェル(1億2700万トン)と見込まれる(図13)。
図13 トウモロコシの用途別需要の推移
資料:USDA
  注:14/15年度は予測値
ウ.在庫量および生産者平均販売価格

 2014/15年度の期末在庫は、同年度の消費増が見込まれるものの、生産量増加により、前年度を大幅に上回る21億1100万ブッシェル(5362万トン、同42.5%増)となり、期末在庫率は2013/14年度の11.1パーセントから15.8パーセントに上昇すると見込まれる(図14)。また、在庫量の増加により需給が緩むことから、生産者平均販売価格は、2013/14年度の1ブッシェル当たり4.50ドル(464円)から同3.90ドル(402円)まで下落すると見込まれる。
図14 トウモロコシの期末在庫の推移
資料:USDA
  注:14/15年度は予測値

4.おわりに

 今回のフォーラムでは、2012年の干ばつなどにより大きな打撃を受けた米国農業の生産動向や、世界の需給に大きな影響を与える輸出動向の見通しについて関心が集まった。発表された需給見通しの中には、回復傾向を示すものがあったものの、依然として米国農業は厳しい状況にあるとみられている。例えば、トウモロコシは、2014/15年度の生産量が2年連続の豊作と見込まれ、需給は前年度よりも緩むとの見通しが出されたものの、南半球で発生が予測されているエルニーニョ現象による影響も懸念されている。このように、生産状況が好転しつつある中でも、天候や景気動向といった不安要素があり、米国のみならず世界的な動向への注視が必要となっている。

 一方で、将来の米国農業に期待を抱かせる話題もあった。本会議では、2014年の需給見通しに関するセッションのほか、「農業改革」が主要テーマに据えられ、それを様々な側面から捉えた多様なセッションが設けられた。その中で、「若者の農業参入」が、中心的な話題の一つとして取り上げられ、優良事例の紹介を交えながら活発な議論が交わされた。

 折しも、本会議開催に先立ち、米国農業の指針となる農業法が2月上旬に可決された。同法は、現在、農業を営んでいる生産者だけでなく、将来、米国農業の柱となる若手に焦点を当て、農業分野におけるさらなる可能性を広げることを目的とした制度が盛り込まれている。今後、意欲ある生産者が数多く登場することが期待されるとともに、彼らを支える制度が整備されつつある中で、米国農業がどのように発展していくのか、その動向に多くの関心が寄せられている。

 
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