需給動向 海外 |
価格下落が止まらず、民間在庫補助を発動 |
2014年10月の豚肉生産量、前年同月比2.3%増 欧州委員会によると、2014年10月のEU28カ国の豚枝肉生産量は、前年同月比2.3%増の205万トンと、わずかに増加した(図12)。2014年1〜10月の累計で見ると、前年同期よりわずかに増加(1845万トン、前年同期比1.1%増)し、通年では前年並み(0.9%増)の生産量が予測されている。
また、2015年2月17日に公表された2014年12月末時点の豚飼養頭数(EU23カ国)は、前年比1.2%増の1億3260万頭とわずかに増加となった(表1)。母豚頭数も1116万5000頭と前年並みで推移しており、今後とも安定的な豚肉生産が見込まれている。
国別に見ると、最も飼養頭数が増加したスペインは、妊娠母豚で前年比9.2%増、子豚で同7.3%増加となった。この要因として、2014年の米国の豚肉価格上昇を受け、日本などからの需要が増えたことで、養豚農家の増頭意欲の向上につながったことが挙げられる。同年のEU域外への豚肉輸出は、ロシアの禁輸措置を受け、EU全体では前年比4.8%減となったが、スペインは中国、日本、韓国などアジア向けの輸出を大きく伸ばし、同46.8%増となった。 2015年1月の豚枝肉卸売価格、前年同月比18.7%安 欧州委員会によると、2015年1月のEU豚枝肉卸売価格は、前月からやや値を下げ、前年同月比18.7%安の100キログラム当たり129.8ユーロ(1万7523円:1ユーロ=135円)と、大幅に下落した(図13)。EUの豚枝肉卸売価格は、2013年10月以降、16カ月連続で前年同月を下回って推移している。 2014年2月から実施されているロシアによるEU産豚肉の禁輸措置から約1年が経過したが、ロシア向け輸出量の減少を補完するだけの新たな輸出先は見つかっておらず、輸出需要は減退している。加えて、域内生産量がわずかながら増加傾向にあることから、価格は下げ止まらない状況にある。
主要国の状況を見ると、最も価格を下げたのは増産傾向にあったスペインであり、前年同月比で28%安の125.9ユーロ(1万6997円)となった。他の主要国も軒並み値を下げており、オランダとポーランドで同21%安、デンマークとフランスで同19%安、ドイツで17%安となっている。 また、2014年の年間平均価格は、156.6ユーロ(2万1141円、前年比10.8%安)と大きく下落した(図14)。主要国では、オランダが最も値を下げて同12.0%安となり、EU28カ国で最安値をつけた。EUの豚枝肉の年間平均価格は、2011年から上昇し、2013年は英国での口蹄疫の発生による供給不足を受けて高騰した2001年(166.5ユーロ、2万2478円)を上回る水準に達していた。
豚肉の民間在庫補助を発動 豚肉価格の大幅な下落を受け、欧州委員会は2月24日に豚肉の民間在庫補助の発動を発表し、3月9日の官報告示をもって発動した。 この制度は、民間事業者が豚肉を流通させずに保管した場合、日数・部位・数量に応じて、保管料の補助を行うものであり、一定量の豚肉を市場から隔離することで、出回り量を抑制し、市場価格の上昇を図ることを目的としている。 なお、今回の発動は、2011年2月以来となる。前回は、同年1月にドイツで豚用飼料へのダイオキシン混入問題により下落した豚肉価格に対処するために発動され、EU全体で14万トン強の在庫が市場から隔離された。 【制度の概要】 (1)根拠法 規則(EU)No1308/2013 (2)補助の仕組み (1)発動基準となる価格など EUの豚肉格付クラスEおよびクラスRに該当する豚枝肉の価格が1トン当たり1509.39ユーロ(20万3768円)を18週連続で下回った場合、あるいは養豚業の収益悪化の要因となる重大な出来事が発生した場合。 (2)補助対象数量、補助額など ・補助対象数量は、骨抜きの場合10トン以上、その他の場合は15トン以上
(調査情報部 宅間 淳)
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