需給動向 海外 |
牛肉生産・輸出の減少が本格化 |
牛肉生産量、3カ月連続で減少 豪州統計局(ABS)によると、2015年9月の牛肉生産量は、20万6101トン(前年同月比6.5%減)となった(図6)。干ばつの影響によると畜頭数の増加から一転し、7月以降、牛群再構築の開始に伴い3カ月連続で前年同月を下回っている。牛肉生産量の減少は、8月まではニューサウスウェールズ(NSW)州やビクトリア(VIC)州が中心であったものの、9月に入り最大の生産州であるクイーンズランド(QLD)州も減少に転じており、今後、減少傾向が本格化すると予想される。 ただし、9月の牛肉生産量は、過去5カ年平均と比べると9.3%上回っており、いまだに平年に比べ高水準の生産量を維持している。 牛肉輸出量、大幅に減少 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2015年10月の牛肉輸出量は10万2885トン(前年同月比16.0%減)と3カ月連続で前年同月を下回った(表1)。この減少傾向は、牛肉生産量の減少によるものである。 主な輸出先国別に見ると、米国向けは、これまでの増加傾向から一転して、2カ月連続で前年同月を大幅に下回っている。これは、前月同様に米国が豪州産牛肉に対して設けている年間41万8214トンの関税割当(無税枠)を踏まえ、年内の輸出を控えているためとみられている。また、日本向けについても、2015年1〜4月にかけて、日豪経済連携協定に伴う関税削減の影響などから増加したものの、5月以降は日本の輸入在庫の積み増しから、減少傾向が続いている。 一方、韓国向けは、為替相場の豪ドル安傾向や韓国市場で競合国となる米国の輸出減少により、増加傾向が続いている。また、中国向けは、大幅な増加傾向が続いており、中国における豪州産牛肉需要の高さがうかがえる。 肉牛取引価格、急落後再び上昇 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2015年10月末日時点で1キログラム当たり547豪セント(481円:1豪ドル=88円)となった(図7)。2015年4月以降、上昇傾向が継続し、記録的な高値で推移していたが、10月前半に大幅下落となった。これは、豪州東部で高温乾燥気候が広がり、豪州気象局も今後3カ月間、NSW州やVIC州で高温乾燥気候が継続する見通しと発表したため、肥育農家の導入意欲が減退したことが影響している。ただし、QLD州では、気象条件の悪化が比較的軽微であり、牧草肥育農家は一定の買い付け意欲を持っているとみられている。そのため、QLD州での取引の活発化などを背景に、肉牛取引価格は10月後半から再び上昇に転じている。 牛肉需給見通し、生産・輸出ともに減少の後、緩やかに回復 MLAは2015年10月、四半期に一度の牛肉需給見通しを公表した(表2)。これによると、2015年の牛総飼養頭数は、同年前半の高水準のと畜頭数および生体牛輸出頭数を反映して前年を下回ると見込んでいる。さらに、2016年も前年を下回り、2017年以降、牛群再構築に伴い緩やかに増加するとしている。一方、2015年の牛肉生産量も、牛群再構築に伴い、前年を下回ると見込んでいる。その後、2017年まで減少傾向で推移し、2018年以降回復に転じるとしている。輸出量についても、生産量と同様に2017年まで減少し、その後回復すると見込んでいる。 また、MLAは最近の傾向として、出荷率((と畜頭数+生体牛輸出頭数)/飼養頭数)の高さを挙げている。過去10年の出荷率の平均は31%であるのに対して、2015年は36%程度と見込んでおり、牛群再構築開始の一方、依然として強い海外需要の影響が表れている。 さらに、2015年の雌牛と畜率(雌牛のと畜頭数/総と畜頭数)の高さも特筆している。過去10年の雌牛と畜率の平均は47%であるのに対して、2015年1〜9月は51%となっており、2015年前半までの干ばつの深刻さの表れであると同時に、将来的な牛肉生産回復の遅れへの懸念につながっている。 (調査情報部 根本 悠)
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