需給動向 海外 |
生乳生産量、増加に陰り |
9月の生乳生産量、増加率が鈍化 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2015年9月の生乳生産量は97万100キロリットル(99万9000トン相当、前年同月比0.8%増)と、2015/16年度(7月〜翌6月)に入り3カ月連続で前年同月を上回った。また、年度累計(7月〜9月)では、246万6200キロリットル(同254万トン相当、前年同期比3.1%増)となっている(図26)。 生乳生産量の月別推移を見ると、9月は、7月、8月に比べて対前年同月の増加率が小さくなっており、増産傾向にはあるものの、そのペースは落ちつつある。現地業界関係者によると、エルニーニョ現象に伴う降雨量の減少が、生乳生産に影を落としており、DAの2015/16年度の生乳生産量の見通し(前年度比2%増)は、今後修正される可能性が高いとも言われている。 8月の乳製品輸出量、バターを除いて増加 DAが公表した2015年8月の主な乳製品の輸出量は、以下の通りとなった(図27)。 ・脱脂粉乳 1万3490トン(前年同月比37.9%増) ・全粉乳 5006トン( 同 16.6%増) ・バター 1688トン( 同 11.6%減) ・チーズ 1万3267トン( 同 26.4%増) 同年7月に続き、増加傾向で推移してきた生乳生産量と、豪ドル安で推移する為替相場を受け、バターを除いた各品目の輸出量は前年同月を上回って推移した。 粉乳については、インドネシアやマレーシアなど東南アジア向け輸出が増加している。また、チーズについては、輸出量の5割以上のシェアを占めている日本向け輸出が、前年同月比約1.5倍に増加している。一方、バターについては、高い国内需要を受けて国内市場に優先的に仕向けているとみられることから、8月の生産量が7680トン(同10.3%増)と2カ月連続で増加しているにもかかわらず、輸出量は減少している。 乳製品国際価格、2カ月ぶりに下落に転じる 2015年10月20日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)における1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(図28)。 ・脱脂粉乳:2178米ドル ・全粉乳:2694米ドル(約33万円、同7.6%高、同4.6%安) ・バター :2850米ドル(約35万円、同9.0%高、同6.2%安) ・チーズ :3163米ドル(約39万円、同5.2%高、同2.2%安) 4回連続で上昇していた取引価格はいずれも下落に転じたが、脱脂粉乳以外は、前年同期を上回る水準まで回復している。また、現地報道によると、専門家の見解として、9月の入札結果(多くの品目で前回比15〜20%上昇)ほどの大幅上昇は期待できないものの、豪州やニュージーランドでは、エルニーニョ現象に伴う降雨量の減少や乳用牛のと畜頭数増加の影響から、生乳生産が減少すると見込まれ、取引価格は来年初頭にかけて上昇が続くとしている。 2015/16年度の生乳生産、水資源の確保が課題 DAは10月、生乳生産をめぐる状況と今後の見通しについての四半期ごとの報告書を発表した。 報告書では、今後の生乳生産見通しを左右する要素として、水資源の確保が挙げられている。主要生産地の中でも、かんがい設備の導入が進んでいるビクトリア州北部のマレー地方における、2015年9月現在のダムの貯水率は、エルニーニョ現象の影響もあり降雨量が減少したことで、満水であった前年同月と異なり軒並み6割台まで低下している。 ニューサウスウェールズ州も同様に水資源が枯渇しており、酪農部門へのかんがい用水への供給割合は、2015年9月現在4%(前年同月は28%)と20ポイント以上低下している。かんがい用水の取引価格も上昇傾向にあり、地域によっては前年同月比2倍近くまで上昇しているところもあり、酪農家にとっては大きな負担になるとしている。 また、DAによると、米国内における牛肉需給がひっ迫している中、経産牛を用いた挽き材の国際価格が米国からの高い需要により上昇していることを受け、生乳生産効率の悪い経産牛のと畜が続いている。2015/16年度累計(7月〜9月)の経産牛のと畜頭数は、前年同期比58%増、過去5年平均と比べても46%増と、大幅に増加している。 (調査情報部 竹谷 亮佑) |
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