需給動向 海外

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生乳出荷量は増産傾向を維持、乳価は今年最安値


生乳出荷量は5カ月連続で前年同月比2%以上の増

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2015年8月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比2.6%増の1280万トンとなった。クオータが撤廃された同年4月以降、生乳出荷量は増産傾向を維持し、5カ月連続で前年同月を2%以上上回って推移している(図24)。

生乳取引価格は13カ月連続前年割れ

 欧州委員会によると、2015年9月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比18.9%安の100キログラム当たり29.55ユーロ(3960円:1ユーロ=134円)となり、今年最安値を更新した(図25)。生乳出荷量が増加傾向を維持する中、低水準で推移する乳製品国際相場も影響し、平均生乳取引価格は13カ月連続で前年同月を下回っている。5年ぶりに30ユーロを割った6月以降、なおも下落傾向で推移しているが、前年比の下落幅は徐々に小さくなっている。

 国別では、EU生乳出荷量の約20%を占めるオランダが前年同月比25.0%安で最大の下落率となり、次いで同じく10%弱を占めるドイツが同23.8%安となっている。

通年では1.1%増の見込み

 EUの生乳生産量は、第1四半期(1〜3月)が前年同期比1.3%減、第2四半期(4〜6月)が同2.5%増で推移してきたが、欧州委員会が10月に公表した牛乳乳製品の短期需給見通しによると、2015年の生乳出荷量は、前年比1.1%増と見込んでいる。アイルランド、オランダ、ポーランドなどが増産の一方で、酪農主産国であるドイツとフランスが前年割れと見込んでいる。直近の統計によると、EU15カ国(東欧諸国加盟以前の加盟国)の6・7月の乳用経産牛飼養頭数は、前年同期比1.2%増となっており、特にアイルランド(同5.7%増)、オランダ(同3.5%増)、英国(同2.0%増)の伸びが大きい。しかし、生乳取引価格の低迷から、直近では乳用経産牛の淘汰が進んでいるとされ、第3四半期以降の生乳増産の勢いは弱まるとみられている。

 一方、乳製品需給は改善傾向にあり、卸売価格は年末まで横ばいで推移するが、その後は上昇としている。この要因として、域内消費が好調であることと、乳製品価格の低下による価格競争力の回復で輸出先が拡大していることを挙げている。一方、生乳取引価格については、需給の改善が反映されるには2〜3カ月を要することから、低迷が当分続くとしている。

(調査情報部 大内田 一弘)

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