需給動向 海外

◆ブラジル◆

ロシアの米国・EUなど向け禁輸措置が輸出増を後押し


ロシア向けは前年比2.6倍に増加

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2014年の鶏肉輸出量は、前年比2.8%増の365万994トンとなった。増加の要因は、ロシアによる米国やEUなどからの農畜産物の禁輸措置により、ブラジル産への代替需要が高まったこととみられる。また、決済通貨である米ドルに対して、ブラジルレアル安で推移した為替相場により、良好な輸出環境が維持されたことも挙げられる。

 輸出先の内訳を見ると、最も多かったのはサウジアラビアで64万2530トン(同6.2%減)、第2位は日本で41万612トン(同6.1%増)、第3位は香港で31万5550トン(同6.0%減)となった(表3)。また、ロシア向けは前年比164.2%増(12万4939トン)と第8位に躍進した。

表3 鶏肉輸出の推移
資料:SECEX

 サウジアラビア向けは、同国内での鶏肉生産拡大により輸入需要が低下して前年から減少した。一方、日本向けは、日本国内での牛肉、豚肉価格が高値で推移していることを受け、外食産業を中心に鶏肉への代替需要が高まり、ブラジル産への引き合いが強まったため前年を上回ったとみられる。また、中国向け輸出認定施設の増加を反映して、香港向けは減少したものの、中国向けが大幅な伸びとなった。

輸出拡大の鍵を握る中国

 ブラジル動物性たんぱく質協会(ABPA)は、2015年の鶏肉輸出拡大の鍵を握る輸出先として中国を挙げている。中国は2015年1月9日、米国北西部で家禽から高病原性鳥インフルエンザ(H5N8型)が発生したことを受け、米国産鶏肉の輸入停止を表明しており、これによりABPAは、今後、米国産からブラジル産への切り替えが進むとみている。しかし現在、ブラジル国内の中国向け輸出余力は限られており、ABPAは、新たに8カ所の中国向け輸出認証施設の登録を目指している。

 一方、主要輸出先国のうち、ロシア、ベネズエラ、アンゴラなど原油依存度が高い国は、原油価格の下落により購買力の低下が見込まれることから、2015年は減少する可能性があるとしている。

2015年の鶏肉生産、増加の見通し

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2014年10月、2015年のブラジルの鶏肉生産量について、過去最高となる1311万5000トン(前年比3.4%増)と予測している(図23)。この要因として、ブラジルでの肉牛供給不足に伴う牛肉価格の高騰により、国内の鶏肉需要が高まることや、米ドル高レアル安の為替相場下で輸出が好調に推移することを挙げている。

 しかしながら、2015年2月18日から3月10日にかけて、ブラジル国内では、政府の軽油税引き上げを契機としたトラック労働者組合のストライキによる物流への影響が続き、飼料調達などに影響が出た。ABPAでは、ストライキによる飼料不足から南部の一部の養豚・養鶏場が生産を一時的に停止したとしており、畜産業界の損害は、少なく見積もっても、7億レアル(294億円:1レアル=42円)になったと見込んでいる。

図23 鶏肉生産量の推移
資料:USDA/FAS
  注:2014は速報値、2015年は推計値
(調査情報部 米元 健太)

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