需給動向 国内 |
黒毛和種の子牛取引価格は、平成24年11月以降、右肩上がりで推移しており、特に25年夏以降の上昇傾向が著しい。同年12月の同価格は全国平均で1頭当たり54万8776円(前年同月比23.7%高)と、3カ月連続で50万円を上回り、九州地方の一部家畜市場では同60万円を突破した(図1)。18年度にも、前年度の牛枝肉卸売価格の堅調な推移を背景に、黒毛和種の平均取引価格が、年度を通じて50万円を超える高水準となったが、55万円に迫る水準まで達したのは初めてである。
今後も取引頭数の大きな回復は見込めず肉用子牛取引価格の高騰の要因としては、堅調な牛枝肉卸売価格に後押しされた肉用牛生産者の増頭意欲などもあるとみられるが、取引頭数の減少が最も大きいと考えられる。 品種別取引頭数の今後の推移に影響を及ぼす要因として、まず黒毛和種については、全国の2割弱を占めていた宮崎県の出生頭数が、平成22年4月の口蹄疫発生の影響による減少から完全には回復しておらず、同時期の8割程度の水準にとどまっていることが挙げられる。また、23年8月に起こった大規模経営者の倒産に伴う、繁殖用めす牛の早期淘汰が、繁殖基盤に少なからず影響を及ぼしていることも、看過できない問題となっている。さらに、長期的な傾向として、繁殖経営における離農の進行もあり、和牛生産を取り巻く環境は厳しい状況が続くことが懸念される。これらのことから、出生頭数の減少傾向は当面継続するものと推測される。乳用種については、23年以降の生乳需給逼迫による後継牛確保の動きから、出生頭数は増加するものと考えられ、当初は増加傾向になるものと想定された。しかしながら、生乳生産の増産計画下にあっても、酪農経営の離農の進行により、実際の出生頭数は伸び悩んでいることから、子牛の出荷頭数も当面は大きくは回復しない可能性が高いとみられる。 交雑種については、21〜22年度の生乳需給緩和時と比べ、23年度下半期に酪農経営における黒毛和種の交配率が低下したことにより、24年の夏以降、出生頭数が減少傾向で推移しており、また、前述の通り酪農経営における離農が進む中で、出生頭数の大幅な増加は見込めない。 今後の取引価格の推移は不透明肉用子牛取引価格に影響を与える要素の1つである牛枝肉卸売価格は、既報の通り、と畜頭数不足により、今後も安定的に推移すると予想される。ただし、本年4月から実施される消費税率変更が末端需要に与える影響が不透明である。一方、上述の通り、各品種とも子牛の出生頭数の大きな回復が見込まれない状況下にあることから、子牛取引価格が短期間で大きく下落する可能性は低いものとみられる。(畜産需給部 田中 あや) |
元のページに戻る