調査・報告  畜産の情報 2015年10月号

最近の肉用子牛取引価格の動向とその要因について
〜平成26年度を中心に〜

畜産経営対策部 肉用子牛課


【要約】

 最近の肉用子牛の取引価格は、口蹄疫、高齢化や担い手の減少による繁殖基盤の縮小などの影響による出荷頭数の減少などを背景として、高値で推移している。枝肉価格の上昇による肥育生産者の導入意欲が引き続き強いとみられるなど、年末まで下げの要因はないことなどから、平成27年度の取引価格は前年度をさらに上回る水準になると見込まれる。

1 はじめに

 当機構では、全国の家畜市場から提供された肉用子牛の取引データを集計し、ホームページなどで「肉用子牛取引情報」(以下「取引情報」という)として公表している。本稿では、平成26年度を中心とした最近の取引状況や価格動向、これらの要因について報告する。

 なお、取引情報の取引価格(全国の家畜市場で取引される1頭当たり取引価格(以下「取引価格」という。雌雄平均。以下同じ。))は、農林水産大臣が四半期ごとに告示する平均売買価格の算定に用いられる指定肉用子牛とは体重などの規格が異なるので留意されたい(詳細は機構HP http://www.alic.go.jp/content/000098360.pdfを参照)。

2 平成26年度の黒毛和種子牛について

(1)取引頭数は減少傾向

 平成26年度の黒毛和種子牛の取引頭数(雌雄合計。以下同じ。)は、各月において前年同月を下回り、年度計では前年度比4.9%減の33万3995頭となった(図1)。

 取引頭数減少の背景には、全国的な繁殖雌牛の減少が挙げられる。農林水産省の畜産統計(各年2月1日現在)によると、肉専用種の子取り用雌牛(黒毛和種以外の肉用牛を含む。以下同じ。)の飼養戸数は、23年以降減少傾向が続いており、27年は前年比5.6%減の4万7200戸となり、22年比では26.1%減となっている(図2)。

 飼養規模別にみると、規模が小さくなるに従って、減少幅が大きくなる傾向にあり、約7割を占める子取り用雌牛が10頭未満の小規模経営は、22年は4万7600戸であったが、27年には22年比30.5%減の3万3100戸まで減少した。10から49頭の飼養規模では、22年は1万4760戸であったが、27年には同17%減の1万2250戸と、10頭未満の経営に比べて減少幅は縮まっている。

 一方で、50頭以上の飼養規模では、22年は1629戸であったが、27年は同14.9%増の1872戸となり、大規模経営については増加している。

 小規模経営については、高齢農業者による経営が多くを占めており、高齢化や後継者不足の影響をより強く受けているものとみられる。

 また、繁殖が可能な2歳以上の子取り用雌牛の飼養頭数をみると、23年に前年比2.3%減の57万4600頭となり、24年以降も減少傾向で推移し、27年は同2.8%減の50万4800頭となり、22年比では14.2%減となった(図3)。

 さらに、22年4月の口蹄疫の発生や23年3月の東日本大震災、同年8月の大規模畜産業者の経営破綻は、繁殖雌牛の減少に大きく影響を与えた。21年度に38万8234頭だった黒毛和種子牛の取引頭数は、口蹄疫発生後の22年度には前年度に比べて10.7%減の34万6596頭まで落ち込んだ。

その後、23年度と24年度には36万頭前後に回復したものの、25年度には再び減少に転じ、26年度には33万頭台まで減少した(図1)。

 この傾向は、27年度に入っても継続しており、7月までの取引頭数は前年の同時期に比べて減少している。

(2)取引価格は上昇傾向

 取引頭数の減少により、黒毛和種子牛の取引価格は上昇傾向にあり、25年10月から50万円を超えて推移し、27年2月には60万円台となり、現在も高値で推移している(図4)。

