畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 2014年の牛肉生産量、2年連続で最高記録を更新− 2015年4月
需給動向 海外

◆豪 州◆

2014年の牛肉生産量、2年連続で最高記録を更新


2014年のと畜頭数および牛肉生産量はいずれも前年比1割増

 豪州統計局(ABS)によると、2014年の成牛と畜頭数は、922万6000頭(前年比10.6%増)と過去3番目の高い水準となり、牛肉生産量も2年連続で最高記録を更新する255万3800トン(同10.1%増)となった(図8)。

 2012年後半から2014年にかけて長期にわたる干ばつに襲われたクイーンズランド(QLD)州やニューサウスウェールズ(NSW)州北部に加え、2014年の半ば頃からはビクトリア(VIC)州などでも降雨不足による飼養環境の悪化により、と畜頭数が増加した。州別では、QLD州が420万9000頭(同8.3%増)、NSW州が200万7000頭(同11.6%増)、VIC州が189万9000頭(同18.3%増)となった。

図8 成牛と畜頭数および牛肉生産量の長期的推移
資料:ABS
  注:牛肉生産量は子牛肉を除く。

 と畜頭数を性別に見ると、雌牛が467万1000頭(同18.3%増)、雄牛が455万5000頭(同3.7%増)と、雌牛が大幅に増加し、全体の5割を超えた(図9)。特に、肉牛主産地のQLD州やNSW州では、雌牛のと畜頭数が2年連続で前年比2割以上の増加となっている(図10)。干ばつによる飼養環境の悪化から、繁殖雌牛を維持しきれず、淘汰せざるを得ない厳しい状況が続いている。

 過去2年の繁殖雌牛のと畜の増加により、今後、肉牛供給能力の低下が懸念されている。また、飼養環境の改善に伴い牛群再構築が開始されれば、繁殖雌牛の保留と相まって、と畜頭数は2016年から2018年頃にかけて大きく落ち込むとみられている。

図9 性別成牛と畜頭数の長期的推移
資料:ABS
  注:雄牛は総と畜頭数から雌牛を除いたもの。
図10 QLD州およびNSW州の雌牛と畜頭数の推移
資料:ABS
  注:雄牛は総と畜頭数から雌牛を除いたもの。

2月の牛肉輸出量、前年比6%の増加

 豪州農漁林業省(DAFF)が3月2日に公表した「Red Meat Export Statistics」によると、2015年2月の牛肉輸出量は10万6054トン(前年同月比6.0%増)となり、2年4カ月ぶりに前年同月比減となった前月から、再び増加となった(図11)。好調な輸出需要と、年明け以降の肉牛取引価格の高騰によると畜頭数の増加が、2月の輸出増を後押しした。

 主要輸出先では、韓国向けが1万2186トン(同1.2%減)と前年同月をわずかに下回ったものの、首位の米国向けが3万7822トン(同60.0%増)と大幅に増加し、日本向けも2万4311トン(同9.7%増)と増加した。米国向けは、米国内の牛肉供給量低下による輸入需要が継続する一方で、日本向けや韓国向けについては、豪州産と競合する米国からの輸出減に加えて、米国西海岸の港湾労使交渉問題による輸出貨物停滞の影響が、豪州産への引合いにつながったとみる向きもある。

 その他の輸出先を見ると、カナダ向けが4290トン(同36.1%増)と増加したものの、冷凍牛肉の在庫が積み上がっていると報道される中国向けが9874トン(同25.1%減)と大幅に減少し、他も軒並み前年同月を大幅に下回った。

図11 主要輸出先別牛肉輸出量の月別推移
資料:DAFF
  注:船積重量ベース。
(調査情報部 伊藤 久美)


元のページに戻る