需給動向 国内 |
平成26年11月の牛肉需給は、生産量は3万3968トン(前年同月比3.6%減)と、全国的な出荷頭数の減少により前年同月を下回った。輸入量は4万1214トン(同16.1%減)と、前年同月を大幅に下回った。推定出回り量は7万3356トン(同15.4%減)となり、推定期末在庫は前月より1704トン積み増し、13万6509トン(同4.1%増)となった。需要期に差し掛かる11月の在庫は減少することが多いが、昨年は出回り量が少なかったことから在庫の積み増しが続いている(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。 こうした中、枝肉卸売価格は依然として高水準で推移している。12月の東京市場の枝肉卸売価格(速報値)を見ると、去勢和牛A−4が1キログラム当たり2175円(同8.6%高)、交雑種去勢牛B−3が同1446円(同6.8%高)、乳用種去勢牛B−2が同922円(同9.9%高)と、いずれも前年同月を上回った(図1)。 和牛の日別価格の推移を見ると、例年、12月の前半は堅調ながら後半に弱含むパターンが多い。しかし、昨年は後半も上昇し続け、例年とは逆の傾向となった。この背景として、全国的な出荷頭数の減少に加え、年末年始の休市期間が例年に比べて長かったことなどがあったとみられる。
日豪EPA発効により牛肉需給への影響は? 27年1月15日、日豪EPAが発効し、関税率が毎年段階的に引き下げられることとなった(表1)。これに併せて、特別セーフガードが措置されることとなったが、発動基準数量は毎年段階的に増加する(図2、3)。こうしたことから、生産者などからは輸入量の増加により国産品への需要が低下しかねないなど、不安視する声もある。そこで、日豪EPA発効に伴う牛肉需給への影響について見てみたい。 まず、国産品への影響については、国産牛肉への需要が一定程度あること、輸入牛肉との価格差が縮まっていること、国内生産量の減少が続く見通しであることから、消費量や枝肉価格、小売価格などへの影響は小さいとみられる。 また、豪州産牛肉の輸入量については、現地相場高、パッカーの供給能力、米国や中国などの他国との競合、円安の進行などの輸入環境に大きな変化がなければ、輸入業者が先を急いで輸入量を増加させることは考えにくい。代替可能な部位(バラや肩ロースなど)においては、比較的価格の高い米国産から豪州産へシフトする可能性はあるものの、依然として消費者は米国産を好む傾向があることから、米国産と豪州産のシェアはわずかな変化にとどまるとみられる。 一方、価格面については、現地相場高や円安進行などの厳しい輸入環境により、輸入価格は今後も高止まりする可能性が高い。そのため、小売価格についてもセール開催期間を除けば、高止まって推移するものと見込まれる。 以上のことから、日豪EPA発効により、ただちに牛肉需給に大きな変化がもたらされるものではないと考えられる。
27年度の牛肉安定基準価格、15円引き上げ1キログラム当たり865円に 27年1月14日に開催された「食料・農業・農村政策審議会畜産部会」において、畜産物価格等の算定について諮問・答申が行われ、27年度の畜産物価格等が決定した。牛肉の安定価格については、安定上位価格が現行1105円から1125円に、安定基準価格は現行850円から865円と、それぞれ20円および15円引き上げられた。これにより、3年連続での引き上げとなった。 (畜産需給部 山口 真功)
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