需給動向 海外 |
牛肉生産、減少傾向が継続 |
牛肉生産量、大幅に減少
豪州統計局(ABS)によると、2016年1月の牛肉生産量は、14万9533トン(前年同月比17.9%減)と7カ月連続で前年同月を下回った(図5)。牛群再構築の進展と気象条件の改善から保留傾向が高まっていることが背景にあり、特に牛肉生産量全体の約4割を占めるクイーンズランド州は、同20.7%減と高い減少率となっている。その一方、牛群再構築に伴う雌牛のと畜割合の低下と、堅調なグレインフェッド牛肉需要に伴う穀物肥育牛のと畜割合の増加から、平均枝肉重量は増加傾向にあり、と畜頭数の減少による牛肉生産の減少を一定程度、緩和している。
豪州気象局によると、2016年4〜6月にかけて、東部の主要肉牛生産地域は、おおむね平年並みか平年を上回る降雨量が予想されており、今後も保留傾向が継続し、牛肉生産の減少傾向も継続するとみられている。
牛肉輸出量、8カ月連続で減少
豪州農務水資源省(DAWR)によると、2016年3月の牛肉輸出量は、牛肉生産量の減少に加え、豪ドル高傾向に推移した為替相場も影響し、9万6697トン(前年同月比21.7%減)となり、8カ月連続で前年同月を下回った(表1)。
主な輸出先国別に見ると、米国向けは、同国の干ばつ後の牛群再構築の進展や、ニュージーランド産との競合から、7カ月連続で前年同月を下回っている。また、日本向けも高水準の国内在庫を背景に、減少傾向が続いている。一方、韓国向けは、国内生産の減少や豪州産冷蔵牛肉への堅調な需要から7カ月連続で前年同月を上回っている。中国向けは、ウルグアイ産やブラジル産との競合の高まりから、2カ月連続で前年同月を下回っている。
日本向け輸出、グラスフェッド牛肉を中心に減少傾向
MLA(豪州食肉家畜生産者事業団)によると、2016年2月の日本向け牛肉輸出量は、グラスフェッド牛肉が、7249トン(前年同月比38.5%減)、グレインフェッド牛肉が、1万584トン(同15.5%減)となった(図6)。2015年後半以降、ともに減少傾向となっており、とりわけグラスフェッド牛肉の減少が顕著となっている。これは、グレインフェッド牛肉が、主にテーブルミートとなる冷蔵品であり、家計消費を中心に一定の需要が見られる一方、グラスフェッド牛肉は、主にハンバーグなどの加工に仕向けられる冷凍品であり、日本国内の冷凍牛肉在庫が高水準で推移している影響とみられている。
肉牛取引価格、わずかに下落傾向
MLAによると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年3月末日時点で1キログラム当たり575豪セント(506円:1豪ドル=88円)となった(図7)。2015年11月以降、干ばつに伴う飼養頭数の減少とその後の牛群再構築を反映して、同600豪セント前後の記録的な高水準となったものの、3月はわずかながら下落傾向となっている。これは、秋季の始まりである3月に入っても、夏季からの高温乾燥気候が継続していることや、豪ドル高の為替相場と、米国の豪州産牛肉に対する需要減少が影響し、肥育生産者の買い付け意欲が一部で弱まっていることが背景にある。
(調査情報部 根本 悠)
元のページに戻る