需給動向 海外

◆米 国◆

11月のと畜頭数および牛肉生産量は、
前年をかなり下回る


平均枝肉重量は過去最重量を記録

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が12月24日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2014年11月の肉牛のと畜頭数は、前年同月比12.6%減の220万9700頭となり、2014年1〜11月の累計では前年同期比7.3%の減少となった(図1)。と畜頭数減少の要因として、2011年、2012年に発生した干ばつ以降、牛飼養頭数が減少している中で、飼養環境が改善に向かっていることから繁殖雌牛を中心に保留が進み、食肉向け出荷が減少していることが挙げられる。と畜の内訳(2014年1〜11月の累計)を見ると、去勢牛が前年同期比1.8ポイント増の51.9%と増加しているのに対し、未経産牛は同0.4ポイント減、経産牛(乳用含む)も同1.5ポイント減となっており、このことからも繁殖雌牛の保留傾向が推察される。

 また、11月の牛肉生産量は、と畜頭数の減少により、前年同月比10.1%減の83万9000トンとなり、2014年1月から前年を下回って推移している。

 一方で、1頭当たり平均枝肉重量は増加傾向で推移しており、11月には、前年同月比2.9%増の376キログラムと過去最高を記録した。USDAはこの増加要因として、飼料価格の下落により生産者が飼料給与に積極的になったことに加えて、体重の重い牛(去勢牛)のと畜割合が増加したことを挙げている。

図1 と畜頭数と平均枝肉重量の推移
資料:USDA/NASS

牛肉生産量の減少により牛肉価格は高値で推移

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が12月30日に公表した「Wholesale Prices」によると、11月の牛肉卸売価格(カットアウトバリュー(注))は、100ポンド当たり253.18ドル(1キログラム当たり681円:1米ドル=122円)と3カ月ぶりに250ドルを超えた(図2)。また、同局が12月17日に公表した「Summary of retail prices and price spreads」によると、11月の牛肉小売価格(チョイス級)は、前年同月比16.5%高の1ポンド当たり630.3セント(速報値)(100グラム当たり170円)と過去最高値を更新した。価格上昇の要因として、牛肉生産量が減少する一方、国内外からの需要が底堅いことが挙げられる。USDAは、牛肉価格は牛肉生産量の減少を背景に2015年も引き続き高い水準で推移すると予測している。

(注) カットアウトバリューとは、各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構成した卸売指標価格。

図2 卸売価格と小売価格の推移
資料:USDA/ERS
注1:卸売価格は、チョイス級(600〜900ポンド)のカットアウトバリュー
  2:小売価格は、チョイス級(ひき肉を含む)の加重平均価格

牛肉生産量は、2018年に増加に転じる見通し

 USDAは12月、2024年までの農畜産物の需給動向の見通し(「Long-term Agricultural Projections」)を公表した。これによると、飼養頭数は、2016年に8790万頭と増加に転じ、その後も増加を続け、2024年には約9413万頭と2009年とほぼ同水準まで回復する見込みである(図3)。また、牛肉の生産量は、2018年に増加に転じ、2024年には1180万トンと見込んでいる。

図3 牛飼養頭数および牛肉生産量の見通し
資料:USDA 「Long-term Agricultural Projections」
  注:飼養頭数は2015年、生産量は2014年以降、推測値。
(調査情報部 渡邊 陽介)


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