需給動向 海外

◆ブラジル◆

2014年の生産量、輸出量共に過去最高の見込み


と畜頭数、枝肉重量の増加により、生産量が増加

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2014年のブラジルの牛肉生産量(枝肉換算)は、と畜頭数および1頭当たり枝肉重量の増加により、前年比2.5%増の992万トンと、過去最高が見込まれている(図6、7)。

図6 と畜頭数の推移
資料:USDA
  注:2014年は予測値
図7 牛肉生産量の推移
資料:USDA
注1:2014年は予測値
  2:枝肉重量ベース

輸出増はロシア向けの代替需要増やレアル安が要因

 USDAによると、2014年のブラジルの牛肉輸出量は、前年比9.8%増の203万トンと、生産量同様に過去最高が予測されている(図8)。増加の主な要因として、米ドル高レアル安の為替相場がブラジルの牛肉輸出にとって良好な環境であったことや、8月からロシアが講じているEUや米国などとの農畜産物の禁輸措置がブラジルにとって追い風となったことが挙げられる。

 なお、2014年5月に、マットグロッソ州で牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛が確認され、エジプトなど数カ国で輸入停止措置を講じたが、国際獣疫事務局(OIE)が本事例を非定型と確認し引き続きBSEステータスを「無視できるBSEリスク」としたことから、ほとんどの国が輸入を再開している。また、2014年11月には、輸入を停止していた中国とサウジアラビア向け牛肉輸出再開の見通しも発表され、牛肉輸出への輸出は限定的であったとみられている。

図8 輸出量の推移
資料:USDA
注1:2014、2015年は予測値
  2:枝肉重量ベース

2015年の需給見通し

 ブラジル政府は、堅調な牛肉需要を受け、2013年末から2014年2月にかけて、天候が高温乾燥が続き、多くの牧草地が生育不良に見舞われた影響からの回復を促すため、草地資源確保への低金利融資を講じるなど、草地の増産に向けた後押しを行っている。USDAは、ブラジル政府の支援策が奏功するとし、2015年のブラジルの牛肉生産量は1021万トンと過去最高を更新し、初めて1000万トンを超える見通しとしている。

 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、同国では、前述の高温乾燥により、肥育もと牛の供給量が需要の水準を下回っており、もと牛価格が高値で推移している状況にある。しかしながら、2014年は飼料穀物価格が下落したことで、肉牛農家の収益性は良好であったとされており、増頭意欲は高い状況にある。

 2015年は、中国やサウジアラビア、米国など新たな市場への輸出が可能となる公算が高いことから、国際市場におけるブラジル牛肉の存在感はさらに増すことが予想される。一方、2014年の最大の輸出先国となったロシアの通貨危機が長引くと、ロシアの購買力が低下するため、同国向けは減少する可能性がある。

(調査情報部 米元 健太)

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