需給動向 海外 |
生乳生産は増加、生乳価格は続落
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2014年10月の生乳出荷量、前年同月比3.0%増 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、EUの2014年10月の生乳出荷量は、前年同月比3.0%増の1189万トンとなり、16カ月連続で前年同月を上回った(図22)。また、2014年1〜10月の累計では、前年同期比5.1%増の1億2513万トンと前年同期を611万トン上回っている。 EU全体の生乳出荷量の半分以上を占める上位4カ国について、2014年1〜10月までの累計を見ると、ドイツは前年同期比4.1%増(103万トン増)の2640万トン、フランスは同6.6%増(131万トン増)の2120万トン、英国は同9.1%増(104万トン増)の1245万トン、オランダは同2.5%増(25万トン増)の1046万トンとなっている。2015年3月で廃止されるクオータ制度後を見込み、これら主要酪農国では増産体制が整備されつつあり、ドイツは2013年に続き、クオータ枠を超過する水準で推移している。また、オランダも、クオータ枠の超過が見込まれている。
2014年11月の生乳取引価格、前年同月比15.9%安 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、2014年11月のEU域内主要乳業メーカー16社の平均生乳取引価格は、100キログラム当たり34.10ユーロ(5047円:1ユーロ=148円)と前月から同1.66ユーロ安(246円安、前年同月比15.9%安)とかなり大きく値を下げた(図23)。 生乳価格は、2013年後半から中国向け乳製品輸出の高まりなどを背景としたEU産の乳製品価格上昇に伴い上昇基調となった。しかし、2014年に入りEU産の乳製品価格は、中国の乳製品輸入の停滞や、8月のロシアによるEU産乳製品の禁輸措置を受けてEUの乳製品需給が緩んだことで、下落に転じている。これを反映し、生乳価格も2014年2月以降下落傾向にある。主要乳業メーカーの中には12月に同30.75ユーロ(4551円)まで生乳取引価格を下げると公表しているところもあり、酪農関係者の間では、この下落基調が今後のEU域内の生乳生産に影響を及ぼすとの懸念が生じている。
ロシア禁輸措置に対する救済措置 ロシアによるEU産乳製品の禁輸措置により、乳製品輸出は以下のとおり影響を大きく受けている(表6)。
このことから、欧州委員会は2014年9月8日、共通農業政策(CAP)の民間在庫補助制度(PSA)を使い、通常のバターと脱脂粉乳に加え、数種類のチーズを対象に、3カ月から7カ月間市場隔離されたものについて保管経費等を補助することを発表している。実施期間は当初12月末までとされていたが、12月11日に2015年2月末まで延長されることが公表された。なお、チーズは、PSA申請数量が予算規模を超過したことから同年9月23日をもって申請が打ち切られている(表7)。
また、バターと脱脂粉乳の市場価格が買入価格を下回った場合には、公的買入措置を実施することもPSAの実施期間延長と併せて発表された。買入限度数量は、バターが5万トン、脱脂粉乳が10万9千トンとなる。なお、1月7日時点では、公的介入措置は実施されていない(図24、25)。
加盟国の中でもバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)とフィンランドが、ロシアによる禁輸措置の影響が大きいとされていることから、欧州委員会は2014年11月19日、バルト三国の酪農家に対する支援策として総額2800万ユーロ(41億4400万円)規模を、また、同年12月19日にはフィンランドの酪農家に対する支援策として総額1070万ユーロ(15億8360万円)規模の支援を公表した(表8)。 EUは、ロシアによる一連の禁輸措置に対する酪農部門への救済措置をこれで完結し、現在、その効果を見守っている。ただし、EUの需給の緩みなどに起因した生乳価格の下落は多くの加盟国の生産者の経営を圧迫している状況が続いており、長期化するとEUの生乳生産に影響を及ぼすことになる。
(調査情報部 中野 貴史)
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