と畜頭数は8カ月連続で前年同月を下回る
チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2013年12月の豚と畜頭数は、43万9786頭(前年同月比9.2%減)と8カ月連続で前年同月の水準を下回り、2013年のと畜頭数は、549万9243頭(前年比7.7%減)となった(図12)。この結果、2013年の豚肉生産量(枝肉換算ベース)も、55万34トン(同5.8%減)と減少した。豚肉の減産要因は、2012年5月に、チリ最大手豚肉パッカーの一部施設が環境問題により閉鎖したことによる。この閉鎖により、繁殖母豚が著しく淘汰され、2013年1月時点の国内の繁殖母豚頭数は前年同月比で約15パーセント減となり、子豚の生産にも影響を及ぼしたことで、2013年の豚肉生産が減産となった。
図12 豚と畜頭数の推移 |
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資料:ODEPA
注:2012年と2013年の9月は、例年よりも祝日が多く工場稼働日が少な
かったため、と畜頭数は減少。 |
日本、中国向け輸出が増加の一方、全体の輸出量は減少
豚肉生産量の減少は輸出にも影響を及ぼし、2013年の豚肉輸出量は12万335トン(前年比9.2%減)とかなりの減少となった(表4)。輸出先を国別に見ると、日本および中国向けを除き軒並み減少となった。
日本向けの輸出(FOB)価格は、他国向けに比べて高水準となっている(1キロ当たり5.6米ドル)。これは、日本とチリの自由貿易協定(FTA)によるチリ産豚肉の関税特恵による影響が大きい。チリは日本向けに差額関税の分岐点価格を上回る高価格帯の部位を2.2パーセントの関税(通常4.3%)で輸出することが可能であり、他国と比べて価格優位性を有する。日本向けは高価格帯の部位が中心となるため輸出価格は高水準となるものの、この優位性のもとで輸出量は増加したとみられている。中国向けは、中国政府が米国産などの豚肉に対し、ラクトパミンの輸出前検査を要求しているため、ラクトパミン未使用のチリ産豚肉の輸出量が大幅に増加した。
表4 豚肉の輸出先上位5カ国(2013年)
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード020311、020312、020319、020321、020322、020329 |
一方、国内の減産を受けて輸入量は大幅に増加した。2013年の輸入量は3万7993トン(同98.1%増)を記録した(図13)。中でも、国産よりも割安とされる米国産、カナダ産、ブラジル産の輸入が目立っている。輸入量を国別に見ると、アメリカが2万2784トン(約6割)、カナダが1万1053トン(約3割)、ブラジルが4,064トン(約1割)となっている。
図13 豚肉輸入量の推移 |
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資料:ODEPA |
豚枝肉卸売価格は前年を下回る水準
2013年の豚枝肉卸売価格は1キログラム当たり1.19米ドル(前年比4.7%安)と下落した。2013年12月の同価格は、と畜頭数の減少を受けて前年同月比9.5パーセント高の同1.50米ドル(156円:1米ドル=104円)となった(図14)。国内生産は減産傾向にある中、安価な外国産豚肉の輸入量が増加したことが通年で国産豚肉の価格を押し下げたものとみられている。チリ養豚生産者協会(ASPROCER)は政府に対し、急増する外国産豚肉の国内産業への影響を懸念してセーフガード(SG)措置を要請したものの、政府はSG発動に踏み切っていない。このため、国内生産者の生産意欲は減退しているものとみられ、今後、増産となる可能性は低い状況にある。
図14 豚枝肉卸売価格の推移 |
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資料:ODEPA |
(調査情報部 米元 健太)
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