 このことから、26年度の取引価格は、取引情報の収集を開始した2年度以降、最も高い水準となる57万513円(前年度比13.3%高)を記録した(図1)。

 なお、これに次ぐ高値は、18年度の取引価格(50万8742円)で、米国でのBSE発生を受け、米国産牛肉の輸入が禁止されたことに伴い、国産牛肉の需要が増加したことを反映したものであった。

 今回の取引価格上昇は、前述したとおり、繁殖雌牛頭数の減少による生産頭数の減少に加え、枝肉価格の上昇による肥育生産者の導入意欲向上も一因となっている。東京食肉市場における和牛去勢A−4の推移をみると、26年度平均価格は前年度比7.9%高の1キログラム当たり2037円と近年にない高水準にある(図4)。

(3)主要地域も同様の傾向

 肉用牛生産の主要な地域である、北海道、岩手県、兵庫県、宮崎県および鹿児島県における黒毛和種子牛の取引状況も同様の傾向となっている。

ア 北海道

 北海道における取引頭数は、23年度は前年度並みで推移し、24年度は前年度比9%増の3万9583頭となったが、25年度以降、減少傾向となり、26年度は同4.3%減の3万6960頭となった(図5)。

 取引価格は、23年度は同0.7%安の39万4198円となったが、24年度以降、上昇傾向で推移し、26年度は同13.1%高の57万663円となった。

 2歳以上の子取り用雌牛の飼養頭数をみると、23年は前年比8%増の7万2550頭となったが、その後減少傾向で推移し、27年は同8%減の5万7530頭となり、22年比では14.3%減と全国平均並みの減少率となった(図6)。

 飼養戸数は、23年は前年並みで推移したが、その後減少傾向で推移し、27年は前年比1.8%減の2180戸となり、22年比では9.5%減と全国平均より緩やかな減少率となった。

 また、北海道における規模別の飼養戸数をみると、20頭以上の飼養規模が半数に上り、都府県に比べ中規模以上の経営が多い。

 なお、北海道で取引される子牛は、26年度全国平均(体重277キログラム、日齢276日)に比べ、21キログラム重く、日齢で15日長かった。

イ 岩手県

 東北地方の中心的な産地である岩手県の取引頭数は、23年度は、前年度比1.8%増の2万3085頭となったが、その後減少傾向で推移し、26年度は同5%減の1万9365頭となった(図7)。

 取引価格は、23年度は同1.7%安の38万7526円となったが、その後上昇傾向で推移し、26年度は、同14.6%高の56万8686円となった。

 2歳以上の子取り用雌牛の飼養頭数をみると、23年に繁殖雌牛飼養頭数がかなりの程度減少している。これは、1歳以下を含む子取り用雌牛の総合計については、3万9000頭と、前年並みとなっていることから、繁殖雌牛の更新が進んだことが一因となっていると推測される。25年以降は、減少傾向で推移し、27年は前年比2.4%減の2万9520頭となり、22年比は同13.5%減と全国平均並みの減少率となった(図8)。

 飼養戸数は、23年以降、減少傾向で推移し、27年は前年比7.6%減の4950戸となり、22年比は27.5%減と全国平均並みの減少率となった。

 岩手県は、日本短角種の主産地であり、全国の取引に占めるシェアは26年度で86.8%となっていることから、ここで、日本短角種の動向についても特筆する。

 岩手県の日本短角種子牛は、26年度平均で体重235キログラム、日齢223日で取引されており、黒毛和種子牛より軽く、短い飼養期間で出荷される。

 取引頭数は、23年度は前年度並みで推移し、24年度は前年度比5.7%増の1132頭となった。その後、減少傾向で推移し、26年度は同17%減の891頭となった(図9)。

 取引価格は、24年度までは横ばいで推移したが、25年度以降、黒毛和種と同様に上昇傾向で推移し、26年度は同22.6%高の37万5084円と、近年にない高値となった。

ウ 兵庫県

 兵庫県における取引頭数は、23年度以降、減少傾向で推移し、26年度は前年度比5%減の8010頭となった(図10)。

 取引価格は、23年度は同9%安の41万4884円となったが、その後上昇傾向となり、特に、神戸牛の生産地で、全国平均に比べて高値で取引される但馬および淡路家畜市場の影響により、26年度は同33.6%高の68万2898円と全国平均を10万円以上上回った。

