需給動向 海外 |
生乳生産は継続的に増加の見込み
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2014年12月の生乳出荷量、前年同月比0.8%増 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2014年12月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比0.8%増の1182万トンとなり、18カ月連続で前年同月を上回った(図28)。また、2014年通年では、前年比4.6%増(1億4838万トン)と前年を656万トン上回った。EUではこの1年間で、日本の生産量の約9割に相当する量の生乳を増産させたことになる。
一方、2月25日に更新された2014年12月末時点の乳用牛飼養頭数(EU27カ国)によれば、乳用経産牛(0.1%増)と未経産牛(0.8%増)は前年並みとなり、育成雌牛(2.7%増)はわずかに増加した(表4)。2015年3月末をもって終了する生乳クオータ廃止後に向け、生産量はさらに上積みされると見込まれている。 国別に見ると、アイルランドは乳用経産牛が同4.2%増となる一方、未経産牛は5.9%減とした。飼養頭数の多いドイツ、フランスは横ばいあるいはわずかな増加にとどまったが、オランダは未経産牛(7.7%増)と育成雌牛(10.4%増)をかなり増加させた。 2013/14年度(4月〜翌3月)は、8カ国(ドイツ、ポーランド、オランダ、アイルランド、デンマーク、オーストリア、ルクセンブルグ、キプロス)の生乳生産量が生乳クオータを超過した。このうち、飼養頭数の多い6カ国を見ると、4カ国(ドイツ、オランダ、アイルランド、オーストリア)の飼養頭数は、生乳クオータ廃止後を視野にやや増加傾向にある。
2015年1月の生乳取引価格、前年同月比18.1%安 欧州委員会によると、2015年1月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比18.1%安の100キログラム当たり32.75ユーロ(4421円:1ユーロ=135円)と、大幅に下落した(図29)。生乳価格は、6カ月連続で前年同月を下回っている。 主要生産国では、オランダが前年同月比29.7%安と大幅に下落しているほか、ドイツ(同23.6%安)、フランス(同15.2%安)と、軒並みかなりの下落となった。 また、ロシアとの取引量の多かったバルト三国は、エストニア(同37.2%安)、ラトビア(同33.4%安)、リトアニア(37.1%安)となり、ロシアによるEU産農畜産物の禁輸措置に対し、極めて深刻な影響を受けている。
2014年の乳製品輸出量、チーズを除き増加 2014年の乳製品主要品目のEU域外への輸出量(EU28カ国)は、ロシアの禁輸措置の影響を受けながらも、チーズを除き、バター、脱脂粉乳、全粉乳とそれぞれ増加した。 品目別に見ると、バターは最も輸出量の多いロシア(前年比32.7%減)は減少となったが、中東やアジア向けが伸び、数量(同20.8%増)、金額(同16.9%増)ともに増加した(表5)。
チーズは、2013年には全輸出量の3分の1をロシアが占めていたが、2014年には禁輸措置により同国向けが半減した結果、全体では前年比8.3%の減少となった(表6)。
他の品目が輸出量の伸び悩みを見せる中、脱脂粉乳は前年比59.0%増と大きく躍進した。北アフリカ、中東、アジア向けが大きく増加し、複数の輸出先で前年と比べ2倍以上の輸出量に達した(表7)。
全粉乳の輸出量は、前年比4.3%増とやや増加したものの、バター、脱脂粉乳と比較し、小幅な増加にとどまった。主要な輸出先は、中東と北アフリカが占めている(表8)。
ロシア禁輸に係る支援措置を再延長 欧州委員会は2月26日、ロシアによるEU産乳製品輸入禁止措置の影響を最小限に食い止めるために実施している民間在庫補助制度(PSA)について、2度目となる適用期間の延長を発表した。 PSAは、民間部門が保管するバターと脱脂粉乳の保管費用を補助し、これらを市場隔離するもので、2014年9月より実施されている。当初、PSAの適用期間は同年12月末までとされたが、乳製品価格の下落を背景に2015年2月末まで延長され、今後の需給見通しを踏まえて、この度、同年9月末までの再延長となった。 なお、2月22日時点でPSAの対象となっている民間在庫量は、バターが4万3969トン、脱脂粉乳が2万912トンとなっている。これは、EUのバター年間生産量の2%強、脱脂粉乳年間生産量の2%弱に相当する。 (調査情報部 宅間 淳)
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