需給動向 海外 |
2014年、生乳生産は増加、乳価下落の予測
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天候に左右された2013年欧州乳製品輸出入・販売者連合(Eucolait)は、2013年1月27、28日に行われた会議で、2013年の牛乳・乳製品の概況および2014年の生産見通しなどを発表した。これによると、EUの2013年の生乳生産は、天候悪化による上半期の減産が影響したことで、増加傾向は続いているものの過去4年間では最も低い伸び率となった。また、EU以外の主要生産国であるNZやロシアの生乳生産が減少したことにより、2013年の1〜11月までの主要生産国の総生乳生産量は、前年同期に比べ80万トン減少と見込んでいる(図20)。
2015年生乳クオータ廃止に向けて 同会議でドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)は、2015年の生乳クオータ廃止に向けて、フランス、ドイツ、アイルランドおよびオランダなど主要生産国では、乳業メーカー各社が乳製品の増産に向けた取り組みを進めており、チーズについては、主要メーカーの多くで、2013年中に新たな生産施設を稼働させている。一方、粉乳については、新規生産施設の稼働は来年以降との見込みであり、チーズ生産は増加するものの粉乳生産の大幅な拡大はないと予測している。 ※EU加盟28カ国の農業は、多種多様な環境、歴史、文化を背景に違いが大きい。 民間在庫補助廃止は、乳製品生産に影響同会議では、2013年12月に最終妥結に至った新たな共通農業政策(CAP: Common Agricultural Policy)における乳業部門への影響についても、各国の参加者から意見が述べられ、特に、乳業部門の改革の一つである民間在庫補助(PSA : Private Storage Aid)廃止の影響について関心が高まった。PSAは、バターおよび脱脂粉乳に対して在庫補助が助成される制度で、その単価は、固定経費がトン当たり14.88ユーロ(2,098円)、保管経費がトン当たり1日0.26ユーロ(36.66円)と設定されていた。 PSAの利用が高かったオランダ、ドイツ、フランスおよびアイルランドから、「乳業メーカーが在庫を多く抱えることへの忌避から、市場の価格変動性を強くしかねない」といった意見が報告された(表6)。また、アイルランドは、生乳生産が季節性を伴うことから、最盛期である春の生乳をバターや脱脂粉乳として保存することで、年間を通して需給を調整しており、今後の需給に影響が生じる可能性を指摘した。PSA廃止の影響を懸念すると述べた参加者の多くは、いずれもEUの主要酪農生産国、かつ、輸出国であり、自国の消費量を大幅に上回る生乳を保存が可能な乳製品として保管し、市場の需給を判断して放出している。 一方、EU生乳生産量第4位となる英国では、生乳生産の大部分が飲用乳に向けられており、当該制度の利用はそれほど高くないため、PSA廃止の影響は、重要視していないとのことであった。 また、イタリアの乳業メーカーは、PSA廃止後の動向は、乳製品在庫の管理能力と銀行からの信用力(乳製品在庫を抱えている間、これを担保に銀行から運転資金の借り入れを行う事例が多く、銀行からの貸付額が経営を大きく左右する)を重要なポイントと挙げている。 例年の傾向として、EUでは生乳価格が高水準にある時は、最も付加価値の高いチーズの生産が促進される。2013年の動向を見ても、上半期の生乳生産の落ち込みにより生乳価格が上昇した際は、飲料乳およびチーズの生産は維持されたが、バターおよび脱脂粉乳の生産は大幅に減少した。2014年は、生乳生産量増加、生乳価格下落の予測であり、PSA廃止による乳製品生産への影響が懸念される。
(調査情報部 矢野 麻未子) |
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