 2歳以上の子取り用雌牛の飼養頭数をみると、23年から27年までほぼ横ばいで推移し、27年は前年比1%減の1万3030頭となり、22年比では2%減と全国平均より緩やかな減少率となった(図11)。

 飼養戸数については、23年以降、減少傾向で推移し、27年には同1.5%減の1340戸となり、22年比は21.2%減と全国平均より緩やかな減少率となった。

 なお、兵庫県で取引される子牛は、26年度全国平均(体重277キログラム、日齢276日)に比べ、30キログラム軽く、日齢で6日短かった。

エ 宮崎県

 宮崎県における取引頭数は、22年度の口蹄疫発生後、24年度にかけて回復傾向であったが、25年度以降は減少し、26年度は前年度比5.3%減の5万1506頭となった(図12)。

 取引価格は、23年度以降、上昇傾向で推移し、26年度は同13%高の57万5540円となった。

 2歳以上の子取り用雌牛頭数は、22年は8万6200頭だったが、23年は口蹄疫が発生した影響を受け、前年比18.6%減の7万160頭となった。24年以降も減少傾向で推移し、27年は同1.6%減の6万6430頭と、22年と比較すると22.9%減と全国平均以上の減少率となっている(図13)。

 飼養戸数は、23年以降減少傾向で推移し、27年には前年比6.2%減の6460戸となり、22年比では28.5%減と全国平均を上回る減少率となった。

オ 鹿児島県

 鹿児島県における取引頭数は、24年度にかけては増加傾向であったが、25年度以降は減少傾向となり、26年度は前年度比4.9%減の6万9318頭となった(図14)。

 取引価格は、23年度以降、上昇傾向で推移し、26年度は同13.6%高の58万35円となった。

 2歳以上の子取り用雌牛の飼養頭数をみると、23年以降、減少傾向で推移し、27年は前年比2.1%減の10万1400頭となり、22年比では12.8%減と全国平均より緩やかな減少率となった(図15)。

 飼養戸数については、23年以降、減少傾向で推移し、27年には前年比6.7%減の8560戸となり、22年比では29.3%減と全国平均以上の減少率となった。

 以上、主要な地域においても、現時点では、子取り用雌牛の飼養戸数および飼養頭数に回復傾向がみられないことなどから、当面、取引価格は、堅調に推移するものと考えられる。

3 平成26年度のホルスタイン種子牛について

 現在の肉用子牛取引価格は、黒毛和種のみならず、他の品種についても、同様に高水準となっている。

 ホルスタイン種子牛(注1)の取引については、酪農経営によって副次的に生産されていることもあり、市場を介さない相対取引が多数を占め、市場取引される子牛は1割にも満たないと推計される。

 その中で、ホルスタイン種子牛の取引頭数(雌雄合計。以下同じ。)は、平成25年度以降、各月において前年同月を上回り、26年度は前年度比26.1%増の1万759頭となった(図16)。

 市場関係者によると、主要産地である北海道において、取引価格の高騰により、これまで相対取引されていたホルスタイン種子牛が、北海道の主要市場である北見集散地家畜市場へ出荷されるようになっており、このことが、取引頭数増加の要因として挙げられる。同市場のホルスタイン種子牛の全国の取引に占めるシェアは、22年度は約18%であったが、23年度以降増加傾向となり、26年度には約60%にまで上昇した。

 取引価格については、出生頭数の減少などの影響により(図17)、25年度以降、上昇傾向が続いており、26年度は前年度比14.8%高の14万6192円となった。

 最近の取引価格の上昇は、取引頭数は増加傾向だが、出生頭数自体は、減少傾向となっていること、また、枝肉価格の上昇による肥育生産者の導入意欲向上などが要因として挙げられる。東京食肉市場における乳用牛去勢B−2の26年度平均価格は、1キログラム当たり875円と、前年度より1割以上値上がりした。以上から、今後も堅調な取引が予想され、取引価格は高水準で推移すると考えられる(図18)。

