需給動向 海外 |
2014年の牛肉輸出量は、前年を超え最高記録を更新
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2014年の牛肉輸出量は前年から大幅増 豪州農漁林業省(DAFF)が1月5日に公表した「Red Meat Statistics」によると、2014年12月の牛肉輸出量は11万5457トン(前年同月比19.8%増)となり、12月単月での記録を更新した(図4)。また、2014年通年の累計では128万7008トン(前年比17.1%増)と、過去最高となった前年を2割近く上回る結果となった(図5)。 この最大の要因には、牛肉供給量の増加が挙げられる。成牛と畜頭数の推移を見ると、2014年後半の東部での1週当たりと畜頭数※は17〜18万頭で推移し、前年の平均(14万2153頭)を大幅に上回った。2012年後半から肉牛主産地のクイーンズランド(QLD)州南部やニューサウスウェールズ(NSW)州北部で継続する干ばつが、2014年を通してほとんど改善が見られなかったことに加え、南部の州でも冬場の降雨に恵まれず飼養環境が悪化したことが、と畜頭数の増加につながった。 ※ QLD州、NSW州、ビクトリア州、南オーストラリア州およびタスマニア州の主要なと畜場における
海外市場からの引合いの強さも、2014年の牛肉輸出量の記録更新を後押しした。特に、米国向けは39万7889トン(前年比87.1%増)と急伸し、輸出先では2003年以来の首位となった(表1)。米国では、過去の干ばつによる飼養頭数の減少と牛群再構築の進展により、牛肉生産量が減少しており、これが米国向けの増加の要因となった。また、日本や韓国では、米国の牛肉減産とそれに伴う価格高騰から、米国産から豪州産に輸入がシフトした結果、日本向け(29万3778トン、同1.7%増)はわずかながらも2007年以降初めての増加に転じ、韓国向け(15万918トン、同4.5%増)は過去最高を記録した。そのほか好調となったのは、インドネシア向けやカナダ向け、EU向けなどである。 一方、2014年の主要輸出先の中で唯一減少したのが、中国向け(12万4585トン、同19.5%減)である。中国は2014年5月に成長促進ホルモン(HGP)を使用した牛肉の輸入を禁止し、これを受けて同月以降、中国向けの輸出が低調に推移したことが大幅な減少につながった。
2014/15年度の日本向け牛肉輸出量は減少の見通し 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月、2014/15年度(7月〜翌6月)の牛肉需給に関する見通しの改訂版を公表した(表2)。 これによると、牛と畜頭数および牛肉生産量は、9月時点の見通しよりも上方修正され、前年度からわずかな減少にとどまるとしている。これは、と畜頭数がいまだに高水準で推移しており、2015年も、当面はこの状況が継続するとみていることによる。また、2015年6月末時点の牛総飼養頭数は、2014年1月以降に繁殖雌牛の淘汰が加速したことから、前回見通しからさらに減少となった。 牛肉輸出量については、2014年後半の輸出量が高水準で推移したことを受け、前年度並みの高水準を維持するとしながらも、日本向けについては減少を見込んでいる。これについてABARESは、日本での牛肉生産量の減少や米国産や豪州産の高騰による牛肉価格の上昇から、日本国内の牛肉需要が減少するとみている。特に豪州産の日本向け輸出量は、米国向けとの競合によって加工用の減少を見込んでいる。ただし、高価格帯のアイテムについては、米国産の高値により豪州産が日本でのシェアを維持するとしている。
(調査情報部 伊藤 久美)
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