需給動向 海外

◆中 国◆

2013年の生乳生産量、前年比5.8パーセント増


2014年の生乳生産量も増加見込み

 米国農務省(USDA)が2013年12月23日に公表した「China-Peoples Republic of Dairy and Products Annual」によると、2013年の中国の生乳生産量は、前年比5.8パーセント増の3450万トンと見込まれている(表7)。生乳増産の背景には、生乳消費量の増加がある(前年比6.1%増)。これが生産者の生産意欲を高め、経産牛の飼養頭数の増加を進めている。

 2014年も引き続き、国内消費が堅調と見込まれていることから、今後も経産牛の増頭が進むものとみられ、2014年の生乳生産量は、前年の水準を上回る増加が見込まれている。

表7 生乳需給表
資料:USDA「GAIN Report」2013年12月公表
  注:2013年は推定値、2014年は予測値

精液輸入量は、前年から2割増

 堅調な国内消費を背景に、経産牛の増頭と品種改良により、生乳生産を増加させる動きが強まっている。

 中国政府は、優良品種の普及促進による生乳生産の増加を目標としている。例えば、酪農生産者に対する凍結精液の購入補助(ホルスタイン一頭当たり(2本分)30元(510円:1元=17円))の継続など、品種改良による一頭当たりの乳量の増加を促進している。

 中国では、フォンテラが2007年に数千頭規模の酪農施設を建設するなど、外国資本による大規模な酪農施設の建設・拡張が進んでいる。また、国内の乳業企業も良質な生乳の安定確保のため、自ら大規模生産に乗り出す動きもあるなど、中国の酪農の生産構造は、規模拡大に向け変化を遂げつつある(図29)。

図29 中国の規模別牧場戸数
資料:2013中国乳業統計資料
 この動きが、外国産精液を輸入する傾向を強めている。これは、中国国内の生乳需要が旺盛であり、生乳価格も高水準で推移していることを背景に、資金力のある経営体が外国産精液を積極的に導入して、品種改良を進め、高い収益性を確保する動きを展開しているものとみられる。

 2013年の中国の牛精液輸入量を見ると、前年比22.2パーセント増の8,677キログラムとなった(図30)。輸入先国は、北米が主体であり、オランダのシェアは低下している。これは、中国が乳成分の向上よりも乳量の増加を求める志向が強まり、体格のよい北米産の遺伝形質を選択する傾向を強めたためである。
図30 牛精液の国別輸入量
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
  注:HSコード051110
 2013年12月、中国政府は一人っ子政策の緩和を発表しており、中長期的には、若年層人口の増加も予想されている。また、所得水準の向上と都市化による食生活の多様化などと相まって、生乳需要は今後さらに増加することが見込まれている。このため、乳牛一頭当たり搾乳量の向上や経産牛の増頭に向けた取組みは、需要を支えるうえで重要視されている。現在の外国の優良品種の精液輸入の増加もその表れであろう。2013年は、夏季の高温期が長期化したことで、生乳生産に大きな影響が生じたが、それとともに、中国国内の牛肉価格が高値で推移している状況を受け、零細酪農家が乳牛を出荷する事例も多く報じられていた。現在、中国では酪農生産者の大規模化が進展する中で、飼料や飼料技術の向上により、今後の生乳生産は拡大するものとみられている。

                                     (調査情報部 山ア 博之)


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