4 平成26年度の交雑種子牛について

 交雑種子牛(注2)の取引については、ホルスタイン種同様、酪農経営によって副次的に生産されていることもあり、市場を介さない相対取引が多く、市場取引される子牛は3割程度と推計される。

 乳用種雌牛に、肉用種の精液を交配させて生産される交雑種(雌雄合計。以下同じ。)子牛の取引頭数は、生乳需給の影響を受けて増減する。平成22年頃の生乳需給の緩和を背景に、酪農経営において乳用種への黒毛和種の交配が進んだことから、24年度は前年度比11.2%増の6万8500頭となったが、25年度は、同14.7%減の5万8454頭となった。その後、子牛取引価格の高騰などの影響を受け、交雑種の増産意欲が高まったことから、26年度は、同6.4%増の6万2205頭となった。

 取引頭数が増加しているにもかかわらず、26年度の取引価格は、前年度比9.5%高の32万4697円となり、過去最高の水準となった(図19)。

 前述したとおり、交雑種に限ると、供給は増加傾向(図20)となっているものの、黒毛和種、乳用種を含めた全体の供給が減少傾向にあること、また、枝肉価格の上昇による肥育生産者の導入意欲向上などが、取引価格上昇の要因として挙げられる。

 東京食肉市場における交雑牛去勢B−3の26年度平均価格は、1キログラム当たり1351円と前年度比8.2%高となった(図21)。

 また、市場関係者によると、黒毛和種子牛の低価格帯と、交雑種子牛の高価格帯が拮抗することにより、黒毛和種子牛の購買者が、これらの相場状況と出荷される子牛の状態をみて、交雑種子牛を選ぶこともあるとのことである。

 以上から、交雑種は、ホルスタイン種と同様に、今後も堅調な取引が予想され、取引価格は高水準で推移すると考えられる。

5 最近の肉用子牛の取引価格の動向について

 最近の取引価格をみても、黒毛和種、ホルスタイン種および交雑種のいずれも上昇傾向で推移し、過去最高水準を更新している状況となっている(表1)。

 例年、取引価格は、年末の需要期に向けて上昇していく傾向がある。また、出荷頭数は減少している中で、枝肉価格は堅調、肥育生産者の導入意欲も引き続き強いとみられることから、年末まで下げの要因はなく、平成27年度の取引価格は、26年度を上回る水準になると見込まれる。

6 おわりに

 このように、肉用子牛取引価格は、平成27年度に入っても、全品種で前年度を上回って推移している。今後もこの状況が続けば、肉用牛の安定的な生産に影響することが懸念されるが、肉用牛生産のスタートに位置する繁殖農家戸数は、既に高齢化や後継者不足などにより減少し、生産基盤の縮小が顕在化している。

 肉用牛生産を維持するためには、減少する繁殖雌牛の飼養頭数を維持し、さらに増頭していく必要があり、これらを背景に、農林水産省では、繁殖牛の増頭による繁殖基盤の安定のため、27年4月に「畜産再興プラン実現本部」を立ち上げ、今後3年間で特に取り組む課題の一つとして「繁殖雌牛の増頭」を取り上げている。

 早急な繁殖基盤の再構築のため、当機構としても、中核的な繁殖経営への増頭支援や、優良雌牛導入への支援など、繁殖経営の繁殖雌牛の増頭に向けた取組などを支援している。詳しくは、当機構のホームページに掲載されている平成27年度の畜産業振興事業の項を参照されたい。

※ALICのHP上で「畜産業振興事業担当者一覧」と検索、またはURL(http://www.alic.go.jp/c-kanri/shinko01_000092.html)を入力

注1:ホルスタイン種は、ジャージー種等その他の乳用品種を含まない。肉用子牛取引情報では「ホルスタイン種」として集計

注2:交雑種は、肉専用種と乳用種の交雑の品種。肉用子牛取引情報では「交雑種・乳」として集計


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