需給動向 海外

◆ブラジル◆

2015年上半期の鶏肉生産、輸出量ともに前年超


良好な輸出環境

 ブラジル開発・商工省貿易局(SECEX)によると、2015年上半期(1〜6月)の鶏肉輸出量は、前年同期比3.3%増の179万6521トンとなった(表5)。増加の要因として、米国での鳥インフルエンザ(AI)の発生拡大に伴い、鶏肉輸入国の需要がブラジル産にシフトしたことが挙げられる。加えて、昨年末よりブラジル国内で表面化した政治不信などを受け、為替相場が2003年以来の米ドル高レアル安で推移したことも輸出を大きく後押しした。

 同期間の国別輸出量内訳を見ると、最大の輸出先であるサウジアラビア向けがかなり大きく増加した一方で、第2位の日本向けは前年同期比3.4%減となった。これは、日本市場で競合するタイ産生鮮鶏肉が、2013年末の輸入再開以降、徐々にシェアを拡大しており、相対的にブラジル産の輸入量が減少していることによる。

 一方、中国向けは、同国が米国での鳥インフルエンザ発生に伴い、2015年1月12日以降、米国産鶏肉の輸入を停止しているため、ブラジル産鶏肉の代替需要が高まったことで、前年同期比37.1%増と大幅増となった。

 なお、同期間のレアルの為替相場は、米ドルに対して前年同期比3割安を記録した。これにより、価格競争力が増したブラジル産鶏肉の平均輸出単価(米ドル建て)は、大手2社主導により下げ基調で推移し、同11.2%安となったが、なおレアルの下げ幅の方が大きいため、輸出業者や生産者の手取りは増加している状況にあり、増産意欲は増しているとみられる(図18)。

生産量は過去最高を更新の見込み

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は8月13日、2015年のブラジルの鶏肉生産量を過去最高となる1308万トン(前年比3.1%増)と見込んでいる(図19)。

 この主な要因として、穀物相場が世界的な豊作を受けて安値で推移し生産コストが低く抑えられていることに加え、国内外の需要が好調に推移していることを挙げている。国内では、経済の失速や慢性的なインフレが続いており、牛肉に比べて安価な鶏肉の引き合いは依然として強い。また、輸出については、特に中国の引き合いが増しており、中国向け鶏肉輸出認定施設は、2015年中に現在の29カ所から40カ所に大きく増加する見込みで、同年の輸出量を過去最高の374万トン(同5.1%増)と見込んでいる。加えて、ブラジル動物性たんぱく質協会(ABPA)は、輸出先を現在の158カ国からさらに拡大したいとしている。

 また、USDA/FASは、2016年のブラジルの生産見通しについて、穀物の記録的な豊作見込みを受け、最大の鶏肉生産州であるパラナ州の生産コストが3〜4%低下すると予測しており、過去最高の1348万トンまで増加すると見込んでいる。

(調査情報部 米元 健太)

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