需給動向 海外 |
生乳生産、12カ月連続で増加 |
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2014年11月の生乳生産量は100万6200キロリットル(103万6400トン相当、前年同月比3.0%増)と12カ月連続で前年同月を上回った(図26)。これは、主要な生産地域であるビクトリア(VIC)州北部、東部およびタスマニア(TAS)州における牛群の拡大や春先までの良好な気象条件が背景にある。特にTAS州では、2014年8月以降、連続して前年同月を10%以上上回る生乳生産量となっている。一方、VIC州西部および南オーストラリア州においては、春先まで乾燥した気候が続いたことから、前年同月を下回る生乳生産量で推移している。 2015年前半は、多くの生産地域で、平年を下回る降雨量が予想されており、生乳生産への影響が懸念されている。ただし、昨年9月から11月にかけて降雨量は平年を下回りながらも生乳生産量は前年を上回っており、今のところ、気象条件の悪化が生乳生産に及ぼす影響は限定的なものとなっている。
国際価格、粉乳類は依然低水準 2014年12月16日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:ニュージーランド(NZ)最大手乳業フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均取引価格は1トン当たり2320米ドル(28万円:1米ドル=122円、前年同期比52.4%安、前回比4.3%安)、全粉乳は同2270米ドル(28万円、前年同期比54.2%安、前回比1.9%高)となった(図27)。粉乳類の価格は、時おり上昇するものの、傾向としては下落基調が継続しており、中国など新興国の需要緩和が背景にあるとみられている。一方、バター、チーズの価格については、11月以降、上昇または横ばいで推移しており、それまでの下落傾向から回復に転じている。
昨年度の酪農経営、現金所得は大幅に増加 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月、酪農経営における現金所得の推移や飼養管理の傾向などに関する調査結果を公表した。 これによると、2013/14年度(7月〜翌6月)の酪農家の1戸当たり現金所得は、生産者乳価の高騰などから12万9200豪ドル(前年度比193.4%増)となった。これは、過去10年平均と比べても29%上回る記録的な高水準である。 また、2012/13年度の補助飼料の利用状況について、豪州の92%の酪農家は、1頭当たり乳量増加のため、穀物や配合飼料など何かしらの補助飼料を利用しているとしている。一方、繁殖時期については、飼養規模により差はあるものの、いずれの規模階層においても全体の40%以上の酪農家は、周年で繁殖をしている。 以上のことから、豪州の酪農経営は、伝統的な完全放牧、季節繁殖による季節生産ではなく、補助飼料利用や周年繁殖に基づき、1頭当たり乳量を増加させて周年で生乳を生産し、より多くの収入を安定して求めていることが推察される。 今年度の需給見通し、生乳生産は微増、輸出は減少 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月、2014/15年度(7月〜翌6月)の牛乳・乳製品需給に関する見通しを公表した(表9)。 これによると、経産牛の飼養頭数は横ばいとなるものの、1頭当たり乳量の増加により、生乳生産量は前年度を1.5%上回ると見込まれている。また、乳製品の生産量は品目により差が見られるが、ABARESは、脱脂粉乳およびバターが増加すると見ている。特に脱脂粉乳は、最大の輸出先であり需要の増加が期待できるインドネシア向けが、国際価格の下落と豪ドル安の為替相場により増加するとしている。一方、乳製品の国際価格の下落の影響から、乳製品の輸出額は総額で前年度を19.6%下回り、生産者乳価についても、同13.7%下回ると見込んでいる。
(調査情報部 根本 悠) |
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