需給動向 海外

◆豪 州◆

2015年の牛肉生産、前年比減も記録的高水準


牛肉生産量、6カ月連続で減少

豪州統計局(ABS)によると、2015年12月の牛肉生産量は、16万6758トン(前年同月比11.5%減)と6カ月連続で前年同月を下回った(図8)。



干ばつ後の牛群再構築の進展や、それに伴うと畜場の年末休業期間の前倒しが影響している。

この結果、2015年の牛肉生産量は、251万3899トン(前年比1.6%減)と前年をわずかに下回ったものの、2014年に次いで史上2番目の数量となった。上半期は、干ばつに伴うと畜頭数の増加から、前年同期比5.6%増となったのに対し、下半期は、干ばつ後の牛群再構築の進展による、と畜頭数の減少から、同8.1%減となっており、対照的に推移した。また、1頭当たり平均枝肉重量は、上半期の干ばつにもかかわらず、前年をわずかに上回っている。これは、穀物肥育牛の増加に加え、豪州北部から、比較的軽量な肉用牛の多くが、生体輸出に仕向けられたことも影響している。





牛肉輸出量、主要輸出先向けはおおむね減少

豪州農漁林業省(DAFF)によると、2016年2月の牛肉輸出量は、9万774トン(前年同月比14.4%減)と、牛肉生産量の減少に伴い7カ月連続で前年同月を下回った(表2)。

主な輸出先別に見ると、米国向けは、これまでの減少傾向の継続に加え、前年同月が高水準であった反動を受け、6カ月連続で前年同月を下回っている。日本向けも同様に減少傾向が続いている一方、韓国向けは、増加傾向が継続しており、日本向けからのシフトも生じている。また、中国向けは、これまで増加傾向が続いていたものの、ブラジル産牛肉との競合の高まりなどから、10カ月ぶりに前年同月を下回っている。

肉牛取引価格、過去最高水準を維持

豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年2月末日時点で1キログラム当たり600豪セント(498円:1豪ドル=83円)となった(図9)。



2015年11月以降、600豪セント前後の記録的な高水準で推移している。これは、これまでの干ばつによる繁殖牛の減少から、子牛生産頭数が減っていること、干ばつ後の牛群再構築により肥育もと牛が減っていることに加え、グレインフェッド牛肉の需要が堅調なことから、牧草肥育生産者、フィードロット共に肥育もと牛の導入意欲が強いためとみられている。牛群再構築が完了するまでは、今後も供給量は十分でなく、取引価格は高水準で推移すると予想されている。

2015年の肉用生体牛輸出、過去高を記録

MLAによると、2015年の肉用生体牛(肥育もと牛およびと畜場直行牛)輸出頭数は、122万7298頭(前年比6.3%増)となった(表3)。同輸出頭数は、近年、東南アジアを中心とした牛肉需要の高まりにより増加傾向にあり、2015年は、豪州の牛肉生産量は前年を下回ったにもかかわらず、過去最高となっている。

主要輸出先国別に見ると、最大の輸出先であるインドネシア向けは、同国の四半期ごとの輸入割当許可頭数が不規則に変動したことから、2015年は、前年を下回っているものの、依然として、全体の半数を占めている。一方、第2の輸出先であるベトナム向けは、急速に伸びており、2015年も他国向けが減少する中、前年の1.7倍と大幅に増加している。ベトナム向けは、従来、と畜場直行牛が主体であったが、2015年は、干ばつにより豪州側で重量のあると畜場直行牛が不足していることと、ベトナム側でのフィードロット建設の動きが重なり、肥育もと牛の輸出も増加している。

そのほかの動きとしては、イスラエル、マレーシア、フィリピンなどが安定的な輸出先となっており、豪州からの牛肉の輸入を禁止しているロシアも、生体牛の輸入は認めているため、主要な輸出先の一つとなっている。





(調査情報部 根本 悠)


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