需給動向 海外 |
輸出需要の減少で豚枝肉価格が続落 |
2014年9月の豚肉生産量、前年同月比11.7%増 欧州委員会によると、2014年9月のEU28カ国の豚枝肉生産量は、前年同月比11.7%増の191万トンと、かなり大きく増加した(図11)。2014年1〜9月の累計で見ると、前年並みの1640万トンとなっており、通年では前年並みの生産量になると予測されている。
また、1頭当たり枝肉重量を見ると、2014年9月は前年同月比4.5%増の89.2キログラムとなった(図12)。冷夏により肥育豚の生育が順調であったことと、飼料穀物価格が前年に比べ、安値安定傾向で推移していることが、出荷体重の増加に寄与したと考えられる。
2014年12月の豚枝肉卸売価格、前年同月比20.8%安 欧州委員会によると、2014年12月のEU豚枝肉卸売価格は、前月からやや値を下げ、前年同月比20.8%安の100キログラム当たり134.8ユーロ(1万9950円:1ユーロ=148円)と、大幅に下落した(図13)。EUの豚枝肉卸売価格は、2013年10月以降、15カ月連続で前年同月を下回って推移している。
2014年の豚枝肉卸売価格は、域内の豚肉生産量が前年を下回って推移するとともに、ロシアに代わってアジア向けの輸出需要が強かったため、6月には前年並みの水準にまで回復した。しかし、夏季の低温による域内バーベキュー需要の落ち込みで7月に下落に転じた。その後も、北米の豚肉生産量の回復などを受け、輸出需要が低迷し、価格は下げ止まらない中、10月には前月に域内の豚肉生産量が前年同月比で大きく増加したことから暴落した。11月以降も、域内の豚肉生産量は前年並みで推移しているとみられ、下落は継続している。 豚肉輸出は減少が続く 欧州委員会によると、2014年1〜10月のEU域外への豚肉等輸出量は前年同期比6.3%減と、かなり減少した(表4)。 北米地域での豚流行性下痢(PED)の発生による豚肉生産量の減少を受け、日本や韓国などアジア地域向けが大幅に増加したものの、ロシアやベラルーシ向けの減少分を補完するまでにはいたらず、全体では減少となった。 また、現地関係者によると、内臓等に分類されるラード(豚の背脂)在庫の余剰が深刻であるとしている(表5)。 これは、ラードの域外輸出のおよそ7割(2013年実績)が仕向けられていたロシアで、2014年2月から豚肉等の禁輸措置が講じられ、同国向けが大幅に減少したことに起因する。2014年1〜10月の域外輸出実績は、輸出量で前年同期比38.6%減、輸出額で51.8%減と大幅に減少している。 加盟国によって多少の相違はあるが、欧州では、豚枝肉価格相当額が生産者の収入となり、残された内臓や脂肪などの副産物は、と畜処理を行う食肉企業などの収入になることが一般的である。副産物のうちラードだけを見ても、前年同期比で約225億円の減収となっており、食肉業界全体への影響が懸念される状況となっている。
(調査情報部 宅間 淳)
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